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TikTokの広告や投稿は通常、ブランドがAmazonストアやD2Cサイトへのオンラインのトラフィックを促進するものとして知られているが、一部のブランドは、これらの動画によって、オフラインの売上が増加している。
プレバイオティックのソーダブランドのポッピー(Poppi)は、ウォルマート(Walmart)や、ターゲット(Target)、パブリックス(Publix)などの小売業者で販売されており、同社の売上の約15%がTikTokからのものだと推定している。ポッピーの創設者であるアリソン・エルズワース氏によれば、同ブランドのTikTokで、ポッピーの商品をどこで購入したかについてコメントした人々の80〜90%が、このソーダを実店舗で購入したと回答しており、この動画アプリによってオフラインの売上が大きく促進されたことを示している。同様に、スキンケアブランドのバブル(Bubble)は、あるTikTokユーザーの動画がバイラル化したあとで、ウォルマートの店舗での売上が2倍になり、アルタビューティー(Ulta Beauty)店舗での全在庫の70%が売れたと述べている。また、TikTokが1月に発行した、ニールセンメディア(Nielsen Media)のミックスモデルのメタ解析によれば、米国のCPGブランドは、同プラットフォームで有料プロモーションを行うことで、オフラインでの販売効率が2倍になった。
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これら2つのブランドに従うなら、このトレンドは、短編バイラル型動画のアプリであるTikTokが、一般的なデジタルメディアの広告プラットフォームよりも、はるかに幅広い派生効果があることを示している。この1年間で、TikTokは全体的により収益性のある広告チャネルになることにも成功し、このプラットフォームで広告を配信する多くの中小規模の企業に貢献してきた。特に、米モダンリテールが対談したブランドのひとつは、ハウル動画(購入品を紹介する動画)がオフラインの売上を促進する上で効果的であることを見いだしていた。
場所に縛られない
エルズワース氏によると、ポッピーは現在、どのようなオフライン売上がTikTokによって促進されているかを、主にコメントから測定していると語る。同氏が登場するTikTok動画のひとつで、買い物客から寄せられた上位コメントのひとつは、「ポッピーが大好き。たくさんの人に教えている。今日、ポッピーの商品を買うためにターゲットに行った」というものだった。
ポッピーは、同社のデジタルマーケティング活動全体がオフラインの売上を80%増やし、TikTokはそのうちの約30%から40%を占めていると、同ブランドが調べたほかの業界データに基づいて推定している。しかし同社は、TikTokが同ブランドの店頭売上に及ぼす影響をより確実に測定するため、1月と2月に公式の調査を実行すると、エルズワース氏は述べている。同氏は、ポッピーが「TikTokと協力してオフラインの影響を把握するためにこの調査を行い、郵便番号ごとに分けて調べる。当社はいくつかの有料プロモーションなどの活動を停止し、TikTokが本当に店頭での売上に影響しているのかどうかを確認する」と述べている。
ターゲットに関するポッピーの内部の予備データのいくつかによると、同社にとってもっとも業績の良い店舗は、ノースダコタ、シンシナティ、オハイオにある。「TikTokでは実際のところ、郵便番号やユーザーの現在地によって差別されることはない。まさに、すべての人に純粋なブランド認知をもたらしてくれる」と、同氏は付け加えている。
エルズワース氏は、飲料ブランドは歴史的に、食料品店でサンプルを配ることで新しい顧客とつながろうと試みてきたと語る。これでは、1時間強でせいぜい30人の顧客とつながれる程度だ。
「TikTokでは、数千人の人々とつながることができ、特定の郵便番号に縛られることもなくなった。これは、真にデジタルファーストのレンズを通したまったく新しいマーケティング方法で、インスタグラム、Facebook、Twitterで同じことができるとは思われない」と、同氏は付け加えている。
バイラルのきっかけになった動画
設立から2年が経過したスキンケアブランドのバブルは、「ハウル動画」の隆盛と人気が、購入への最初の検討を促進していると、バブルビューティー(Bubble Beauty)のビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるボニー・シュクス氏は語る。
バブルにとって、このバイラル化を引き起こすのは、何百万人ものフォロワーを抱えるメジャーなインフルエンサーではないと、シュクス氏は述べる。実際に、40万回再生された動画を投稿したあるクリエイターのフォロワー数は700人にすぎなかった。「同氏の動画は12月27日に最初に投稿されたもので、当社はこれがある種のキックオフになったととらえている。しかし、8つの動画のバイラル化が同時に起こったため、はっきりとはわからない」と同氏は説明している。
1月2日に投稿された動画のひとつは、あるティーンエイジャーがウォルマートで買い求めたバブルの保湿ジェルを紹介していた。「ウォルマートのビューティーコーナーでバブルの保湿ジェルが売っているの!?」と、あるユーザーはコメントした。
この動画によって、1月2日頃からウォルマートでの売上が増えはじめた。「その週に、当社の実店舗での売上は倍増した。そして、スラムダンク(Slam Dunk/バブルの保湿ジェルの名前)が爆発的に売れはじめた。アルタにも同じことが起き、動画がバイラル化しはじめてから2〜3日で、消費者が実店舗に押し寄せるようになるという反応が見られた」と、シュクス氏は付け加えている。
動画がバイラル化してから1週間後、アルタの店舗にあるバブルの全在庫の70%は売れてしまった。「店舗から当社に、空っぽの棚の写真が送られてきた」と、同氏は付け加える。
バブルのデータには、2022年の第4四半期と比べてウォルマートでの売上は300%も増加したことが示されている。同社がウォルマートでの販売を開始したのは2021年7月のことだ。
シュクス氏は、バブルが経験したことを踏まえ、TikTokがオフラインの売上に与える影響は、今後ますます大きくなると予想している。「当社は、この購買行動が長期的に続くと考える。我々は顧客ベースを拡大してきた。当社はまだ設立から2年ほどしか過ぎていない。このため、新しいブランドとして、ブランドへの認知を広めることを常に考えている。TikTokのおかげで、普通なら四半期いっぱいをかけて獲得する消費者の数を、わずか1週間で獲得し、ブランドを紹介することができた」と、同氏は述べている。
[原文: TikTok is driving an offline lift in sales for some brands]
VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)