シェイクシャック(Shake Shack)は、新しい写真共有ソーシャルメディアアプリのビーリアル(BeReal)を使った実験として、同ハンバーガーレストランの舞台裏を見せるオーガニックコンテンツを提供している。このアプリが、次世代の消費者の目に留まるための新たな手段になることを期待しての試みだ。
「我々は、常に新しい、クリエイティブな方法でファンとつながることを追求している。同時に、新たなオーディエンスも開拓したい」と、シェイクシャックのソーシャルメディア担当シニアマネージャーを務めるアマンダ・ディアントニオ氏は、電子メールで述べている。「有望な新興チャネルがあり、それが我々のブランドと一致していると考えられるなら、我々はいち早くそこに存在していたい」。
オーガニックかつ実験的なもの
ビーリアルは広告を許可していないことから、シェイクシャックの試みは純粋にオーガニックかつ実験的なものだ(米DIGIDAYのレポートによると、ビーリアルに有料広告の機会がないことはマーケターの悩みの種となっている)。
Advertisement
同レストランチェーンの戦略は主に、写真撮影、メニューの試食、イベントなど、リアルタイムで舞台裏を見せる投稿からなる。今後このプラットフォームが成長するにつれ、海外のパートナー、サプライヤー、顧客についても舞台裏を紹介する機会が増えるかもしれないと、ディアントニオ氏は述べている。
シェイクシャックにとって、81万7000人超のフォロワーを抱えるインスタグラムや、9万7800人超のフォロワーを抱えるTwitterなど、既存のソーシャルメディアチャネルには依然として大きな価値がある。しかし、「マーケティング費用とリソースではるかに勝るブランドが多数を占めるカテゴリーに身を置く」同ブランドとしては、無料のオーガニックなソーシャルメディアチャネルを活用することは、試してみる価値があると、ディアントニオ氏はいう。
パスマティックス(Pathmatics)によると、シェイクシャックは2022年の現時点でデジタル広告に500万ドル(約7億4400万円)以上を費やしており、2021年の280万ドル(約4億1600万円)から大幅に額を増やしている。一方、カンター(Kantar)によると、シェイクシャックが広告に費やした金額は推定150万ドル(約2億2300万円)で、前年の260万ドル(約3億8700万円)をやや下回る(カンターの数字は、パスマティックスのようにソーシャル関連の支出を含まない)。
各社がビーリアルに試験的に参入
ビジネス・オブ・アップス(Business of Apps)によると、このシェイクシャックを最新事例として、約2160万人の月間アクティブユーザーを抱えるビーリアルに試験的に参入し、急成長するユーザーベースの注目を集めようとするブランドは数多い。
次に火がつきそうなプラットフォームにいち早く参加しようとマーケターたちが先を争うなか、チポトレ(Chipotle)からe.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)まで、様々な企業がビーリアルにブランドアカウントを作成している(それについてはこちらの記事で詳述している)。TikTokとインスタグラムはいずれもビーリアルに似た機能をリリースしており、ソーシャルメディア分野における同プラットフォームの影響力を物語っている。
クリエイターコマース企業ウェーラー(Whalar)のタレント管理部門、ウェーラー・タレント(Whalar Talent)でマネージングディレクターを務めるビクトリア・バチャン氏によると、今年末から来年にかけて、ビーリアル上で活動するブランドがさらに増えることが予想されるという。
「新しいプラットフォームで大変なのは、物語やストーリーを共有するための活用方法を、ブランドが見つけ出さなければならないことだ」と、バチャン氏は電子メールで述べている。「我々は、新しいプラットフォームのアーリーアダプターとなったブランドが、非常にオーガニックかつ意味のあるやり方で成功できることを、じかに見てきた」。同氏によると、TikTokにおけるデュオリンゴ(Duolingo)のプレゼンスは、そのようなアーリーアダプターの成功事例だという。
注目集めるもマーケターらは半信半疑
ビーリアルは次世代の大きな注目を集めているが、マーケターや広告主は、無料で使えるこのアプリに対してまだ半信半疑だ。マーケターたちは米DIGIDAYの別の記事で、ビーリアルが収益化機能を追加すれば乗り気になると述べている。
今のところ、ビーリアルのマーケティング能力は実験の場で試すしかないと、エージェンシーのスウィフト(Swift)でエグゼクティブバイスプレジデント兼戦略担当責任者を務めるレスリー・ノース氏はいう。
「いろいろと試してみて、学ぶことができる。そして、失敗しても目立たない。実際にやってみたことから学べるという意味で、失敗するのは悪いことではない」とノース氏は話す。「現時点では、人々のさまざまな行動を学ぶのに適した場所だ」。
シェイクシャックは、ビーリアルが今後、自社ソーシャルメディア戦略の主力になるかどうかについては言及しなかった。これからの数カ月、同ソーシャルメディアプラットフォームが引き続き調整を加え、アップデートをリリースしていくなかで、答えは見えてくるだろう。
「目下のところ、ビーリアルがシェイクシャックに効果をもたらす方法を、自分たちなりに開拓しているところだ。しかし同時に、このアプリがもう少しブランドの要求に応えるようになるのかも注目している」と、ディアントニオ氏は米DIGIDAYにメールで語った。「我々としては、今後数カ月にわたってこのテストを継続し、年が改まるころに評価を行う予定だ」。
[原文:Inside Shake Shack’s push to BeReal and cater to its surging user base]
Kimeko McCoy(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)