トーンダウンの カンヌ 、プールパーティは縮小し観覧車はなし

DIGIDAY

息を殺して待つこと2年(もちろん、医療用マスクを着けてだが)。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが南仏リヴィエラに帰ってきた。

今年のフェスティバルに参加するため、南フランスに降り立つマーケティング関係者や広告主たちは、お決まりの策略や取引が展開されるのだろうと期待を寄せる。しかし、コロナ禍による2年の休止と市場の変容は、せっかくのお祭り気分に多少の影を落としたかもしれない。

※本稿はカンヌライオンズ開催前に執筆された。

世界情勢を反映しトーンダウン

「2022年の祭典では、ふたつの特徴が見られるだろう」。デロイトデジタル(Deloitte Digital)で米国担当の最高クリエイティブ責任者を務めるレズリー・シムズ氏はDIGIDAYの取材でそう述べている。「2年ぶりの現地開催に対する祝祭感がある一方で、世界が直面する難しい問題を考えれば、どこか控えめな雰囲気となることは免れない」。

会場には従来通り、マーケティング、メディア、広告業界の大物が顔を揃えるようだ。WPPのマーク・リード最高経営責任者(CEO)や米紙ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のデヴィッド・ルービンCMOらのセッションが予定されている(フェスティバルのプログラムはこちらから)。それでも、ウクライナ戦争、不況の影、新型コロナウイルス感染症の再拡大などにより、多少のトーンダウンは避けられないだろう。

カンヌライオンズのサイモン・クックCEOによると、フェスティバルの復活を祝いたいのは山々だが、世界情勢は十分認識しているという。キャプティファイ(Captify)主催のプールパーティも今年は完全復活とはなりそうにないし、観覧車を再び目にするのは数年先になるかもしれない。

これも時代の趨勢だろう。「同じ4万ユーロ(約570万円)を使うなら、今年は業界紙主催のセッションよりもよほど有効な使い道がある」。あるアドテク企業のマーケティング担当役員は米DIGIDAYにそう語った

スター勢揃いの冠コンサートも復活

もちろん、予算(あるいはロゼワイン)が完全に枯渇してしまったわけではない。資金力のある企業はコロナ禍以前のカンヌを彷彿させる、かなり大掛かりな催しを計画している。PwC、スマートリー(Smartly.io)、アイハートメディア(iHeartMedia)は、パレ・デ・フェスティバルに隣接する港沿いにヨットを並べるという。

また、スポティファイ(Spotify)の冠コンサートも復活するため、夜のビーチ沿いにはスターが勢ぞろいするだろう。今年は、ケンドリック・ラマーやポスト・マローンらの大物アーティストが出演する。

今年のフェスティバルには、新規の参加者や新しい体験もお目見えする。たとえば、Amazonは2日にわたるAmazon Portの開催で、そのビーチデビューを飾る

一方、ロク(Roku)とアドフォーム(Adform)はカバナ通りに設置されたスペースでそれぞれイベントを開催する予定だ。TikTokも先月のカンヌ映画祭に続き、クリエイターカバナを開設する。Appleも参加を予定しているが、会場の詳細についてはなぜか明らかにされていない。

クリエイターに焦点を当てたプログラムも

今年は急伸するクリエイターエコノミーもひとつの焦点となっているようだ。特に、TikTokはユーザーの注目(つまり広告費)を貪欲に集めており、FacebookやインスタグラムといったSNSの巨人たちに比肩するほどの存在感を示している。

クリエイターカバナに加え、TikTokはクリエイターに焦点を当てた4日間のプログラムも用意している。TikTokのクリエイターたちがリアルタイムでコンテンツ作成を支援するという。メタ(Meta)も負けてはいない。メタビーチの目玉として、来場したユーザーが自分のリールを作成できるリールズスーパースタジオを開設する一方、メタバース関連のプログラムも用意している。さらに、ピンタレスト(Pinterest)も新しい製品やクリエイターワークショップを引っ提げて、カンヌのビーチに帰ってくる。

コロナ禍以前とまったく同じカンヌライオンズは期待できないかもしれないが、会場巡りのアドバイスは例年と変わらない。水分補給を欠かさず、オーバーブッキングを避け、履き慣れた靴を履く、ということだ。

DIGIDAYは、今年のカンヌライオンズについておおよその感触を掴むため、同フェスティバルの常連勢に話を聞いた。

デジタルマーケティング企業のマルチローカル(Multilocal)でCEOを務めるジェイムズ・リーヴァー氏はこう助言する。「日陰を見つけて休憩をとるように。たとえるなら、カンヌは短距離走ではなくマラソンだ」。

[原文:Cannes Briefing: Media and marketing’s return to the Croisette is ‘a marathon, not a sprint’

Kimeko McCoy(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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