解約しづらい サブスクリプション ブランドに法的措置も:「透明性と柔軟性が高い継続率につながる」

DIGIDAY

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救済に6年間を要したが、だまされて同意なしにサプリメントのサブスクリプションが自動更新されてしまったと申し立てている1万7000人以上の買い物客が、今後数カ月以内に連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)から97万3000ドル(約1億2600万円)の和解金の一部を受け取れる見込みだ。

これは、規制当局がサブスクリプションブランドに対し、消費者が解約するのを難しくしすぎているという理由で、法的責任を追及できるという、時宜を得た警告になる。これは、この部門が成熟するにつれて監視がより強化されてきている分野だ。11月にFTCは、ボナージュ(Vonage)とのあいだで、同社のVoIPサブスクリプションが非常にキャンセルしにくいと申し立てられたことについて、1億ドル(約130億円)で和解した。さらに、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau)は1月19日、「ネガティブオプション」、すなわち顧客による明示的なキャンセルがないとサブスクリプションが自動更新されることを避けるよう警告する新しいガイドラインを各企業に向けて発行した

透明性を保つガイドライン

サプリメント事業のヌートラクリック(NutraClick)の場合、FTCは2016年にはじめて措置を講じた。これは同社が、利用者の同意なしに、サプリメントの月額サブスクリプションプランに自動登録させていたという申し立てを受けたものだ。同局は同社について、利用者が無償トライアルに申し込んだ場合に毎月29.99ドル(約3900円)から79.99ドル(約1万400円)を支払うということに対して同意を得ていなかったと語る。同社は2020年9月に、104万ドル(約1億3500万円)の罰金を支払うことに同意した

サブスクリプション分野のブランドにとって、このガイドラインは顧客に対して透明性を保つよう勧告するものだ。サブスクリプションによるソフトウェアベンダーで、トウィッチ(Twitch)、バークボックス(BarkBox)、ファブフィットファン(FabFitFun)などのブランドを含む2000以上のサブスクリプションプランを扱っているリカーリー(Recurly)で最高マーケティング責任者を務めるテリーサ・マッケンドリー氏は、顧客が予測していない支払いが、突然現れるような事態は避けることが重要だと述べている。

同氏は次のように述べている。「サブスクリプションは顧客に対し、どのようにしてアクセスするか、サポートにはどうやって問い合わせるのかを明確にする必要がある。誰かに連絡しようとしても、連絡先が見つからず、FAQの項目は多すぎ、チャットボットもないといった状況は誰もが経験しているだろう。このような状況は非常にやっかいなものだ」。

2028年に2兆ドル市場に

しかし、ショッピングの方法としてサブスクリプションは急増しつつある。全世界のeコマースサブスクリプション市場は2022年に966億1000万ドル(約12兆6000億円)に達し、2028年にはその約25倍の2兆4190億ドル(約314兆円)に成長すると予測されている。そして、サブスクリプションサービスが家庭の予算の大きな部分を占めるようになり、C&Rリサーチ(C&R Research)が昨年夏に1000人の米国在住者を対象に行った調査では、家庭がサブスクリプションに毎月約219ドル(約2万8500円)を費やしていることが判明したが、人々は自分たちが何を購入しているかを忘れる可能性も高くなってきている。このレポートでは、消費者の74%が毎月のサブスクリプションを忘れてしまいやすいと回答したとされている。

その人気の一方で、消費者に情報提供し、解約を減らすのは、ある意味綱渡りのようなものだ。ドッグフードのブランドのミーブ(Maev)など一部のD2Cブランドは、経済的に不安定な時期において、定額かつ信頼性が高い方法として、サブスクリプションに対するマーケティングを強化するようになっている。また、商品の多様化を進めているブランドもある。ハローフレッシュ(HelloFresh)は、調理キットよりも調理済み食品を求めている人々の顧客層拡大を狙い、自社ブランドのファクター(Factor)をカナダに拡大しようとしている

マッケンドリー氏は、この分野の成長の一因は、サブスクリプションによって買い物客が柔軟な買い物を自動的に行えることにあると指摘する。リカーリーのクライアントは、2021年から2022年に全世界でサブスクリプション数が21%増加し、ブランドの約40%は顧客の要求によりよく応えるため、毎年プランを変更している。

しかし、失策を回避するための方法は結局、適切な時期に「トリガーによるコミュニケーション」を行い、常に顧客への告知を絶やさず、自発的な解約を減らすことだと、同氏は述べている。

「利用者に対して、アカウントを管理するためのオプションを、微妙な差異を明らかにするような、詳細な形で使えることが重要だ。また、更新の時期や、支払いの期限などがいつなのか、前もって利用者に通告することも重要だ」と、同氏は述べる。

透明性が何より重要

ルーク・ヤング氏はアウトラインズ(Outlines)の創設者でCEOを務めている。同社は創設から1年のサブスクリプションサービス企業で、定期的な交換を推奨されているシャワー用カーテンなどの家庭用品に特化している。多くのサブスクリプションサービスではクーポンを使用して顧客を引き入れるが、同ブランドは明確に別の方向をめざしていると、ヤング氏は語る。同ブランドは創設時点から、サブスクリプションに対してインセンティブや無償トライアルを行わず、これによって顧客に対して実際のコストを明確に示してきたと、同氏は述べている。

同氏は次のように述べている。「我々は、自分たちの商品と、補充計画と呼んでいるサブスクリプションの価値を支持している。当社は、割引を行わないブランドであり、決済に対してインセンティブを持たないことで、利用者に対してより誠実で良好な体験を与えられると考えている。そして、それによってユーザーとのあいだにより良い関係を築くことができるだろう」。

さらに、顧客に対し、その顧客が購入した商品や価格、変更やキャンセルの機会を促す自動配信メールも用意している。注文が処理される3日前にもメールが送信される。

同ブランドの加入者は、年初の時点で約3500人で、継続率は約75%だ。中央値で約56%という高い継続率の理由は、透明なプロセスと、顧客のニーズに合わせたプランのカスタマイズを行っていることだと、ヤング氏は言う。アウトラインズのプランは、家庭での使用率に応じて3カ月、6カ月、9カ月のいずれかで更新できる。

「たとえば、特に高温多湿の地域に居住している人々は、シャワー用カーテンについて特に関心があり、バスルームを毎日使用している。このような人々は、カーテンをより頻繁に交換する必要があるだろう」と、ヤング氏は述べている。

柔軟性とカスタマイズ

リカーリーのマッケンドリー氏は、キャンセルを防ぐには、ブランドが顧客の要求に対して柔軟な対応を行うことが重要だと語る。これは、従来型のマーケティング戦略と似ていることがある。キャンペーン時に加入した顧客が、その後にキャンセルを望むとき、ブランドはその特典の継続を提供できると、同氏は述べる。また、特定の期間にわたってサブスクリプションを続けてきた顧客向けに、ロイヤルティ価格や、より安価で包括的なプランを提供することもできる。

たとえば顧客が1カ月のバカンスに出かけるときはサブスクリプションを中断できるようにするなど、タイミングの柔軟性も重要だ。

しかし、顧客がサブスクリプションの継続を望まない状況も当然存在する。キャンセルの処理を円滑に行うには、顧客に連絡先情報を確実に通知することが不可欠だと、マッケンドリー氏は述べている。

同氏は次のように述べている。「顧客を粗末に扱うビジネスは長期間続けられない。顧客がブランドとその商品について良い体験をするよう努めることが、ブランドやビジネス、そして最終的には収支決算にとって、もっとも持続可能な方針だ」。

顧客を維持するためには、さまざまな支払い方法を提供することも必要だと、同氏は述べている。リカーリーの調査によると、同社の取引の約53%はデビットカードで行われ、次いで、27%がクレジットカードで行われている。3番目に多いオプションはペイパル(PayPal)で、19%近くを占めている。

「長期的な関係を重視し、そのために投資し、顧客を理解し、さまざまなジャーニーを作り上げている企業が、長い目で見れば勝利するだろう」と、マッケンドリー氏は述べている。

[原文:Why subscription brands are making it easier to cancel your plan]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Outlines

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