ソーシャル担当に代わってツイート生成を任せられた ChatGPT :「コピーライターになるのはまだ早いが、何をできるかは知りたい」

DIGIDAY

マーケティングエージェンシーのジャイアントスプーン(Giant Spoon)では、人間のソーシャルメディア戦略担当者やクリエイターの代わりに、「ChatGPT」が2023年のスーパーボウルのツイートを担うことになった。

同社のパートナーでクリエイティブ部門責任者のノエル・コットレル氏は、「我々は(スーパーボウルが開催される日を)クリエイティブ部門の休日とし、スーパーボウルに関する我が社のリアクション・コンテンツのすべてをChatGPTに生成させることにした」と話す。「これは文字通り、ChatGPTに王国へ入る鍵を渡すようなものだ」。

ChatGPTは、オープンAI(OpenAI)が開発した人工知能ボットで、広告主やブランドのあいだで、話題をさらっている。Netflix、ペトコ(Petco)、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)などを顧客に持つジャイアントスプーンは、スーパーボウルが行われた日にこのAIツールを活用し、試合中のライブツイートを生成した。

コットレル氏によると、ジャイアントスプーンのチームの誰かが必要なキーワードを入力してコピーを生成するが、その作業はスーパーボウルの作戦室を思わせるような、全員参加の作業にはならないという。「ジャイアントスプーンは、広告はもちろん、コンテンツや、スーパーボウルで起きていることすべてについてツイートする。しかし、その背後には人間のチームは存在しない」と同氏は付け加える。

各社で活用がテストされるChatGPT

ジャイアントスプーンのChatGPTスーパーボウル作戦は、同社のクリエイティビティに対する認知度を高めるための取り組みでもある。それと同時に、ChatGPTや人工知能の能力、この技術で何ができるのか、広告業界にとってこれがどのような意味を持つのかをテストする場にもなる。
 
ジャイアントスプーンでのこれまでのChatGPT活用の試みは、社内のグラフィック、プレゼン資料、一部のコンテンツ制作に限られていた。スーパーボウルですべてがうまくいけば、将来的にAIをクライアントと直接関わる業務で使用する可能性を見い出すことができるかもしれない。

ここ数週間、マーケティング業界全体でChatGPTとAIが大きな話題となっており、ジャイアントスプーンと同様にクライアント用資料を作るために情報を引き出して集約したり、コピーライティングをしたり、クリエイティブプロセスの一部に利用したりしているところがある。また、ワークフロープロセスの効率化に活用しているところもある。BuzzFeed(バズフィード)は先頃、クイズやそのほかのタイプのコンテンツにChatGPTを活用する計画を発表し、2023年にはAIが同社にとってより大きな役割を果たすようになると考えている。

AIの普及に伴い、ChatGPTのようなツールの基本を超え、サブスクリプションサービスを採用するマーケターもいる。一方、Googleは、ChatGPTと類似性をもつ可能性がある独自のAIチャットボット「バード(Bard)」をテストしていると伝えられている。

実験段階であることにかわりはない

しかし、ChatGPTの生みの親であるオープンAIが話題を呼んだ割には、業界では少なくともいまのところ、AIを完全に受け入れることにためらいがある。アドエイジ(AdAge)によると、アボカドス・フロム・メキシコ(Avocados From Mexico)は、スーパーボウルの広告プランにChatGPTを採用する計画を取り消し、試合中にユーザー生成コンテンツを作成するという当初のアイデアを撤回した。

ピュブリシス(Publicis)のデジタルエージェンシーであるFKAの最高クリエイティブ責任者を務めるアダン・ロメロ氏は米DIGIDAYに電子メールで声明を出し、「ChatGPTは、表面的にはクリエイティブライティングの未来のように見えるかもしれないが、より深く見てみると、せいぜいその近似値程度だ。頭の中からアイデアを出すのに役立つツールかもしれないが、私のコピーライターになるにはまだ早い」と述べた。

最新のマーケティングブームであるにもかかわらず、ロメロ氏などの業界人は、ChatGPTが消費者向けの計画、とくに1年で最大の広告機会であるスーパーボウルで使用できることをまだ確信してはいない。

しかし、AIに希望がないわけでもない。AIは、クリエイティブなアイデアの構築やビジュアルコンセプトの提供など、マーケティングへの応用が期待されている。「AIが社会に何かを語りかけられるようになるには、まだ何年もかかるだろう」とロメロ氏はいう。「我々は、それをどのように使うか、ツールとして活用する最善の方法は何かを本当に理解しようとしているところだ」。

ジャイアントスプーンでは、ChatGPTはまだ実験段階であり、スーパーボウル後にAI機能が消費者向けの業務で活躍するかどうかは、まだ確定していない。コットレル氏は今後の計画を明らかにしなかったが、こう話した。「我々は、それが生み出すものが何であれ、発信していくつもりだ。面白いことになるかもしれない。これは、我が社に注目を集めるための離れ業のようなものなのだ」。

[原文:Giant Spoon picks the Super Bowl to test ChatGPT’s marketing chops

Kimeko McCoy(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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