売上倍増が予想される ゲーム内広告 、ただし課題も山積:「もし、テレビに映る枠が購入できるようになれば飛ぶように売れる」

DIGIDAY

ゲーム内広告の世界には、おかしなところがある。一部のマーケターから、インベントリは一体どこにあるのかと問う声が上がるほどに、満足のいく答えが返ってこなくなるようだ。

今のところ、ビッドスタック(Bidstack)、フレームプレイ(Frameplay)、アンズ(Anzu)といった大手ゲーム内広告企業のインベントリは、その圧倒的多数が、ゲーマーの関心の大部分を占めるプレミアムゲームではなく、基本プレイ無料のゲームやモバイルゲーム内に存在する。

ブランドはコンソールゲームへの広告掲載を切望

ゲームとeスポーツ情報のウェブサイト、Dexerto(デクセルト)のビジネス開発責任者を務めるマイク・マーフィー・オライリー氏は、「ゲーム内広告とは何かということに関して、多くのブランドに大きな誤解があるように思う。ゲーム内広告の話をする人は純粋に、モバイルのサッカーゲーム内などでディスプレイバナーを表示することを想定していたりする」と話す。「しかし、クライアントの頭のなかにあるのはもっと大がかりな、ゲーム内でのブランド体験やマップのようなものかもしれない」。

ゲーム内広告企業は、ブランドがコンソールゲーム内への広告掲載を切望していることを知っている。2022年にTwitch(ツイッチ)で最もストリーミングされたゲームは、「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」「フォートナイト(Fortnite)」「グランド・セフト・オートV(Grand Theft Auto V)」などのメジャーどころ、いわゆるAAA(開発予算の大きい)タイトルばかりだった。

ゲーマーにリーチしたいブランドにとって、これらのプレミアムゲームに広告を掲載することは、「サンデーナイトフットボール」や「バチェラー」などの人気テレビ番組にコマーシャルを流すようなものだ。

ビッドスタックのCROであるジュード・オコナー氏は、壁面のテレビと自身のスマートフォンを交互に指さしながら、「ブランドがこの画面(スマートフォン)ではなく、あの画面での広告を購入できるようになったら、たちまち広告枠は枯渇するだろう」と話す。「現在は、どこのゲーム内広告企業でも、むろんすべてがモバイルかPC向けだ」

課題は目新しさと漠然とした測定

現時点で、ビッドスタックのようなゲーム内広告企業は、コンソールゲーム内向けに特注のハードコード化された広告を制作することもあるが、インベントリーの大部分を占めるプログラマティック広告ではそのようなことはない。しかしこれは近い将来、変わる可能性がある。ビッドスタックとアンズの幹部は米DIGIDAYに対し、現時点では詳細を明かさないものの、ゆっくりと、しかし確実に、コンソール向けインベントリーの提供に取り組んでいると語った。2022年の時点で、XboxとPlayStationはいずれも、ゲーム内広告部門を自社内に立ち上げようとしていると報じられている。

電通のエグゼクティブ・バイスプレジデントでゲーミングのグローバル責任者を務めるブレント・コニング氏は、「スポーツゲームでは、『FIFA』や『NBA 2K』の広告板など、従来のスポーツと同様に、消費者が広告を目にすることがすでに当たり前になっている」と話す。しかし、「ほかジャンルのビデオゲームにおいては、広告は『非伝統的』なものとなり、『新しい』ように思えてマーケティングチームがゴーサインを出すハードルが上がる」という。

またデータギャップの問題も、ブランドがゲーム内広告に積極姿勢をとることへの障壁となりうる。ゲーム内広告向けの測定基準は、2022年に必要な見直しがなされた。それでも、たとえばマーケターが既得権を持つ業者のいずれかに、インベントリーの品質を証明する詳細なデータを求めた場合、返ってくるのは、明確な数字よりもブランドリフトなどの比較的漠然とした指標となる可能性が高い。広告主は、ゲーム内広告とそこから得られる利益についてもっと知りたがっているが、ゲーム内広告のパフォーマンスが完全に透明化されるのはまだ何年も先のことになる。

オコナー氏は、オラクル・モート(Oracle Moat)のような既存の測定プラットフォームについて、「2024年の第1四半期までは、実質的なソリューションを提供しない可能性がある」と述べている。

継続的な成功には大型コンソールゲームの在庫が必須

ここまでに挙げた要因はいずれも、ゲーム内広告業界が急成長を遂げるとのうわさが2023年には実現しない可能性を指している。といっても、業界が2023年に成長しないというわけではない。

オコナー氏は、業界全体のゲーム内広告の売上高が、推定2000万ドル(約25億7000万円)から2023年には約4000万ドル(約51億4000万円)へ倍増すると予測している。それでも、ゲーム内広告企業がブランドを完全に乗り気にさせるには、業界に関する多くの教育がまだ必要だ。

2023年に向けて、世界の主要なゲーム内広告企業は、継続的な成功のためにプレミアムなコンソールゲーム向けのインベントリーが重要であることを十分に認識している。

アンズのCEOであるイタマール・ベネディ氏は、「大きなマイルストーンのひとつで、ほぼ転換点といえるのは、コンソール向け広告になるだろう」と述べている。「コンソール向け広告の提供に5年を費やしてきた。我々側としては大きな投資を行ってきたことになる。短期的な収益は得られなかったが、中長期的なチャンスについては楽観していたので、これに注力することは理にかなっていた。ソニーも当社への投資に参加している」。

[原文:Why the in-game advertising boom is no longer a sure thing

Alexander Lee(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)

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