6月プライド月間中、ブランドは反LGBT の反発があっても「岩のように動じない」必要がある:ターゲットは商品の一部を撤去する動きも

DIGIDAY

プライド月間を目前に控えた5月末、ターゲット(Target)は、暴力の脅威や店員に危険がおよぶ可能性を理由に、LGBTQをテーマにした商品の一部を店舗から撤去すると発表した。

この問題に関するターゲットの最終見解は声明がすべてであり、同社はどの商品がどの店舗から撤去されるのかについては明らかにしていない。

「10年以上にわたり、ターゲットはプライド月間を祝うことを目的とした商品の品揃えを提供してきた」と声明にはある。「今年のコレクションを発表して以来、私たちは仕事中のチームメンバーの安全と幸福に影響を及ぼす脅威を経験してきた。このような不安定な状況を踏まえ、私たちはもっとも大きな対立行為の中心にあるアイテムを取り除くなど、計画の調整を行っている。現在、LGBTQIA+コミュニティへの継続的なコミットメントを推進し、プライド月間を祝い年間を通じてそのコミュニティに寄り添うことに焦点を当てている」。

労働者にも影響を及ぼすモラル・パニック

だが、マーケティングの専門家とクィア活動家の双方によると、ターゲットの対応には不満が残る。トランスラッシュ・メディア(TransLash Media)の創設者であり、トランスアクティビズムに関する活動でタイム誌の2023年のもっとも影響力のある100人に選ばれたイマラ・ジョーンズ氏は、ターゲットの決定は「ヘイトキャンペーンには効果がある」という誤ったメッセージを送っていると述べている。

「ターゲットは、トランスフォビアやホモフォビアの脅迫戦術が信じられないほど効果的だという事実を強調している」とジョーンズ氏は言う。「トランス・インクルージョンから後退するバドライト(Bud Light)の後に続くことで、トランスの人々全体に対する恐怖と脅迫に根ざした攻撃はOKだというシグナルを送っている」。

ジョーンズ氏は、受賞歴のあるドキュメンタリーポッドキャスト「反トランスヘイトマシン(The Anti-Trans Hate Machine)」で、ここ数年でトランスジェンダーの権利をめぐって起きているモラル・パニックを探求してきた。このモラル・パニックは過去2年間で反LGBTQ法が大量に成立するほど進行している。

またそれは第一線の労働者にも影響を及ぼし始めている。ジャーナリストのマット・ノヴァク氏は、ターゲットの従業員が敵意のある客に遭遇し、プライドに関するディスプレイを店の奥に移動するよう指示されたという、ターゲットに関するサブレディットの一連の投稿をTwitterに記録している。

信念の問題なら岩のように動じるな

化粧品ブランド、ラッシュ(Lush)のグローバルブランドディレクター、アナベル・ベイカー氏は、ブランドは「不快感に慣れること」が必要だと話す。ラッシュはLGBTQの権利を堂々と支持するブランドだ。現在、同社はふたつのキャンペーンの真っ最中である。ひとつは、同性婚が法的に認められていない日本での同性婚を支持するもの、もうひとつは英国での転向療法に反対するものだ。ベイカー氏いわく、ラッシュはそうしたスタンスに対してさまざまな反対に直面してきたが、断固としてそれを守ってきた。

「『流儀の問題なら流れに乗って泳げ。信念の問題なら岩のように動じるな』という、トーマス・ジェファーソン氏の名言がある」とベイカー氏は語る。「私たちは以前から堂々と発言してきたので、反対意見を聞くことに慣れている。だが、今日の消費者は、ブランドが一歩踏み出し、何を支持するのかを明確にすることを期待している。伝統的に中庸を保とうとしてきたブランドは、そうした批判にどう対処していいかわからないのかもしれない」。

LGBTQ団体GLAADによると、昨年1年間で160件以上のLGBTQコミュニティのイベントが暴力で脅かされている。GLAADのプレジデントでCEOのサラ・ケイト・エリス氏は、右翼団体からの批判にもかかわらず、最近のプライド月間のアクティベーションを断固として貫いたザ・ノース・フェイス(The North Face)のようなブランドを賞賛している。

「LGBTQの人々を含むことと、企業の価値観に忠実であることは、ビジネスにとってよいことだ」とエリス氏は述べている。「ザ・ノース・フェイスは、LGBTQの人々や私たちのアライを受け入れ、共に歩むほかの何百もの企業に追随している。Z世代の20%以上がLGBTQであり、米国人の超多数がLGBTQの人々を支持しているいま、ザ・ノース・フェイスの決断は、LGBTQの消費者や従業員を見えない存在にしたがる少数の暴力的な過激派に味方するよりも、LGBTQの人々とアライを含めることがビジネスにとってよいのだいう、他の企業に向けた印となるべきだ」。

イマラ・ジョーンズ氏にしてみれば、反発の最初の兆候で毀損されるようなブランド価値はそもそもあまり強い価値ではない。

「ブランドは、一過性のマーケティング手法としてではなく、反トランス勢力からの不可避な攻撃にどう対応するかという、より大きな計画の一部としてインクルージョンに取り組むべきだ」とジョーンズ氏は述べた。「細かいことを言えば、アライシップやトランスコミュニティのために立ち上がることが何を意味するのかを検討する必要がある。そしてそれは時に、正しいことをしながら打撃を受けることを意味するのだ」。

[原文:For Pride Month, brands need to ‘stand like a rock’ despite anti-LGBT pushback]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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