「フルファネルでパフォーマンスを引き出す」:インスタカートCMOローラ・ジョーンズ氏が語る、ショッパブル広告戦略の進化

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インスタカート(Instacart)は、自社の広告事業が拡大して成熟するのに伴い、ショッパブル広告(購入可能な広告)に多額の投資を行おうとしている。

同社が最初に広告事業に参入したとき「最初はスポンサー付き商品リストだった。そして、プラットフォーム上でブランドを目立たせ、顧客の行動を形作るためのごく初期の方法だった」と、同社の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるローラ・ジョーンズ氏は説明する。

しかし、インスタカートのブランドと、フルファネルにおけるに数多くの広告ソリューションは、この1年間で拡大していった。今月初頭には、食料品配送プラットフォームとして初めて、大手醸造業者アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)社のビール、ミケロブウルトラ(Michelob Ultra)を扱ったショッパブルなテレビCMのシリーズを開始した。このCMは、NFLのプレイオフ期間中に放送され、同社のスーパーボウル(Super Bowl)キャンペーンを盛り上げるという意図もあった。

インスタカートは2022年3月、TikTokなどとのパートナーシップにより、ショッパブルなレシピも開始した。これは食品のインフルエンサーが自分たちのコンテンツからインスタカートのショッピングリストにリンクできるようにしたものだった。8月には、人気ミュージシャンのリゾ氏と共同で、「世界はあなたのカートのなかに(The World is Your Cart)」というキャッチコピーで、インスピレーションを与えるようなショッピングコンテンツとエクスペリエンスの新しいコレクションも開始した。

2021年にウーバー(Uber)からインスタカートに入社したジョーンズ氏は、リゾ氏のキャンペーンの成功について次のように米モダンリテールに語った。「文化においてすばらしいことが起きつつある瞬間を見つけ、その瞬間に我々がどのような役割を果たせるかについて考えた的確な例だ。リゾ氏は、多くの人々を自分の生活や、自分の家庭に受け入れ、ビーガンのレシピや自分の母親をみんなに紹介している様子を見て、まさにぴったりだと考えた」。

今年、同社はさらに多くのショッパブル広告のキャンペーンを作り上げることを希望しているが、「インスタカートの仮想ホールで話題になっているのは、ブランドを構築し、ファネル全体でパフォーマンスを期待できるような形で引き出すことだ」と、同氏は述べている。

同氏は米モダンリテールとの対談で、インスタカートが、ショッパブル動画の戦略の進捗や、自社の広告ビジネスをどのように進化させたいかについて詳しく語った。以下の対談内容は、簡略化と明確化のため編集を加えたものである。

◆ ◆ ◆

−−7月にインスタカートのCMOに正式に就任してから、優先事項だったのは何か?

私は7月にCMOに就任したが、実際にはもう1年以上にわたってマーケティングチーム全体を管理してきた。優先事項は実際のところ3つに分けられる。何よりもまず重要なのは、収益性のある成長を拡大することで、これは企業の主要なテーマとなっている。そして、マーケティングはどのような企業でも成長の中核的な原動力だ。これが最優先だ。

そして、ブランド自体を実際に形作ることだ。私は、ブランドが重要で、差別化要因になり得ると考えている。特に、企業が成熟し、業界が成熟していくにつれ、単なる取引のためのサービスから、人々に愛され、強く選ばれるブランドに移行していく必要があると考える。これもまた特に注目し、投資すべき分野だ。

最後はチーム自体だ。すでに述べたように、私は1年と少し前にマーケティングチーム全体を私の指揮下に統括した。その多くは能力開発であり、適切な人材を配置し、適切なスキルセット、そして当社の影響を拡大できる能力を確保することだった。

−−インスタカートが初の大規模なCPG共同マーケティングキャンペーンにミケロブウルトラとの提携を選んだ理由は何か?

ミケロブの親会社であるアンハイザー・ブッシュとは、以前から非常に強固な関係があった。彼らは、当社のスポンサー付き商品広告リストにおける最初の顧客のひとつだった。特にウルトラは、過去9カ月間にインスタカートでもっとも多く買い求められたビールだった。NFLのプレイオフ期間はビールが大量に売れる機会で、ウルトラは当社の顧客が好んでいることから、立ち上げパートナーとして理想的であると確信していた。

−−インスタカートのショッパブル動画の戦略は時間とともにどのように進化してきたか?

チームが進化し、事業が進化するにつれ、当社は独自プラットフォーム上で別のさまざまな形式に移行してきた。当社はショッパブルディスプレイ、ショッパブル動画、そしてブランドページを立ち上げ、ローファネルだけの状態から、ミドルファネルのリテールメディア体験へと移行している。これにより、商品の購入を検討していない人が商品を検討を行い、さらに購入するよう仕向けることができる。つまり、「どのみちビールを買うつもりだった」人だけでなく、「ビールを買うつもりではなかったが、このビールは美味しそうだ。これを見たら欲しくなってきた」という人を顧客にするということだ。

我々は、自社プラットフォームに関してこのような過程を経てきた。次のフェーズはこれを自然に進化させ、真の意味で自社プラットフォーム上でファネルを開くことだと、私は考える。そして、さらにファネルの上部に移行し、すべてのメディアを買い物できるようにして、ブランドパートナーのためのコンバージョンレイヤーにする。そこで、ブランドパートナーがリニアTVに投資しているなかで、我々はその瞬間の意図を汲み取り、その商品を1時間以内に顧客に届けられる手助けをする。当社は、この需要をリアルタイムで満たせる能力に大きな期待を寄せている。

−−具体的に、インスタカートはそれらのコンバージョン目標をどのように達成することを計画しているのか?

さまざまな要素を組み合わせる必要があるが、その一部は既存の能力で、いくつかは新しいものだろう。ミケロブウルトラのシリーズのスポットを例にとるなら、ユーザージャーニーはこのようになる。まず広告を見ると、末尾にQRコードがある。パンデミックのおかげでQRコードの使い方は十分に周知された。ユーザーがQRコードをスキャンすると、ブランドのページが開く。これが、目標を達成するための要素になった。

精選されたミケロブ商品のページが開く。このページでは小売業者が指定されていないため、好みの小売業者や住んでいる地域によって、適切な小売業者から商品を買い求めることができる。さまざまな地域で販売するための複雑な作業は必要ない。

−−この新しいキャンペーンの成功は、どのような基準で評価するのか?

特定のQRコードやブランドページから発生した購入の数など、従来からあり、広告主が見る典型的なものばかりだ。カテゴリーのシェアやシェアの伸長なども調べている。増加率も当社が重視する部分で、当社はこれを測定できることを売りにしている。当社が協力している各パートナーには、トライアルや、継続的なエンゲージメント、新しい層へのリーチなど、さまざまな目標があるだろう。当社は自前のファーストパーティーデータにより、パートナーがそのインパクトを理解できるよう支援できる。

−−今後数年間についてインスタカートのマーケティング戦略を定義するため重要な要素は何か?

我々がよく語っているのは、「ブランドフォーマンス」と呼んでいるものだ。ブランドとパフォーマンスを分けようとするのは誤った二分法だと考えている。マーケティングについて、私がチームに求めているのは、統合されたフルファネルであり、各メディアのタッチポイントが行動形成に果たす役割をしっかり認識することだ。

−−パンデミック以降、eコマースのプラットフォームは全般に予測を修正しているが、インスタカートのマーケティング部門は何か削減を行ったか?

当社は事業の将来性について自信を持っている。当社は持続的な成長を行えることを証明した。私はマーケティングチームの責任者としてこの投資について考えるとき、我々に必要なのは削減ではなく、すべての投資を効果的に活用することだ。この点について、CMOである私は、CPGパートナーのCMOに同類意識を持っている。我々は同じ問題に取り組んでいるからだ。ROASに集中し、投資の効率化を図り、企業として収益性と成長を推進するとともに、ブランド確立に努めている。

−−今でも職務について考えて眠りにつけない夜はあるか?

私は、この職務のクリエイティブな部分が大好きだ。いい意味で眠りにつけない夜は、悩みではなく、アイデアを思いつき、その可能性に興奮しているときで、それは、そのようなアイデアを私が本当に生かそうとしていることでもある。リゾ氏のキャンペーンは、文化においてすばらしいことが起きつつある瞬間を見つけ、その瞬間に我々がどのような役割を果たせるかについて考えた的確な例だと思う。

[原文:Instacart CMO Laura Jones on the company’s evolving shoppable ad strategy]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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