TikTok の投稿とプロフィール、エージェンシーの採用審査の場に:「自分にはコンテンツが創造できる、と示す利点になる」

DIGIDAY

バーニー・ウィリアムズ氏には、TikTokに1万5000人近いフォロワーがいる。氏は得意分野――BookTokを介した本――にフォーカスすることで、それだけの人気を築き上げた。実際、そうすることでウィリアムズ氏は、オーディエンスを拡大し、バズらせるコツを見出しただけでなく、2022年7月には、クリエイティブエージェンシーOKRPに就職もした。

「うちのリクルーターが私のソーシャルを全部見て、連絡をしてきた」とウィリアムズ氏は話し、その少し前に友人が同エージェンシーに就職したばかりで、その友人がレジュメ作りを手伝ってくれた、とも言い添える。ウィリアムズ氏は個人で行なってきたソーシャルメディア作品/仕事をすべてそのレジュメに載せるとともに、「BookTokインフルエンサーに関する記事に取り上げられた」旨も記したところ、それが「私の作品/仕事に箔を付けてくれた――こうした『経歴』をどこまで真剣に受け止めてくれるかは、やってみなければわからない」と、氏は話す。

ウィリアムズ氏のTikTokにおける存在感と同プラットフォームに対する高い理解力に惹かれたと、OKRPのクライアントビジネス部門トップ、ベッツィー・ロス氏は話す。「TikTokというプラットフォームにおいて、バーニー氏が何者なのか、よく見てみた」とロス氏。「我々は、リアルタイムの流行に乗れるコンテンツを欲していた。バーニー氏が何者かが見えた瞬間、どんな職種が合うか云々よりも先に、答えが出た」。

ウィリアムズ氏は2022年夏、トレンドキャスターとしてOKRPに入社した(その後、シニアソーシャルストラテジストに出世している)。入社以来、彼女はソーシャルトレンドに関するその知識を駆使し、最新流行に乗る手段をクライアントのために見つける手助けをするとともに、クリエイターおよびプロデューサーとして得てきた洞察を利用し、バズる可能性が高まるよう、コンテンツを編集している。

TikTok上で何ができるのか

TikTokが成長を続け、広告主にとって欠かせない存在になるなか、一部のマーケターおよびエージェンシー幹部は同プラットフォームを、才能を探す、あるいは採用を考えている人々のプロフィールをより詳しく見るための場として利用している。そうすることで、エージェンシーらは同プラットフォームを深く理解する才能を見つけたいと考えている。

「TikTokコンテンツに関するクライアントからの問合せが増えている」と、電通クリエーティブ(Dentsu Creative)のソーシャル部門クリエイティブディレクター、ブリジット・ジュウェル氏は話し、TikTokにフォーカスする同エージェンシーのチームは2022年、3倍に拡大したと、言い添える。同エージェンシーは個人制作のTikTokを才能の発掘に、そして「常に候補者を押さえておく」ために利用しはじめたと、ジュウェル氏は話す。「彼らには大きな反響を起こすコンテンツが作れる、ということは容易に理解できる」。

雇用した人物が、クライアントのためにTikTok上で何ができるのかを示すポートフォリオを重視するエージェンシーもいる。各クライアントに相応しい類のコンテンツを制作できる実力を示すことは、昔から広告業界に欠かせないものだった――その媒体がいまやTikTokにまで拡大されている事実は、今日のエージェンシーのニーズに合わせて進化した結果だと、エージェンシー幹部らは話す。

「ソーシャルフォロワーを掴める個人の能力は、非常に優れたエクスペリエンスにほかならない」とソーシャルショップ、リーチ・エージェンシー(Reach Agency)の共同創業者ゲイブ・ゴードン氏は話し、同ショップは過去にクリエイターたちを雇用してきたが、それだけが採用の理由ではなかった、とも言い添える。「我々はいま、前例のない時代の中で仕事をしている。以前は、普通の人が遊びでテレビCMやバナー広告を創ることなど、ありえなかった。だがいまや、パラダイムシフトが起きたのであり、必要な経験を手にし、そこから成長できる機会は、誰もが手にできる」。

ゴードン氏によれば、リーチ・エージェンシーは採用の際、ソーシャルフォロワー数を決め手にはしていないが、個人で制作したTikTokコンテンツを共有するレジュメの数が、なかでもクリエイティブレジュメの数が増えているのは事実だと、指摘する。また、2022年夏に採用した人物は、同社の採用担当者に向けて創ったTikTokに光るものがあり、それで雇用を決めたという。「ストーリーを伝える能力に驚くべきものがあった」と、ゴードン氏はその人物のTikTok動画について語る。「それが決め手のひとつになった。この人には仕事ができると、その動画が証明していたからだ」。

会社にとっての「利益」と「採用基準」は異なる

キューユー・メディア(QYOU Media)のプレジデント、グレン・ギンズバーグ氏も同様の見方をし、採用候補者の各種プラットフォームに対する理解力は面接で伝わってくるし、プロフィールの公開は、「採用の決め手のひとつになる」と話す。

「明らかに複数の候補者がいる場合、クリエイターとして、ほんの数秒でストーリーを伝えられる理解力を示せれば、その人は他との違いを見せられる」と、ギンズバーグ氏は話す。

TikTokといったプラットフォーム上の経歴を通じて手にできる専門知識/技術の必要性は、大手エージェンシーよりも小規模エージェンシーに就職する際のほうが、より高いと思われると、広告関係リクルーターのクリスティ・コーズ氏は指摘する。氏いわく、小規模エージェンシーでのほうが「従業員一人ひとりが会社の代表的な役割を担うことがはるかに多い。我々が見ている限り、小規模エージェンシー、若いエージェンシーは、すでにプラットフォームを熟知している人を雇いたいと考えている」。

もっとも、だからといって、エージェンシー勢が皆、良い採用候補者を求めてTikTokをしらみつぶしに探しているわけではないし、その人のプロフィールだけで採用か否かが決まるわけでもない。クリエーターコマース企業ウェーラー(Whalar)のブランドソリューション部門SVPマリンダ・イエルヴァートン氏は、クリエイターでもある人物の採用は、クリエイター的視点をもたらしてくれるため、社にとって利益となるが、それはあくまでひとつの「利益」であり、同社の「採用基準」ではないと話す。

レイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)のペイドソーシャルおよびインフルエンサー部門グループディレクター、シュリー・ジョーンズ氏も同じ見方をする。「その人がクリエイター的な思考の持ち主で、すでにソーシャルメディアで仕事をしているなら、それは未来の雇用主に対して、私にはコンテンツが創造できます、と示すための利点になる」とジョーンズ氏。「それは必ずしも必要というわけではないが、補助的な力にはなる」。

消費者としての視点が重要

ただ、それでもなお、大衆が消費するコンテンツの流行や、そうした流行にブランドがどうしたら乗れるのかを語れる能力のほうが、自分にとっては重要だと、ジョーンズ氏は話す。

「その人のソーシャルプロフィールよりも、ソーシャルメディアに対する消費者としての見方を、私は重視する」と、ジョーンズ氏は言い添える。「ピンタレスト(Pinterest)における今の流行を3つ上げられますか? インスタグラムでフォローしているお気に入りのアカウントは? 最近の個人的TikTokトレンドは何でしょう?」

ジョーンズ氏はこう続ける。「私としては、その人がコンテンツをどう制作するのかよりも、どう消費するのかを知りたい。私たちの仕事は消費者の目の前で行なわれるものであり、私たちのブランドが消費者とどのように交流するのかが肝だと思っている」。

[原文:When it comes to the talent working on TikTok, more agencies are eying personal profiles

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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