ワシントン・ポスト 、初の自社製ゲームコンテンツを公開:クイズゲームで新規読者の開拓へ

DIGIDAY

ワシントン・ポスト(The Washington Post)が、ゲームとeスポーツの専門メディア「ランチャー(Launcher)」の閉鎖を発表してから1カ月余り経った2月27日(米国時間)、自社製のゲームコンテンツを公開した。この動きは、ワシントン・ポストのような全米規模のパブリッシャーが、ゲームジャーナリズムの長期的な持続可能性に確信を持てないながらも、依然としてゲームを有望なビジネスと考えていることを示すものだ。

「オン・ザ・レコード(On the Record)」と呼ばれるワシントン・ポスト初の自社製ゲームでは、1週間の主なニュースに関する知識を問うクイズが、クイズサイトのスポークル(Sporcle)風に出題される。クイズの内容は平日に毎日更新され、月曜から木曜までは1日1問、金曜日には週末向けに10問のクイズが掲載される。このコンテンツを企画したのは、ワシントン・ポストで最新ニュース製品担当ディレクター兼編集者を務めるクリストファー・ミーガン氏とマイク・ヒューム氏、そして同部門でクイズ専門ライターを務めるエイミー・パーラピアノ氏だ。

オン・ザ・レコードを購読者獲得のファネルとして活用へ

オン・ザ・レコードの開発が始まったのは2022年の春と、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が人気ワードゲームの「Wordle(ワードル)」を2022年1月に買収してから間もないタイミングだった。だが、この大騒ぎとなった買収が自社の取り組みに直接影響を与えたわけではないと、ミーガン氏は述べている。

「もちろん(Wordleは)すでに存在していたが、Wordleに対抗するために始めたものではない。そうしても不思議ではなかっただろうが」と、ミーガン氏は話し、「(オン・ザ・レコードは)それ以前から考案されていたもので、ワードゲームではなく雑学ゲームの方向に舵を切るのが賢明だと我々は考えていた」と続けた。

ワシントン・ポストのニュースクイズはWordleと異なる路線をめざしたものだが、この2つのゲームには時期的なこと以外にも似通った点がある。それは、知識を問うシンプルなクイズを毎日出題し、簡単に友達とシェアできることだ。また、オン・ザ・レコードが史上初のニュースクイズというわけではない。ニューヨーク・タイムズは2018年から自社でニュースクイズを制作しており、デイブレイク・アッパー・バレー(Daybreak Upper Valley)などのローカルニュースサービスも独自のクイズを公開している。

しかしながら、これまでクロスワードやパズルを提供していたワシントン・ポストにとって、オン・ザ・レコードは極めて重要な取り組みだ。ミーガン氏は、ニューヨーク・タイムズがWordleで行っているのと同じように、最終的にはオン・ザ・レコードを購読者獲得のファネルとして活用したい考えだ。ただし、これは当面の目標ではなく長期的なビジョンだと、同氏は強調している。

「私がこれまで立ち上げてきた多くのサービスは、さまざまなオーディエンスに自社を紹介することをコンセプトとしてきた」と、ミーガン氏は説明する。「自社を世界に紹介し、人々に来てもらい、毎日の習慣として楽しく過ごしてもらうというのが我々のやり方だ。そして最終的には、購読につなげる方法を見つけ出したいと考えている」。

ゲーマーではない人をゲームに呼び込める

自社でゲームを開発して新たなオーディエンスを呼び込もうとする一方で、ゲームメディアを廃止するというワシントン・ポストの行動は、一見矛盾しているようだが、そうではない。オン・ザ・レコードは確かにゲーム好きにアピールするものだが、そのターゲットオーディエンスはコアなゲーマーではなく、ゲーム的なテイストを好むニュース読者だ。

「ニュースゲームはクロスワードと似ているのではないだろうか。文字や情報を好む人の脳に働きかけるため、ゲーマーではない人をゲームに呼び込める」と、サブスクリプションの専門家で、デジタルサブスクリプションプラットフォームのLeaky Paywall(リッキー・ペイウォール)でクリエイターを務めるピーター・エリクソン氏はいう。「こうした取り組みは、どのパブリッシャーにもフィットすると思う」。

改善を行えば、数百万人の新規読者を狙える可能性も

とはいえ、オン・ザ・レコードに改善の余地が残されていることは間違いない。購読者を呼び込むファネルとしての可能性を考えればなおさらだ。たとえば、プレイヤーとパブリッシャーが長期的な関係を築くのに役立つ簡単な仕組みが、現時点で存在しない。Wordleは新規ユーザーに対し、クイズの結果をシェアするためにニューヨーク・タイムズのアカウントにログインするか無料アカウントを作成するよう促しているが、オン・ザ・レコードではすぐに結果をシェアできるのだ。もっとも、ミーガン氏によれば、ワシントン・ポストはまだ詳細を検討しているところだという。

「(オン・ザ・レコードで)アプリをダウンロードするよう求められたため、これはアプリユーザーを増やすための仕掛けで、彼らの狙いはそこにあるのかもしれないと最初は思った」と、エリクソン氏は話す。「だが、『メールアドレスが必要になりますので、登録してください』といった文章はどこにもなかった。彼らに必要なのはそのようなフローだ」。

ユアディクショナリー(YourDictionary)のワードファインダー(WordFinder)が2023年に行った調査によれば、現時点で44%もの米国人がWordleをプレイしているという(ただし、このゲームはニューヨーク・タイムズが人気絶頂の時期に買収したものであり、自社で開発したものではない)。オン・ザ・レコードがWordleと比べてごく小さな規模でも人気が得られれば、数百万人の新規読者がワシントン・ポストにもたらされる可能性がある。ミーガン氏は具体的な数字を明かさなかったが、「利用率は極めて高く、ほかのクイズと同レベルになっている」と語った。今後の成長は、時間の問題でしかないのかもしれない。

「新しいゲームが人気を得るまでには、数カ月か、場合によっては数年かかる可能性がある」と、ユアディクショナリーでコンテンツ戦略担当ディレクターを務めるキャンディス・ブラッドリー氏はいう。「ワードゲームの開発を考えている新聞社にとってよい話は、いったん大きな人気を獲得したゲームはその人気が長く続く傾向があることだ」。

[原文:The Washington Post looks to bring in new subscribers with its first in-house game, “On the Record”

Alexander Lee(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)

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