Google の反トラスト訴訟、マーケターらが同社と距離を置く可能性も

DIGIDAY

広告主がGoogleに完全に背を向けるのは難しいかもしれないが、目をそらすことは以前よりはるかに容易になっている。

米司法省による反トラスト法違反の訴訟はそのような効果をもたらす傾向にある──特に、広告費に対するGoogleの影響力を覆す可能性がいつもより高い場合には。

マーケターは多くを語らず

今回はGoogleにとって、これまでで最も深刻な反トラスト法違反の訴訟だ。Googleの広告ビジネスが、苦境にあるデジタルパブリッシャーに重い負担を強いているという実害に即しているだけでなく、Googleの行動がユーザーにどのような損害を与えているかを概説しているためだ。

後者は米シャーマン法第1条と第2条に関するもので、司法省は1月24日、8州の司法長官とともに、バージニア州東部地区連邦地方裁判所に139ページの訴状を提出した。

短くまとめると、標的はGoogleのセルサイドツールだ。司法省はGoogleのパブリッシャーアドサーバー(DFP)とアドエクスチェンジ(AdX)の両方を含むGoogleのセルサイド広告資産、つまり、Googleアドマネージャーの分離を要求している。

一方、この訴訟では、Googleのバイサイド広告ビジネスには同様のことを求めていない。Googleのバイサイド広告ビジネスには有料検索、YouTubeだけでなくDSPのDV360も含まれる。

当然ながら、マーケターは多くを語らない。Googleに関するデリケートな問題では、マーケターたちが冗舌になることはめったにない。ただし、必ずしも意見がないわけではない。

Googleの運営に変化が生じる?

Googleがどのようにライバルを押しのけ、世界一の広告ビジネスを築き上げたかを何年も見てきて、少なくとも基本的な理解に達していることを考えると、おそらくマーケターたちはこれから冗舌になるだろう。Googleのやり方についてどのような意見を持っていても、マーケターであるという現実が長く優先されてきたというだけだからだ。

実際、マーケターにとって非常に魅力的なGoogleのメカニズム、いわゆるネットワーク効果は、偶然にも、反トラスト法の規制当局によって独占の証拠と見なされている。

これらはいずれも、根本的な問題の解決にはならないはずだ。Googleのビジネスのどちら側が標的かにかかわらず、解体の可能性が高まっているプラットフォームに資金を投じることを考えるのは難しい。それが、権力を乱用したかどうかについて、調査の対象になっている(あるいは、なってきた)プラットフォームであればなおさらだ。たとえGoogleのビジネスのより支配的な側面を受け入れているマーケターが多くいたとしても、司法省による訴訟はその一部をちゅうちょさせることになるだろう。

グッドウェイ・グループ(Goodway Group)のCEO、ジェイ・フリードマン氏は、「Googleはこの訴訟を戦うと予想されるため、数年間は、Googleの運営方法に大きな変化が生じることも、ユーザーに重大な影響が及ぶこともないと考えている」と話す。「一方、マーケターは、切り替えコストと他のプラットフォームを学ぶ時間とを、Googleが現在もたらしている価値と比較検討する必要がある」

この熟考の時期がどのようなものになるかは誰にもわからない。特に、何らかの解決には長い時間を要すると思われるためだ。まず、この訴訟が動き出すまでに何年もかかる可能性があり、さらに、特定陣営の優先順位に左右される可能性もある。そしてそれは、Googleから離れることのコストを考慮する前の話だ。これほど複雑な訴訟は必ず、燃え盛るというよりむしろ、ゆっくり燃えるように進んでいくものになる。

訴訟の本質

この訴訟の大部分は、2009年以降、Googleがアドエクスチェンジで20%というレベニューシェアをどのように維持できたかに根差している。訴状には、Googleがパブリッシャー、パブリッシャーが販売する広告、その情報が盛り込まれたデータに対し、広大で影響力のある規模を誇っていたことが描写されている。

スパロー・アドバイザーズ(Sparrow Advisors)の共同創業者兼プリンシパル、アナ・ミルセビッチ氏は、「なぜこれが重要なのかを一般市民に伝えるのは難しい」と前置きしたうえで、このような広告オークションにおけるGoogleの優位性を示す方法のひとつは、巨大テクノロジー企業が、より具体的な市場をいかに支配しているかについて比較することだと続けた。

たとえば、Googleが広告オークションのバイサイドとセルサイド両方をコントロールしていることは、Amazonが物理的な商品のマーケットプレイスでバイヤーとセラーの両方の活動を見ていることと似ている。Amazonがこのように全体を見ながら、特定カテゴリーにプライベートブランドのAmazonベーシックを導入し、サードパーティの商品に損失をもたらしている事実を見ればわかる。「報道の自由によって金銭的な損失を実証する必要がある」とミルセビッチ氏は補足する。

今回の訴訟に対するマーケターの反応が鈍いのももっともだ。それが何を意味し、何を意味しないのかが、ようやく本当の意味で理解できたのだから。本記事のため、DIGIDAYの取材に応じてくれた4人のエージェンシー幹部は、理解しなければならないことがいくつもあり、訴訟が発表されてからの数日間をそのために費やしてきたと口をそろえる。

理解しなければならないことのひとつが、この訴訟はGoogleの広告販売方法のすべてを変えるのか、それとも何も変わらないのかだ。

なぜか? たとえば、この訴訟が、広告主はGoogleのオンラインマーケットプレイスで購入する際、Googleの入札技術を使う必要はないということで決着したとする。もしその影響として、Googleが所有、運営するプロパティを利用するパブリッシャーからさらに多くの金額を徴収するようになったら、それは本当に問題の核心を突いているのだろうか?

広告主は勝算を見極めようとしている

メディアオーシャン(Mediaocean)のCEOビル・ワイズ氏はDIGIDAY宛ての声明で、「司法省による今回の動きは長らく待たれていたもので、独立系アドテク企業にとっては、業界の必須事項となるものだ。広告主はそれを受け入れている」と述べている。

そして、時間とともに、広告主はGoogleと連携することの費用対効果に目を向け、Googleの技術を使って多額の資金を動かすことが理にかなっているかどうかを考え始めている。さらに、そうした懸念に対処しているケースもある。

たとえば、2018年には、ブリティッシュ・ガス(British Gas)がGoogleのアドサーバーを捨てて独立系のサーバーを採用しており、今もこの決断を後悔していないようだ。当然ながら、そのあいだに、他の広告主も同様の動きを模索している。

匿名を条件に取材に応じたアドテク企業のマネージングディレクターは、「Googleのアドテクスタックに代わるものを求め、私たちのところにやって来る持株グループや独立系エージェンシーが増えている。顧客たちはすべての卵を1つの籠に入れたくないと考えているのだ」と語る。この人物は顧客との機密保持契約を理由に、詳細を明らかにしなかった。

「大西洋の両側で訴訟、調査、分析がいくつも行われているため、Googleの広告ビジネスの運営方法に関する問題を無視するのが難しくなっている」

それでも、この訴訟によって──少なくとも現時点では──「Googleとの決別」の物語が盛り上がることはないだろう。もちろん、すでにそうした、あるいは、そうしているマーケターは司法省の動きを見て、自分の決断は正しかったと安心するだろう。しかし、それ以外の全員は成り行きを見守っているようだ。

アドフォーム(Adform)の法務を担当するアンダース・ピルガード・アンダーセン氏は、「この訴訟が起こされる前から、米国だけでなく英国やヨーロッパでも、不透明な慣行に対する懸念が高まり、ますます多額の罰金が科されるようになっている」と話す。

「もし司法省の訴訟が成功すれば、司法省が求めている動きによって、広告業界に新たなイノベーションと競争の波がもたらされ、公正でオープンなインターネットの再建に向けた転機となる可能性がある」

実際のところ、Googleは恩恵を受けるのか?

Googleとの決別によって、メディア業界のどの部門が最も恩恵を受けるのかという議論はさておき、Googleが受ける恩恵について考えている人もいるのではないだろうか?

アドテクの有名コメンテーター(そして、Googleの傘下に入ったダブルクリック[DoubleClick]出身)であるアリ・パパロ氏はDIGIDAYの取材に対し、広告スタックはGoogleのお荷物になっているため、Googleはむしろ「スリムでスマートな企業」になることができると述べている。

マーケテクチャー(Marketecture)のCEOでもあるパパロ氏によれば、得意分野に比べて利益率が低く、各方面から非難を浴びているアドテク事業の優先度を下げることで、Googleは将来の収益事業に焦点を合わせることができるという。

「利益相反や規制、反トラスト法の心配が減れば、検索やクラウドなど、自分たちが本当に得意とするものに注力できるようになる」と、パパロ氏は締めくくった。

[原文:Marketers weigh the cons of working with Google Ad Manager amid Justice Department’s new lawsuit

Seb Joseph and Ronan Shields(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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