米国にも 小売 のチャンスを拡大するフランスのブランド:サヴォアフェールも伝えていく

DIGIDAY

リバーアイランド(River Island)やマンゴ(Mango)といった中間のファストファッションの小売業者は、不安定さを増す欧州やアジア市場にくらべると北米は安全策とみて、米国での店舗展開を拡大している。フランスの百貨店チェーンであるプランタン(Printemps)は9月、2024年春にニューヨークのウォール街に米国1号店をオープンすると発表した。NY店は同社にとって初の海外店舗となる。

NYに初の海外店舗をオープンしたポレーヌ

一方、高級レザーグッズブランドのポレーヌ(Polène)は、6年ほど海外向けオンライン販売とパリ店での販売のみだったが、9月に北米に初の海外店舗をオープンした。ソーホーにあるニューヨーク店は、ブランドのビジュアルアイデンティティの延長線上にある、製品デザインを反映したミニマルなインテリアとなっている。ポレーヌの共同創業者アントワーヌ・モテ氏は、パリ以外の潜在顧客にとって望ましい目的地を作ることに重点を置いたと語っている。

「すべての要件に合うスペースを見つけるのに、1年半かかった。ソーホーがすばらしいのは、中心部に位置していて何軒ものラグジュアリーな店舗に簡単にアクセスできるからだが、私たちはあくまでもデスティネーションストア(目的来店性を持った店)を作ろうとしていたので、人通りの多い場所に位置することは決定的な要因ではなかった」とモテ氏は言う。「私たちが重視するのは実際の空間だ。優雅でインパクトのある店舗環境をつくることを目指した」。小売の拡大に伴い、同ブランドでは2023年には商品の品揃えをジュエリーやフットウェアに拡大する。また、店内にてアップサイクルを行う取り組みも導入する計画がある。ポレーヌは売上高を公表していないが、毎年2倍の成長率を記録していると述べた。

実店舗での小売では体験が重要となる

ポレーヌの体験へのフォーカスが、米国の実店舗での小売において特に重要だとモテ氏は言う。「米国市場は徹底したリテール体験に慣れているので、これは私たちが取り組み、自分たちの店の中で開発したものだ。NY旗艦店をオープンしたことで、インパクトのある体験性の高い空間を作り出すという目的のもと、テクノロジーに新たなスポットライトを当てることになった」。

同店舗のためにポレーヌが計画している顧客向けのイノベーションには、小さなレザーグッズのカットや彫刻を行うよう設計された半ロボット化した工房がある。来店者は、さまざまなパターンから選んだ革の切れ端を使って製品を作ることで、製造の各工程に参加することができる。「これは、製造や生産のあらゆる側面だけでなく、このブランドに対する顧客の知識と親近感に基づいている」とモテ氏は述べた。

強力なマーケティングとコミュニケーション戦略で差をつける

サンドロ・ノースアメリカ(Sandro North America)のプレジデントでCEOのポール・グリフィン氏は、創業38年となる同ブランドは、TikTokなどの新たなプラットフォームにマーケティングを集中させつつ、ラグジュアリーブランドと並ぶ「重要な」ストリートに店舗をオープンすることで、今のところ米国で勝利していると述べた。2011年にニューヨークのブリーカーストリートに1号店をオープンして以来、同ブランドはニューヨーク、カリフォルニア、テキサス、フロリダなどの州で18店舗を展開している。もっとも最近オープンしたのは、パンデミック前の2020年のバレー・フェアで、その前は2019年のプリンスストリートのNY旗艦店と、LAのショッピングモールであるザ・グローブの店舗再オープンである。同ブランドはブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)やノードストローム(Nordstrom)でも販売されている。現在フランスとドイツで行われている同様のプロジェクトを反映し、10月からオンラインマーケットプレイスで米国でのリセールをローンチ、2023年にはさらに米国での展開を計画している。

「競争の激しい市場だからこそ、強力なマーケティングとコミュニケーション戦略で、他社に差をつけることが重要だ」とグリフィン氏は言う。「デジタル、ソーシャル、インフルエンサー、VIP(戦略)を通じて、イノベーションを受け入れ続けなければならない。ブランドの魅力を維持することが、当社の最優先事項だ。米国の顧客は、欧州以上にエンゲージメントを好む。引き続きパーソナライズされたアウトリーチを行い、ブランドロイヤリティを構築することができるように、CRM戦略を優先することが重要だ」。

フランスのブランドにとって米国は重要な市場

フランスのブランドは、フランスの小売連盟によって米国の小売市場で支えられている。フランスフットウェア連盟は、10月初めにニューヨークのチェルシーマーケットにあるデパート、ネイバーフッドグッズ(Neighborhood Goods)で、4週間にわたるポップアップ「フレンチエディット(French Edit)」をローンチした。年間売上1300万ドル(約19.3億円)のアルシュ(Arche)、年間売上400万ドル(約5.9億円)のパレガビア(Pare Gabia)など、これまで米国には進出していないフランスの靴ブランド6社のコレクションを紹介している。

「米国は、フランスのブランドにとって常に重要な市場となっている。一部はラグジュアリーフットウェアに牽引されて、パンデミック後に特に急速に成長している」とフランスフットウェア連盟代表のミシェル・ギィユー=ボネ氏は述べている。

品質とサステナビリティを重視し、顧客基盤を獲得

ポレーヌのエグゼクティブによれば、ブランドにとって北米で顧客基盤を獲得するカギとなっているのは、品質とサステナビリティを重視することだ。ヴェジャ(Veja)やパンガイア(Pangaia)、化粧品ブランドのレン(Ren)といったサステナブルファーストのブランドの人気にあやかり、同ブランドもつねにサステナビリティを重視しようとしている。9月にはいくつかのサステナビリティへの取り組みを発表した。その中には素材廃棄物の活用や、来年から帆を使った船での輸送に移行することなどが含まれている。またホルヘ・ペナデス氏といったアーティストにブランドの端材を使ったショップの家具の制作を依頼してもいる。

「米国の顧客は、私たちの製品の品質や、製品づくりに関わるクラフトマンシップにとても敏感で、要求が高いことに気づいた」とモテ氏。「私たちの製品を作るクラフトマンシップを宣伝することに加えて、私たちのサヴォアフェール(匠の技)について、もっと顧客に伝え、教えることに力を入れたいと考えている」。

[原文:French brands are expanding their retail presence to the U.S.]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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