ユニリーバ が注目するのは、スキンケアの次のビッグトレンド、皮膚の「マイクロバイオーム」

DIGIDAY

近年、肌のバリア機能や皮膚科学に関連する話題を耳にする機会が増えている。だが、肌の表面に存在する微生物で構成されるマイクロバイオーム(微生物叢)については、まだ解明され始めたばかりだ。

ダヴ(Dove)、ヴァセリン(Vaseline)、ミュラド(Murad)、タッチャ(Tatcha)など強力なブランドポートフォリオを持つユニリーバ(Unilever)は、15年間にわたって肌の微生物を研究してきた。皮膚のマイクロバイオームは身体のさまざまな箇所に存在して複雑な環境を構成し、微生物、皮膚細胞、免疫細胞のあいだで相互に作用する。この相互作用は肌が持つバリア機能を強化して感染を防ぎ、さらには皮膚アレルギー、にきび、アトピー性皮膚炎などからも保護する。ユニリーバはニキビなどの肌トラブルを、AIを活用したマイクロバイオームに関する科学的研究によって、数々のスキンケアブランドを通じて解決していこうとしている。

「時間の経過とともに消費者を獲得できるようになるという主張に、かなりの優位性を感じている。とくにマイクロバイオームは、いまのような単なるバズワードとしてだけでなく、肌の悩みを理解するために適用できるものだという事実が浸透してきている」と、ユニリーバでスキンケアならびにプレステージラインの研究開発部門を率いるジェイソン・ハーカップ博士は語る。

膨大な数のデータ生成

同社では研究者、博士課程の学生、業界ネットワークと共に、世界中で実施された数百件の臨床試験から12,000人以上のマイクロバイオームのサンプルを採取し、12テラバイトを超えるデータを生成してきた。マイクロバイオームはその人の環境や相互作用の影響を受けることから、データ収集の側面は非常に重要だ。同社は膨大なデータのシーケンシングと解読のために人工知能を2021年に導入しており、これによってクロスチェックやカウントの速度が上がってデータ収集が加速した。

インド、中国、米国のさまざまな地域のサンプルを収集することで、マイクロバイオームがどのように機能するのか、そしてどのような製品を作ればマイクロバイオームのコアとなる要素に効果を発揮できるかを、より深く理解できる。

マイクロバイオームに影響を与える要素には、公害、進化的な素因、肌のコンディション、ライフステージなどがある。ユニリーバの研究者によると、たとえばマイクロバイオームを調べることによって、その人が更年期なのかを80%の精度で調べることができるという。

研究を活用したプロダクト開発

同社では現在強化中の研究を活用し、肌のマイクロバイオームの再構築・維持・サポートに役立つ商品群を、プレステージブランドからマスブランドに至る全体で作り始めている。

たとえばダヴから2019年に発売したディープ・モイスチャー・ボディウォッシュ(Deep Moisture Body Wash)は、通常の石鹸よりもマイクロバイオームに与える影響が少ないことが査読付き論文で証明されている。この商品のセラミド技術は100以上のセラミドを生成するのに役立ち、局所的にセラミドを塗布する他ブランドのアプローチとは異なる。

同社は他にもヴァセリンから、マイクロバイオームの強度やレジリエンスを回復し、有用な微生物をブーストするプレバイオティクス(有用な微生物を増殖させる成分)を豊富に含んだ新しいローション「マイクロバイオーム・ケア・ローション(Microbiome Care lotion)」を発売する。

リビング・プルーフ(Living Proof)から2019年に発売したヘアケア製品「ドライ・スカルプ・トリートメント(Dry Scalp Treatment)」は従来のフケ防止シャンプーに、マイクロバイオームのバランスを保つ機能が兼ね備わったものだ。

プレステージラインではタッチャから2021年に、日本で古来から使われてきた藍とセラミドで肌のバリア機能を回復させる「インディゴ・スキン・リペア(Indigo Skin Repair)」を発売している。

研究が主流になるに従い、重点分野として再検討されているもののひとつが、ユニリーバのにきび関連製品だ。「アクネ菌は今、少し再考されている。歴史的にアクネ菌はにきびの原因として、常に悪者扱いされてきた」とハーカップ氏。スキンケア開発は、肌の状態を改善するため、特定の微生物に狙いを定めて効果を発揮するように変わってきていると同氏は述べる。

これに同意するのが、ユニリーバの科学&テクノロジー部門でビューティとウェルビーイング領域の研究開発責任者を務めるサマンサ・サマラス博士だ。「まず誤解されているのが、マイクロバイオームは静的なものだと考えられていること。そして微生物には『良いもの』と『悪いもの』があって、単純にこの『悪いもの』を除けばすべて解決すると思われているが、実際には驚くほど複雑な環境を作り上げている」。

Z世代の旬なビューティトレンド

肌バリア機能の低下や回復が、とくにZ世代のあいだでビューティトレンドの旬な話題となっている。まさにいまが、研究開発によってスキンケアの新製品を生み出す時期なのだ。

肌のバリア機能を損なわない製品や、活発なプロバイオティクス(体に有用な微生物)やプレバイオティクスを使用している製品がどれなのかを示す認証が、認証諮問委員会「カインド・トゥ・バイオーム(Kind to Biome)」などから提供されており、その重要性は高まってきている。

「おそらく今日もっとも広く信じられている風説は、スキンケア製品にプロバイオティクスを使用すれば肌に有用だろうというものだろう。だが、ほとんどの製品に関しては、まったく不可能だと言わざるを得ない。高度なパッケージングソリューションがなくては、プロバイオティクスの微生物を生きたまま肌に届けることはできないからだ」と、カインド・トゥ・バイオーム認証基準の共同設立者であるデイビッド・クー・ヤルマーソン氏は語る。プロバイオティクス抽出物の使用を強調するブランドには、トゥーラ(Tula)などがある。

人間の健康や気分にも影響

ドクター・ホイットニー・ボウ・ビューティ(Dr. Whitney Bowe Beauty)やシールデッド・ビューティ(Shielded Beauty)といった新しいブランドは、マイクロバイオームに焦点を当てた製品群を展開している。

そしてユニリーバの研究者は、23アンド・ミー(23andMe)のような自宅での検査や解析を、肌のマイクロバイオームでも実現できないかと考えている。つまり顧客がスキンケアブランドにアクセスすると、肌に存在しているマイクロバイオームや微生物に基づいて、必要な製品を伝えてもらうという仕組みだ。

マイクロバイオームの効用は、人間の健康や気分にも影響を与えている。「スキンケアにとっての有用性だけでなく、いまはもっと広く人間の健康や、脳と肌と腸内の関連などにも範囲が急拡大している」とサマラス博士は言う。「この領域に踏み込んでいくと、にきびや体臭の抑制に対する有用性といった目に見える範囲から、気分にまつわる包括的なウェルビーイングへの有用性へと超えていくことができる」。

[原文:Unilever is delving into the microbiome, the next big trend in skin care

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子、編集:黒田千聖)

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