詰まりを起こした血管を外科医が治療するときには、病変部に向けて極細のカテーテルを慎重に通し、X線に写る造影剤を投入するという治療法が採用される場合があります。こうした治療をより簡易的に行うため、血管内を移動できる小型のロボットを用いて造影剤を投入するという方法が開発され、その実験に成功したことが明らかになりました。
Mini Robot Enters Blood Vessels, Completes Surgery – IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/mini-robot-surgeon
Small Magnetic Robot Completes Vascular Surgery – YouTube
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脳卒中や心筋梗塞、末梢動脈疾患など、血管が詰まることによって起こる症状は人間の死に直結することがあり、世界人口の高齢化や肥満の増加に伴い、今後さらに増加することが予想されます。こうした詰まりは外科手術で取り除くという治療法が一般的ですが、外科医が手作業で手術器具を血管に差し込むという難しさに加え、器具の場所を確認するのにX線に頼らなければならないため、医療従事者が高線量放射線を不用意に浴びてしまうという課題があります。
このような問題を解決するために、漢陽大学校のGunhee Jang氏のチームが、磁石で誘導できるロボットを使った解決策を考え出しました。
Jang氏らは、さまざまな角度から撮影したX線画像を使い、病変部周辺の血管の3Dマップを作成するソフトウェアを開発。実際の治療の際は、病変部付近の血管に「I-RAMAN」と名付けたロボットをカテーテルで注入し、3Dマップと磁石を使って病変部までロボットを誘導します。
治療が必要な場所に到着したロボットは、造影剤や薬剤の局所投与や血栓の吸引など、さまざまなタスクを実行することができます。ロボットの作業が完了すると、磁石によってロボットがカテーテルに戻され、ロボットは体外に取り出されます。
Jang氏は、まず水槽に浮かべた人工血管でこの技術をテストし成功。続いて麻酔をかけたブタでロボットをテストし、1年かけて計8回実験を行った結果、ついにこの方法が実現可能であることを証明しました。
Jang氏は「血管が複雑な形をしていたり、完全にふさがっていたりすると、病巣を正確に狙うことが難しいため、手術は長時間に及びます。人工血管でロボットによる血管内治療が行えるという自信はありましたが、ブタでの実験では全く異なる難しい世界であることに気づきました」と述べています。
Jang氏のチームはI-RAMANの商業化を目指して研究を続ける予定で、InterMagという名前のバイオベンチャー企業も設立しています。
Jang氏は「今回のブタでの実験から、マイクロロボットと磁気ナビゲーションシステムを改良する方法が見えてきました。具体的には、磁気ナビゲーションシステムが生み出す磁場を大きくし、マイクロロボットのサイズを小さくして効率的に設計する予定です」と、今後の意気込みを語っています。また、韓国の食品医薬品安全局に臨床試験を申請する予定だとも述べました。
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