Y2K（Year 2000）時代のショッピングモールブランドで売られていたようなボディスプレーの人気の香りであったバニラが、ラグジュアリーな要素を加えて復活している。
1990年代後半から2000年代前半にかけてのノスタルジアがZ世代やその上の世代を魅了するなか、バニラはこの2年間にフレグランスとボディケアの新規ローンチの流れのなかで轟音をあげて復活している。フロストアイシャドウとリップグロスなどのY2Kスタイルがビューティトレンドに広がっていることに加えて、バニラ関連の最新製品はバス＆ボディワークス（Bath & Body Works）の全盛期の製品に洗練が加えられてアップデートされたものである。
Advertisement
モダンなバニラフラグランスの数々
バイ・ロージー・ジェーン（By Rosie Jane）のロージー・ジェーン・ジョンストン氏は、9月にドゥルセ（Dulce）というバニラのフラグランスをローンチした。同氏は次のように語っている。「この復活で良いと思っているのは、バニラは官能的で美しく、愛されやすい香りであることが見直されている点だ」。「1996年のロサンゼルス」にインスピレーションを得たというドゥルセは、同社のインスタグラムストーリーとウェブサイトで90年代をテーマにしたプレイリストとともに宣伝された。ジョンストン氏はザ・ボディショップ（The Body Shop）の90年代のバニラ製品からインスピレーションを得たと語っているが、ドゥルセは「強力な香りのバニラを抑える」ヒノキとムスクの香調のモダンな香りである。
フレグランスブランドのカヤリ（Kayal）のモナ・カタン氏は「バニラは基本的な香調と思うかもしれないが、香水のなかでもっとも高価でもっとも用途の広い成分のひとつだ」と述べている。カヤリは11月16日にバニラロワイヤルシュガードパチュリ（Vanilla Royale Sugared Patchouli）をローンチした。これはラグジュアリーフレグランス業界の市場に登場した最新のバニラ製品であり、2018年にバニラ | 28（Vanilla | 28）でスタートしたカヤリのバニラ製品ラインナップに新たに追加されたものだ。
Z世代にもっとも人気のバニラの香り
Z世代向けのメディア企業カイラ（Kyra）による2022年の調査データによると、Z世代のビューティショッパーのあいだではローズ、フルーツ、シトラス、ラベンダーを抑えてバニラが1位の香りとなっている。カイラのビューティ＆ウェルネス担当バイスプレジデント、マリナ・マンスール氏は、バニラは「2000年代初期」の「ボディスプレー」を彷彿とさせるとものだと述べている。また、若者にとっては、バニラは「フォーマルなフラグランスの初めてのもの、または人から贈られる香り」と連想づけられていると同氏は述べている。
パーソナルケア分野の新しいブランドもノスタルジアに傾倒し、モールのブランドのクラシックな香りを取り入れている。ハンドサニタイザーのブランド、タッチランド（Touchland）のバニラの香りのサニタイザーは同社のベストセラーの1点であり、数カ月以内にセフォラ（Sephora）のエンドキャップに追加される予定だとタッチランドの創業者、アンドレア・リスボーナ氏は述べている。
バニラの人気が低迷した理由
「しばらくのあいだバニラの香りは人気がなかった」とリスボーナ氏。 「だが、いま勢いがあるのは、心配も責任もなかった若い頃を思い出させるからだ」。最近ローンチしたほかのバニラフレグランスと同様に、タッチランドのサニタイザーは昔のゲームボーイや任天堂のコンソールなどのノスタルジックなイメージで宣伝された。
90年代から2000年代初頭に「製品を購入していた人々が成長して、もっと洗練度の高い高級なバージョンを求めているのではないか」とリスボーナ氏は述べている。
バニラマシュマロボディウォッシュを9月に発売したボディケアブランド、ネイティブ（Native）のチーフフレグランスオフィサー、ナタリア・レベデフ氏は次のように語っている。「いま起こっているのはモダンな要素を加えたバニラの復活だ。現在、特にホリデーシーズンには消費者からノスタルジアと心地よさが求められており、（バニラには）親しみが感じられて『故郷』の感覚が思い起こされるのだろう」。
ジョンストン氏の見解では、Y2K時代に絶大な人気を誇ったバニラが失墜することになったのは、マスブランドに取り上げられ、「搾取されて、安っぽい製品に成り下がってしまった」ことだという。
「どれも合成（の香り）であり、経費をほとんどかけずに最大の効果を発揮するようにデザインされていた」と同氏。「そして、あまり良い香りではない製品が出回るようになって、（バニラ製品といえば）安価で質が良くないものが連想されるようになった」。
「バニラの香調は長年存在していたが、消費者から心地よさと希望が感じられるものを求められていた2000年代初頭には大人気だった」とレベデフ氏。「その時にはクリーミーなバニラを取り入れた製品が多かったが、その後にはフローラルやフルーティー、自然にインスピレーションを得た香りへとシフトした」。
人気を推進するノスタルジアとの連想
現在、ラグジュアリーブランドはバニラを2000年代の製品よりも複雑な成分と組み合わせて、バニラを高級化することに注力している。
「バニラロワイヤルに取り組んでいたとき、カルト的人気を誇る当社のバニラ | 28をもっとセクシーで退廃的なものにしたいと思った。そこで、バニラとブラウンシュガーに加えて、ゴールデンラム、クレームブリュレ、ロイヤルウード、砂糖漬けのパチョリの香調を取り入れた」とカタン氏は述べている。
アバンギャルドなラグジュアリーバニラフレグランスを扱うブランドたちは、近年最新化したバニラの香りでこのトレンドに参入している。それらのブランドには、2020年にダーティバニラ（Dirty Vanilla）を発売したヘレティック（Heretic）や、バニラアンティーク（Vanille Antique）を4月に発表したバイレドゥ（Byredo）がある。
だが、専門家らはノスタルジアがすべての世代におけるバニラ人気の急上昇を後押しするもっとも強力な要素のひとつであることに同意している。
「我々は皆同じことを切望している。それは、特に現時点では休息であり、またすべてがコロナ前と変わらないと感じたいという感情的な逃避だ」とジョンストン氏。「我々はパンデミックから抜け出しつつあるので、シンプルで心地よい何かに憧れるような気持ちなのだろう」。
［原文：Gen Z’s favorite scent, vanilla makes a nostalgic comeback in fragrance］
LIZ FLORA（翻訳：ぬえよしこ、編集：黒田千聖）
