エージェンシーとブランドは、ともにFacebookへのマーケティング支出を続けている。その反面、DIGIDAYリサーチがエージェンシーとブランドのマーケティング担当者138人を対象におこなった調査によると、マーケティングチャネルとしてのFacebookに寄せるバイヤー側の信頼度は下落傾向にある。しかも、この傾向はエージェンシーよりもブランドに色濃く表れている。
米DIGIDAYの調べによると、エージェンシーにとって、マーケティングチャネルのトップに立つのはFacebookであるようだ。エージェンシー側の回答者を見ると、クライアントのマーケティング予算のうち、「少なくとも少し」はFacebookに支出すると答えた人の割合は93%に達する(同じメタ傘下のインスタグラムも同率)。ただし、高額な投資となるとそれほどではなく、「多く」または「非常に多く」の部分をFacebookに支出するという回答が47%だった。
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ブランド側から眺める景色は少し異なる。自社のマーケティング予算のうち、「少なくとも少し」はFacebookに支出すると回答したブランド側のマーケティング担当者は85%(インスタグラムも同率)で、Googleとディスプレイ広告に次ぐ第3位だった。一方、マーケティング予算のうち、「多く」または「非常に多く」の部分をFacebookに支出するという回答は、ブランド側では4分の1をやや上回る程度(27%)で、こちらもGoogleとインスタグラムに次ぐ第3位だった。
米DIGIDAYの調べによると、エージェンシーのクライアントに関しては、Facebookに「適度な」マーケティング予算を支出するという回答がもっとも多かった。実際、2023年第1四半期の支出について訊ねたところ、自社のクライアントがFacebookに「適度な」予算を支出したと答えたエージェンシー側の回答者はほぼ3分の1(31%)を占めた。しかもこの1年、この数字はまったく変わっていない。
自社のクライアントがFacebookに「多くの」マーケティング予算を使っていると回答したエージェンシー側のマーケティング担当者の割合も前年とほぼ変わらない。今回の調査では、この集団が2番目に大きく、エージェンシー側の回答の29%を占めた。
興味深いことに、自社のクライアントがFacebookに「非常に多くの」マーケティング予算を使っていると回答したエージェンシー側のマーケティング担当者の割合は、この1年、右肩下がりを続けている。2022年第1四半期は、「非常に多くの」予算をFacebookに支出したという回答は18%だが、2022年第3四半期は15%、2023年第1四半期は11%に減少している。
一方、自社のクライアントがFacebookに支出するマーケティング予算の割合を「少ない」と答えたエージェンシー側のマーケティング担当者は、昨年の第1四半期は11%を占め、今年の第1四半期はやや上昇して16%となった。
一方、ブランド側でも、Facebookに「適度な」マーケティング予算を支出するという回答がもっとも多い。しかし、具体的な様相はエージェンシー側とは異なっている。
今年の第1四半期を見ると、ブランド側では、Facebookに「適度な」予算を支出すると回答した人の割合が突出して多く、全体の半数近く(42%)を占める。実際、2番目に多い回答は、Facebookに支出するマーケティング予算の割合を「多い」と評価するものだが、全体の18%を占めるにすぎない。また、予算に占めるFacebookへの支出を「適度」と回答した人は、直近の1年で30%から42%に増えている。
さらに、Facebookにマーケティング予算を「まったく支出しない」という回答が増えていることも注目に値する。2023年第1四半期を見ると、Facebookでの「支出なし」という回答が全体の15%を占めている。この数字も十分に低いが、半年前の7%と比べれば、わずかながら改善している。
ブランド側では、Facebookに支出するマーケティング予算の割合を「少ない」と評価する回答も、この半年で大きく変動した。2022年第3四半期は「少ない」という回答が21%を占めていたが、今年の第1四半期は大幅減の6%だった。
Facebookに支出するマーケティング予算の割合を「非常に多い」と評価する回答にも、わずかながら変動が見られる。2022年第3四半期の4%から、2023年第1四半期には9%に上昇した。
この調査から、買い手側がFacebookにマーケティング投資を続けていること、さらにはその投資の程度がうかがい知れる。残る大きな問いは、その投資が効果を上げているか否かだ。そしてその答えは、「ある程度」といったところのようだ。
この調査を見る限り、エージェンシー側では、投資効果に関するFacebookへの信頼度は下落傾向にある。ほとんどのエージェンシー(96%)は、Facebookに対してなにがしかの信頼を寄せてはいるが、その度合いはいくぶん低下しているようだ。
たとえば、エージェンシー側で、Facebookにはクライアントのマーケティング施策を成功に導く能力があると「信頼している」または「大いに信頼している」と回答した人は、昨年同期以来、減少しつづけている。2022年第1四半期には、Facebookの能力を「大いに信頼している」という回答が全体の19%を占めていた。ところが、2023年第1四半期には、この割合が13%に下落している。また、Facebookの能力を「信頼している」と回答した人も、この1年で40%から31%に減少した。
一方、Facebookにはクライアントのマーケティング施策を成功に導く能力があると「少しだけ信頼している」と回答した人は、この半年で大きく伸びている。昨年の第3四半期は、エージェンシー側で「少しだけ信頼している」と回答した人は13%だが、今年の第1四半期には全体の4分の1近く(23%)に増えている。
Facebookのマーケティング能力に対するブランド側の信頼度は、エージェンシーよりも大きな変動幅を示している。
たとえば、今年の第1四半期を見ると、ブランド側では、Facebookの能力を「少しだけ信頼している」という回答がもっとも多い。しかし、DIGIDAYの調査で信頼度の質問をはじめた2021年第3四半期以来、ずっと1位を占めてきたのは「信頼している」という回答だった。具体的には、2023年第1四半期に「少しだけ信頼している」と回答した人は27%で、半年前の17%から大幅に増加した。
他方、ブランド側でFacebookの能力を「信頼している」と回答した人は全体の4分の1に満たない(24%)。「信頼している」という回答が半数近く(48%)を占めた半年前の結果から、大幅減となった。なお、2021年第3四半期から2022年第3四半期にかけての1年間は、ほぼ同じ数字で推移している。
反対に、Facebookの能力を「まったく信頼していない」と回答した人は、半年前の4%から大きく増えて12%だった。
一方、ブランド側でFacebookのマーケティング能力を「大いに信頼している」と答えた人の割合は大きく回復している。この回答が全体に占める割合は依然として少数派(12%)だが、2021年第3四半期に14%に達して以降、2022年は1年を通じて右肩下がりが続き、3%または4%にとどまっていた。
Julia Tabisz(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)