歯科医院 が本格的に美容業界へ進出へ:スパや空間、サービス犬など贅沢でくつろげる体験

DIGIDAY

美容歯科医がラグジュアリーなオーラルケアサービスという新たな波をもたらし、歯科医療は本格的に美容業界に進出している。審美歯科医は歯のホワイトニングやラミネートベニアなど、さまざまなサービスを長いこと提供してきた。審美歯科は、その専門知識と、各患者のニーズに応じてカスタマイズされた自然な笑顔を提供する能力で知られている。こうした歯科医による並外れた治療だけでなく、そこで提供される贅沢でくつろげる体験を求めて、セレブリティやアスリート、患者たちが歯科医院に押し寄せている。スパのようなインテリア、アートのインスタレーション、施術中に安らぎを与えてくれるサポート犬など、審美歯科はウェルネスのトレンドに合わせて進化し続けているのだ。

ラグジュアリー対応のスパ

TikTokで110万人ものフォロワーを誇るブルックリン在住の歯科医、ダニエル・ルビンシュタイン医師は、インスタ映えするラグジュアリーな歯科クリニックを構えている。アスリートやアーティストはみな、ルビンシュタイン医師の画期的なクラウンやベニア(ベルベットのトレイに載せられて、設置する前に必ず患者に披露される)のために彼の元を訪れる。待合室ではジュースやスムージーが提供され、完全なプライバシーを希望する患者のために、プライベートな裏口があるVIP駐車場すらも存在する。9フィート(約2.7メートル)の高さがあるその扉は、背の高いアスリートのクライアントに対応するために特別に作られたものだ。セキュリティや側近と一緒に来院するセレブリティには、独立した待合室を備えている。

ルビンシュタイン医師のセレブリティの患者には、NFLのコルツのランニングバックであるジョナサン・テイラー選手、歌手のケラーニ氏、女優のタリン・マニング氏などがいる。

「私たちは歯科医院の予約を、カスタマイズされた楽しい体験に変えた」とルビンシュタイン医師は言う。「ホスピタリティと歯科医療は相性がよいため、さまざまな一流ホテルやレストラン、スパを参考にしている」。ルビンシュタイン医師は、リラックスした気分になるように空間にカスタムブレンドのエッセンシャルオイルを使用している。さらに、一般的な受付の代わりにコンシェルジュスタンドも設けた。治療室では患者に心地よいブランケットとノイズキャンセリングヘッドフォンを渡しており、患者は好きな番組や映画を見ることができる。

「歯科治療中に顔を拭くための、ラベンダーを注入した温かいタオルを用意している」とルビンシュタイン医師。「患者は笑顔と最高級のデンタル製品がたくさん詰まったラグジュアリーなバッグを手に家路につくことになる」。

歯科治療は科学であり、芸術だ

ニューヨークの美容歯科、ローウェンバーグ・リタチー・アンド・カントー(Lowenberg, Lituchy & Kantor)のマーク・ローウェンバーグ医師いわく、歯科は形成外科や皮膚科、そしてもちろんサロンやスパとともに美容の分野へと移行してきた。それに伴い、美を表現する上で物理的な診療所がより重要になってきているのだという。

「患者が診療所に一歩足を踏み入れたら、その物理的な空間は医師の美意識を反映している。私は審美歯科治療をひとつの芸術の形態だと考えており、そのため当院は、有名な写真家や芸術家の作品を展示するアートギャラリーのように設計されている」。

自社ラボとマスターセラミスト

ローウェンバーグ医師は、自分の歯科医院の改装を続けている。最近のアップデートのひとつが、マスターセラミスト(歯科技工士)がいる社内ラボを追加したことだ。「当院での第一優先事項は患者の笑顔を自然に美しく見せることなので、ベニアの白さを決定する際は、患者の肌の色から、ふだんのメイク、個性にいたるまで、あらゆることを考慮する」とローウェンバーグ医師は語る。すべてのベニアは、セラミストによってその場でカスタムメイドされ、着色される。

「当院はロックスターやスーパーモデル、俳優、アーティストの治療で知られているが、どの患者も同じように治療している」とローウェンバーグ医師。「たとえセレブリティでなくても、我々はどの患者にもセレブリティの笑顔をプレゼントしている」。

歯科の「ウェルネス化」

ニューヨーク市とビバリーヒルズを拠点とする歯科医、ヴィクトリア・ヴェイツマン医師いわく、「(歯科業界は)超臨床分野であるという立場から美容・ウェルネス業界全体と融合する方向に舵を切っており、歯科の空間もそれを反映し始めている」。特に歯科での処置はストレスとなる可能性があるため、歯科医院はいま、患者ができるだけ快適に感じるよう努力している。「かつては冷たく、殺菌された環境だと認識されていた歯科業界は、温かく快適な場所へとシフトしている」。

ルビンシュタイン医師、ヴェイツマン医師、ローウェンバーグ医師はみな、みずからが提供する特典に追加費用はないと述べている。ヴェイツマン医師は、これらのサービスは「新しい標準治療」に合致していると話した。またルビンシュタイン医師は、多くの患者が1年前から予約を入れるなど、需要を喚起しているという。ローウェンバーグ医師によると、ベニアは1本あたり3800ドル(約51万円)から4500ドル(約60万円)、院内ホワイトニングは600ドル(約8万円)から1200ドル(約16万円)かかる。

フラットスクリーンテレビとサービス犬

歯科医のマイケル・グリジオ医師とスティーブン・コルドブス医師は、マンハッタンのノーマッドに歯科診療所のコアスマイルズ(Core Smiles)を創業した。ラグジュアリーな診察空間とフラットスクリーンのテレビを備えた個室に加え、コアスマイルズには院内にサービス犬のエンゾがいる。事前に予約すれば、エンゾは患者のそばに座り、歯科治療を受けている際に安心した気持ちにさせてくれる。

2023年以降のデンタルトレンド

今後の歯科のトレンドという意味では、ルビンシュタイン医師は、患者が診察室に入ることなく、歯科医とコミュニケーションできる遠隔医療歯科に期待している。また、パンデミック後に整形手術が増加したことを反映し、審美歯科へのシフトも目にしている。「人々がCovidをきっかけに人生は短いということを実感したため、美容整形に興味を持つ人が増えている。人は何であれ不安に感じるものを改善したいのだ」。

より自然な見ためにトレンドが向かっている、と考えているのはヴェイツマン医師だ。「真っ白で、タブレットのように形がきっちり整った、ハリウッドの俳優のような歯はもう見ていない」。ソーシャルメディア上でより自然な身体やブラジリアンバットリフト除去を目にすることが増えたのと同じように、より自然であることがトレンドになっているという。また、少なくとも彼女の診療所では、アンチエイジング歯科も注目されている。「口は老化が最初に現れる場所なので、口元からスタートして優雅に時間を戻すにはどうすればよいか、私たちは患者と一緒に取り組んでいる」。

美容専門店やデパートに並ぶデンタル製品

美容業界と歯科業界の境界が曖昧になるにつれ、消費者向けオーラルケア製品は、いまやアルタ(Ulta)やセフォラ(Sephora)などの美容専門店で適切なカテゴリーを構成するようになっている。「歯の衛生と美容は、総合的な美しさと密接に関係している」とルビンシュタイン医師は話す。美容ブランドのタルト(Tarte)はヴィーガンのホワイトニングペンを提供、ムーンオーラルケア(Moon Oral Care)はケンダル・ジェンナー氏と共同で制作したホワイトニングペンが自慢の製品だ。オーラルケアブランドのメイド・バイ・デンティスツ(Made By Dentists)はターゲット(Target)やアルタで販売されており、ラインナップにローズゴールドのホワイトニングペンがある。さらに、歯科医が創業した老舗ブランドのスーパースマイル(Supersmile)とゴースマイル(GoSmile)は、何年も前からアルタやQVCなどの美容小売店で販売されている。

「デンタル製品業界は数十億ドル規模の産業となっており、その大部分は美容専門店、スパ、ドラッグストアでのデンタル製品の販売だ」とローウェンバーグ医師は述べた。「これらの製品のほとんどにはメリットがあるが、私は常日頃から患者には、その製品が自分にとってよいものかどうかを確かめるために歯科医に相談するよう勧めている」。

歯のホワイトニング、ベニア、矯正歯科、美容歯科など、さまざまなサービスを提供するこうした歯科医院やデンタル製品は、美容業界の一部となっている。患者が治療結果を維持できるように、歯科医が高級な口腔ケア製品をデパートで販売することも増えた。また診療所内では、患者にとってできるだけ快適な体験となるよう、さまざまなアメニティを用意し、ストレスの少ないリラックスした環境を提供している。高額であるにもかかわらず、こうした歯科医が提供するサービスや製品は投資に値すると、多くの人が考えているのだ。それらは全体的なウェルビーイングという感覚と、魅力的な笑顔がもたらす自信の向上につながるのである。

[原文:Dental offices are getting the spa treatment]

Amber Katz, GLOSSY TEAM(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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