BuzzFeed、ライブ配信ショッピングに早期参入:自社リソースの活用でさらなる拡大を目指す

DIGIDAY

メディア企業各社が、自社のeコマース事業を最大化するための次のビッグチャンスとして、ライブ配信ショッピング(別名、新たなデジタル版QVC)のテストを開始している。そしていま、そこに新たな1社が加わった。BuzzFeedだ。

パンデミック中、店が閉まり、消費者は家から出られなくなったことで、オンラインショッピングが活況を呈すると、パブリッシャー各社はアフィリエイトeコマース戦略の策定と、オンラインショッピングハブの構築に躍起になっている。BuzzFeedもそのなかの1社だ。だが、中国の小売企業各社がライブ配信ショッピングで成功をつかむようになり、NTWRKなど、いわゆる「アポイントメント(予約)ショッピング」というアイデアで若い消費者の支持を集める企業もあらわれるようになった。メディア企業各社も、オンライン小売には売上を得るチャンスがあることに気づきつつある。

新しい世代に向けたライブ配信ショッピング

BuzzFeedはいま、自身がライブ配信の分野で成功するチャンスを狙える位置にいるとわかっている。アフィリエイトコマース事業、プロダクトライセンシング事業、そして、購入可能な商品をオーディエンスに紹介する長尺番組を制作可能な動画制作スタジオ事業。これらを同時に展開できる能力があるからだ。

BuzzFeedでコマース部門のシニアバイスプレジデントを務めるニラ・アリ氏は、次のように語る。「QVCとHSNは、どちらも何十年も前からライブショッピングを手がけてきた最大規模のプラットフォームだ。確実に、米国にライブ配信ショッピングが根づいていることがわかる。だが、BuzzFeedがいまいちばん真剣に取り組んでいるのは、『ライブ配信ショッピングというものを新しい世代に向けて、どう解き放つか?』ということだ」。

今年はじめからこれまでに、BuzzFeedはAmazonライブ(オンラインマーケットプレイスのショッパブルライブ配信サービス)で50回以上のライブ配信を行ってきた。時間幅は1~3時間で、アリ氏によれば、90分が最適だという。6月のAmazonプライムデーには、同社は16時間に及ぶライブ配信を行い、メインのAmazon Liveでの配信とFacebook Liveでの同時配信で、100万超のビューを獲得した。

自前リソースにこだわる

アリ氏は、BuzzFeedがこれまでにライブ配信で得てきた売上について、具体的な数字は明らかにされなかった。だが、これは十分に意味のあることで、アリ氏のチームは今年、このビジネスモデルに賭けるという。

アリ氏によれば、ライブ配信ショッピングへの参入を妨げる最大の障害のひとつは、番組から引き離されることなく手軽なショッピングを楽しめる、プラットフォームや技術スタックを見つけることだという。だからこそ、アリ氏のチームはAmazonライブと提携しているのだ。最終的には、BuzzFeedが所有・運営する各サイトで稼働するライブ配信プラットフォームを立ち上げることにはなっているが、そのローンチに向けた具体的な計画はいまのところまだない。

アリ氏は、Amazonライブとのパートナーシップの条件についても詳細は明らかにしなかった。しかしアリ氏は、ライブ配信ではレベニューシェアモデルが一般的であることについて言及した。たとえば、このタイプのキャンペーンにボトム・オブ・ザ・ファネル(BOFU)のKPIを求めている広告主にとっては、ブランデッドコンテンツの大きなチャンスだという。

BuzzFeedは当面、絵コンテ(ストーリーボード)の作成から実際にライブ配信までを行うコンテンツプログラミングに最大のチャンスを見出していくと、アリ氏は話す。BuzzFeedは制作スタジオを所有している。エディトリアルシリーズを通じて育成してきた自前の人材もいる。こうした点を踏まえると、オーディエンスを惹きつけて購入する気にさせるエンタメ系リアリティコンテンツの制作で、BuzzFeedは優位に立っていると、アリ氏は話す。

プライムデーの16時間ライブ配信には、BuzzFeedスタッフのハンナ・ウィリアムス氏が登場。当日のセールから一緒に選んだ商品を、自身の子どもたちに開封させた。それと並行して、当日のセールで購入できる商品を用いて、リアルタイムで彼女のアパートの模様替えも行われた。Z世代の顧客をひきつけるために、ティックトッカーやインスタインフルエンサーも招かれている。彼らのフォロワーがライブ配信を訪れ、さらなるアンプリフィケーション(増幅)に貢献してくれることを期待してのことだ。

購入ボタンへの「フック」

いまのところ、BuzzFeedがライブ配信ショッピングを試しているプラットフォームは、AmazonライブとFacebookライブのふたつだけだ。配信前、配信中のソーシャルアンプリフィケーションは、新しいプラットフォームの認知度を高めるために用いられるマーケティングの主戦術だと、アリ氏は話す。

しかし、一部のブランドと小売企業は、他のソーシャルメディアプラットフォームでライブ配信ショッピングの簡易版をすでに試すようになっている。

インスタグラムライブとTikTokライブでも、消費者と交流しながら商品を紹介することはできるが、どちらのプラットフォームにも、番組内で商品が買えるチェックアウト機能はない。その代わりに、一部のブランドはディスカウントコードや、顧客をライブ配信から自社のウェブサイトへ誘導するためのインセンティブを提供している。ベン・ゼトラー・デジタル・メディア(Ben Zettler Digital Media)の創業者で、デジタルマーケティングおよびeコマースコンサルタントのベン・ゼトラー氏は、これにより、そこに高揚感が生まれるだけでなく、ブランドもライブ配信の成功を追えるようになると話す。

ゼトラー氏によれば、このモデルで「とんでもないレベルの成功」を手にして、それをビジネス戦略の中核に据えているクライアントはまだいないという。だがその一方で、これを、消費者に喜んで購入ボタンを押させる「フック」がそこにあるかぎり、すべての小売企業や商品カテゴリーにとってのチャンスが秘められている分野と見ていると、ゼトラー氏はいう。

早い者勝ち方式で限定版アイテムを少量リリースする「プロダクトドロップ」は、「大きな宣伝効果を生み出せる手法」だと、ゼトラー氏は語る。これに、パブリッシャーの番組編成とオーディエンスへのアクセスによる援護を組み合わせれば、そこには成功が生まれると、ゼトラー氏はいう。

「購入の前に考えたり、下調べしたりといった通常のカスタマージャーニーをたどる時間を消費者に与えずに、クレジットカードを取り出させて商品を買うように促す。これがライブショッピングの本質だ」と、アリ氏は語る。「購買サイクルを圧縮するには、素早く行動する理由を消費者に与えなければならない」。

コンプレックス(Complex)とBuzzFeedのコマース統合の可能性について語るのは時期尚早だろう。一方、アリ氏は、コンプレックスのオーディエンスはすでに、プロダクトドロップモデルを受け入れる準備が整っており、これが同社のフランチャイズ、「コンプレックスコン(ComplexCon)」と「コンプレックスランド(ComplexLand)」を支える柱になっていると述べている。

[原文:How BuzzFeed taps its resources to grow an early foray into livestream shopping

KAYLEIGH BARBER(翻訳:ガリレオ、編集:小玉明依)

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