「eスポーツ の『能力』が疑われ、プレイヤーたちは大きな不安のなかにいる」: eスポーツ 現場から見たコンテンツクリエイターの告白

DIGIDAY

eスポーツからスポンサーが撤退し、この業界全体で企業の閉鎖やスタッフのレイオフが進み、多くの失業者が出ている。eスポーツに関わるすべての人がその影響を受けているが、ゲーム空間に適合するように細かく調整されたスキルを持つコンテンツクリエイターにとって、この崩壊はとくに恐ろしいことだ。

ゲームやeスポーツでは、クリエイターがオーディエンスの圧倒的な注目を集めるが、多くのゲームクリエイターは独立するのではなく、eスポーツ組織に参加することを選ぶ。そうすることで、クリエイターは安定した収入を得ることができ、組織の持つ既存のスポンサーやパートナーとのネットワークに参加できる。

長年にわたり、多くのクリエイターにとって、eスポーツ組織との契約は最終目標だった。それがクリエイター空間に不足しがちな安全・安心の源となるからだ。しかし、2023年になって、底が抜けたような状態になってしまった。クリエイターたちは、仕事の安定を求めながらも、選択肢が減っていると感じている。

いわゆる「eスポーツの冬」がクリエイターにどのような影響を与えているかを知るために、米DIGIDAYは、匿名を条件に本音を語ってもらう「告白」シリーズで、不安を抱えるゲームコンテンツのクリエイターの話を聞くことにした。

読みやすさの観点から、この会話の中身は編集し、まとめてある。

◆ ◆ ◆

――eスポーツの崩壊を懸念するきっかけとなった特別な出来事とは?

(大会の運営者である)ビヨンド・ザ・サミット(Beyond the Summit)が閉鎖を発表したことで、さまざまな人が影響を受けた。ビヨンド・ザ・サミットと共に仕事をしていたクリエイターもいれば、ビヨンド・ザ・サミットのスタッフもいて、あらゆるところに影響があった。

そして、その影響はひとつの組織だけでなく、ゲーム業界全体の企業にも及んだ。嘘ではない。とくにTwitterを毎日見ている者として、多くの企業が多くの人をトラブルに巻き込んだことを私は知っている。ワンハンドレッドシーヴズ(100 Thieves)やビヨンド・ザ・サミットだけではない。いまは本当に低迷しているところがたくさんある。

――とくに女性クリエイターが危機に瀕しているのか?

とにかく、女性クリエイターには乗り越えなければならない障害が非常に多く、問題になることが数多くある。クリエイターの立場からすると、いま起こっていることで我々が消耗品にされてしまうということはないと思う。私は、eスポーツのプレイヤーの人、とくに女性チームを心配している。

――では、競技eスポーツのプレイヤーは組織と契約しているコンテンツクリエイターよりもリスクに直面していると?

そうだ。そうならないことを本気で願っている。クリエイターとしての自身の立場は少し安心できる。人々は常にコンテンツを消費しており、波は来ては去っていくものだからだ。

いまはプレイヤーにとって本当に大きな不安材料がある。eスポーツの能力を疑っている組織が多いからだ。eスポーツはかつてないほど大きくなっているのに、不況のせい、経済のせいでタイミングが悪すぎる。ブランドが関与する機会は非常に多いが、これはますます問題になる。「少しだけ関わってみたが、もう撤退する」というような組織が増えれば、ブランドや既存のビジネスが不安になり始める。全体が混乱している。

これは、eスポーツだけでなく非常に多くのビジネス、多くの企業で起こっていることだ。だが、eスポーツに関しては多くの大企業が真剣に取り組み始めていたため、このようなことが続くのは困る。

――そうした不安は、ほかのコンテンツクリエイターのあいだでも広がっているのか?

友人とそうした話をしたことがあり、ソーシャルメディアを通じてほかの多くの人たちが同じような会話をしているのを見ている。eスポーツは、人々を利用し無報酬で働かせるところから始まって、長い道のりを歩んできた。会社があり、給料をもらっている人たちがいる。だからこそ、大企業が手を引いて事態を大きく後退させることにならないか、心配する必要がある。

――現在、組織と契約しているコンテンツクリエイターへのアドバイスがほしい

コンテンツを多様化すること。自分をブラッシュアップし続け、トレンドに敏感であること。一番大事なことは、すべてをひとつのカゴに入れないことだ。そして、そのカゴはまだ磨くことができるし、そこにはより多くの能力を詰め込むことができる。自分のあらゆる面を見せ、ほかのプラットフォームにも投稿し、自分の存在をアピールするように心がけてほしい。ブランドやスポンサーは常に存在するが、もし自分の所属する組織が消滅したり、エージェンシーが閉鎖したりしても、ブランドに対して自分をアピールし、「私がつくることができるコンテンツはこれだ」と言えるようにしておく必要がある。

――所属する組織から解雇されたばかりのクリエイターについては?

作り出したものを公開し、リールをつくり、コンテンツを共有したのち、「今、解雇されたんだ」と伝えるということが重要だ。所属していた組織を非難するのではなく。これはコンテンツクリエイターだけでなく、eスポーツで裏方として働いていた人たちにも言える。我々はフォトグラファーであり、デジタルデザイナーであり、編集者だ。「これが私の能力であり、私が達成したことだ。違う組織の一員になりたい」と言おう。

私は以前、現在所属している組織とは違う別の組織に所属していたが、その組織から7カ月ほど離れていたときに、「新たな機会を探している」というツイートをした。そうすると、私や私のマネージャーに多くの組織から連絡があり、「あなたが休んでいたとは知らなかった」と言われた。仕事を探していることは知らせる必要があるのだ。

[原文:‘You see so many orgs doubting the capability of esports right now’: Confessions of a content creator from the esports trenches

Alexander Lee(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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