ラグジュアリーブランド は、アクセサリー強化するなか、鈍化する主な顧客層にどう対応しているのか?

DIGIDAY

複数のラグジュアリーブランドが2023年秋向けにアクセサリーやフットウェアラインへと拡大しているが、そのようなカテゴリーが売上につながるかどうかは疑問である。

ボッテガ・ヴェネタの成長に貢献したダニエル・リー氏

ダニエル・リー氏のデビューコレクションに先立ち、バーバリー(Burberry)CEOのジョナサン・アクロイド氏は11月の収支報告で、同社を50億ポンド(約8174億円)に成長させたいと語った。その達成に向けた彼の計画はバーバリーのアクセサリー事業を総売上高の37%から50%以上に成長させるというものであり、それを推進するのが、リー氏の皮革製品に対する「稀有な才能」である。

またアクロイド氏はフットウェアを最前線に推し進める計画があると述べ、同カテゴリーにおけるバーバリーの軍関連の歴史とノウハウを強調している。2021年までボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)のクリエイティブディレクターを務めていたリー氏はバッグとシューズカテゴリーで優れた業績を残している。バッグではザ・ポーチ(The Pouch)やザ・カセット(The Cassett)といったスタイルを、シューズではストレッチ(Stretch)サンダルとパドル(Puddle)ブーツで新しいタイプのレザーアクセサリーを展開し、ボッテガ・ヴェネタが旬のブランドとしての地位を確立するのに貢献している。

2020年2月に発表されたケリング(Kering)の2019年年次報告書によると、ザ・ポーチは「ボッテガ・ヴェネタの歴史のなかで最速で売れたバッグ」であるという。また、デジタルコンサルティング会社、レクトラ(Lectra)の2021年のレビューでは、その年のボッテガ・ヴェネタの世界売上高の74%がハンドバッグカテゴリーによるもので、ダニエル・リー氏の全在職期間におけるボッテガ・ヴェネタの製品範囲の42%を革製品が占めていることが示された。

リー氏の才能に賭けるバーバリー

問題は、そのような成功がバーバリーで再現できるかどうかである。さらに重要なことには、(富裕層ではないがラグジュアリーアイテムの購入に関心の高い)意欲的な購入客のあいだで自由裁量支出が減少していることを考えると、リー氏による新しいアクセサリーを積極的に購入する顧客がいるかどうかということがある。グッチ(Gucci)とサンローラン(Saint Laurent)を所有するケリングの幹部は、10月、直近の四半期でエントリーレベルの製品にいくらか重圧があったと語っている。また、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)のオンラインオペレーションのCEO、マーク・メトリック氏は、2022年11月のインタビューで意欲的な購入客の成長が鈍化していると述べている。

ハンドバッグカテゴリーの成長

ハンドバッグは比較的手頃な価格のブランドにおいて成長中のカテゴリーだ。社歴20年のベテラン、ニリ・ロタン(Nili Lotan)は12月にハンドバッグを初めてローンチした。またハンドバッグを中心に2015年にローンチしたブランドン・ブラックウッドは2月初旬のニューヨーク・ファッション・ウィーク中にフットウェアへ進出した。シューズコレクションには285〜565ドル(約3.9万〜7.7万円)までの7スタイルがあり、これは、アクセサリーに1000ドル(約14万円)を出すのは気が引けるかもしれない購入客を対象にするというブラックウッド氏の通常の戦略に基づいている。

ロンドンでは、英国のラグジュアリーブランドのアルワリア(Ahluwalia)が8カ月の開発期間を経て、2月のロンドンファッションウィークで11点のシューズコレクションを発表した。複数のカラーのローファー、ブーツ、ストラップヒール、ミュールが含まれている。同社サイトと少数の小売パートナーにおいて470〜1200ドル(約6.4万〜16万円)で販売される予定だ。マーケットリサーチ企業のブレイニーインサイツ(Brainy Insights)の2023年1月のデータによると、世界のラグジュアリーフットウェア市場は、2022年から2030年までの年平均成長率は8%で、2030年までに562億ドル(約7.6兆円)に達すると予測されている。

マーケットリサーチ会社のNPDによると、D2Cブランドの売上を除く2022年のフットウェア市場全体は2021年と比較してほぼ横ばいだった。ドレスフットウェアは売上高が前年比で34%増加して市場シェアを獲得しているが、同カテゴリーのドル売上高は依然として2019年のレベルを下回っている。ハンドバッグの売上高は2022年に1%増加している。

アクセサリーカテゴリーの現状

マーケットリサーチ会社、ユーロモニター(Euromonitor)のグローバルラグジュアリーグッズ担当責任者、フルー・ロバーツ氏は次のように述べている。「当社のデータでは確かに減速してはいるが、その多くはパンデミック中にほとんどの市場で見られた大幅な落ち込みが原因だ。高い純資産を持つ個人にはラグジュアリー製品に費やす金がある。だが、富裕層や裕福な消費者グループでさえもファッションよりも健康やウェルネス、旅行などに支出したいと考えている人々がいる。生活費が上がり可処分所得も圧迫されているなら、ラグジュアリーバッグの購入が必ずしもほかのカテゴリーより優先されるわけではない」。

ラグジュアリーブランドにはシューズとバッグが引き続き購入客の強い関心を集めているブランドもある。ランバン・グループ(Lanvin Group)は2月27日の収支報告でランバンの卸売売上高が前年比で145%増加したと報告し、「強いブランド力と、特にアクセサリーに対して世界のラグジュアリー小売業者やバイヤーのあいだでの需要が高いことが示されている」。

モーダ・オペランディ(Moda Operandi)のノンアパレル担当ディレクター、ライアン・クレマン氏は、アクセサリーとフットウェアはさらに幅広い顧客層にリーチできることから同社のラグジュアリーブランドパートナーの売上のかなりの部分を依然占めていると述べている。「これらのカテゴリーは通常、もっとも手頃な価格であることを考えると、ブランドの(購入客が)最初に、そしてもっとも頻繁に購入するものであることは変わらない。我々のフォーカスは長く愛されるシューズとハンドバッグのスタイルだ」。

アクセサリーの需要鈍化を感じるマイテレサの対応

しかし、マイテレサ(My Theresa)のようなマルチブランドを抱える小売業者ではアクセサリーやフットウェアの需要が減少している。同社が2月23日に発表した12月31日までの期間の収支報告によると、景気後退と自由裁量支出の減少の結果、意欲的な顧客の購入が減ったためシューズとハンドバッグの需要が鈍化したという。

マイテレサのCEO、マイケル・クリーガー氏はこの報告で次のように語っている。「カテゴリー別に見れば、トップ顧客のシェアがもっとも高いのはプレタポルテで、意欲的顧客にとってはスニーカーやバッグといったサブカテゴリーがより重要だ。当社の事業全体の第2四半期におけるシューズとバッグの減速は意欲的な顧客による需要の鈍化を証明しているが、プレタポルテへの影響ははるかに少なかった」。

その結果、マイテレサはプレタポルテのデザイナー限定ローンチを拡大し、プッチ(Pucci)のスキーウェアのローンチやライフスタイルなどの厳選したブランド体験にフォーカスすることにより、真のラグジュアリー顧客に長期に対応している。

[原文:As designers launch accessories, demand in key customer group is slowing

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました