こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
家族向けを対象とするeコマースマーケットプレイスのズリリー(Zulily)は、有名ブランドの商品を販売し、それらのブランドをウェブデザインで目立たせるように販売戦略を変更しつつある。
12年の歴史を持つこのプラットフォームは、衣服や子供用玩具、家庭用品などの大幅割引とフラッシュセールで評判を得ている。しかし、2020年と2021年のオンラインショッピングブームの後、同社の売上は減少していた。同社はこの秋にビルケンシュトック(Birkenstocks)、リーバイス(Levi’s)、ナイキ(Nike)など有名なブランドの独占商品を提供することに重点を置いた戦略に転換した。
Advertisement
最高技術責任者を務めるコートニー・キスラー氏は次のように述べている。「当社は商品リストになりたいのではない。生活を暮らしやすく楽しくしてくれる優れたブランドと商品のコレクションを推進したいと考えている」。
消費者の生活に対応した「大幅割引」
ズリリーは以前、72時間にわたる100のフラッシュセールを行い、ホームページやソーシャルメディアのデータドリブン広告で顧客に働きかけた。このセールに参加したブランドの多くはブティックや、ほとんど知られていないブランドだった。現在は、300以上のブランドの個別ページがあり、価格も維持されている。有名ブランドとの提携も強調されている。しかし、この新しい戦略でも、ズリリーがAmazonやウォルマート(Walmart)のようなeコマース大手に対するズリリーの主要な競争力のひとつである「大幅割引」を引き続き重視していく。
この変更は、消費者の裁量的支出が変化しつつあり、ズリリーのようなブランドに影響を及ぼしていることによるものだ。同社の親ブランドであるキュレイト(Qurate)の第2四半期の決算発表では、収益が前年の3億9700万ドル(約576億円)に比べて45%も減少し、2億2000万ドル(約319億円)になった。同社はサプライチェーンの制約とマーケティングの非効率性により顧客が減少したと述べている。また同社は会社組織の再編成を行い、フルフィルメントセンターを退去した。
顧客のLTVの向上
しかし、ズリリーは、同社の新しい戦略が、インフレを気にし、お得なセールを探し求めている買い物客にアピールすることに賭けている。同社が8月、米国在住の母親1000人を対象とした調査を行ったところ、その72%は食料品やガソリンなど生活必需品の価格が上昇していると感じていると回答した。
キスラー氏は、ブランドに焦点を当てた新しい戦略は、同社が顧客の生涯価値の向上と、顧客の再度の参加を促すことをめざしたものだと語る。ズリリーの過去のフラッシュセールは一回限りのものだった。しかし、新しいブランド別店舗は、在庫や価格が固定されており、「母親はお気に入りのブランドから出ているこれらのコレクションをいつでも頼ることができる」ことを意味すると、同氏は述べている。
同氏は、ブランドに特化した店舗は、買い物の利便性を高めることも目的としているという。買い物客の約4分の3はモバイルで注文する。
「これらの店舗を、本当に楽しく、誰もが感じているデジタル疲れを軽減し、それよりも『本当に自分が正しい決断を行うことができ、自分の決断に自信を持てるのか?』が重視されるような場所にしていきたい」。
ブランド支援の場に
新しいサービスを目立たせるため、ズリリーのホームページのトップには主要なブランドとお買い得商品を紹介する回転式カルーセルが配置されている。その下ではブランド名がスクロール表示され、各企業のミニショップにリンクしている。以前のバージョンでは、ホームページに毎日のセールが特集され、ブランド中心の編集は行われていなかった。
同社は、契約の条項を理由に、ウェブサイトで販売されている300以上のブランドとのあいだの売上高の分配方法に関する情報は明かさなかった。しかしキスラー氏は、参加ブランドはズリリー販売する商品とその数を選択することができるという。100程度の商品を提供するブランドもあれば、2000近くの商品を提供しているブランドもある。同社のサイトは、最近のサプライチェーンの問題の関係で積み上がった過剰在庫を販売するための販路ともなっていると、同氏は語っている。
「当社は、これらのブランドの多くにとって優れたパートナーになるために完璧な位置にある。当社がブランドを支援できる場所だ」と、同氏は述べている。
キスラー氏は、同社がメールとソーシャル戦略に加え、インフルエンサーによるマーケティング計画を通じて新しいサイトをマーケティングすると語る。
ブランド志向の親たち
国際的なeコマースコンサルティング企業であるOSFデジタル(OSF Digital)でプレジデント兼CEOを務めるジェラルド・サツタバニール氏は、特定の分野やニーズに焦点を当てたマーケットプレイスがトレンドとなっており、子ども用品ではますます一般的になってきていると語る。ズリリーがより知名度の高いブランドの販売を推進しているのは、多くの親がブランド志向であり、同社が顧客の声に耳を傾けていることを示しているとサツタバニール氏は語る。
「同社は顧客と一緒に、彼らが何を望んでいるのか、どうすれば顧客のニーズに対してより有意義な形で応えられるのかを理解しようとしてきた」と、同氏は述べている。
専門的で固有の体験を提供すること、この場合には有名なブランドを割引価格で提供することで、Amazonやほかのeコマース小売業者よりも優位に立つことができると、同氏は語る。
「Amazonの欠点のひとつは、ズリリーと同程度までにパーソナライズ化したりカスタマイズした体験を提供できないことだ。これは大きな差異を生み出す」と同氏は述べる。
インスピレーションとエンゲージメント
キスラー氏は、ズリリーがほかの小売業者と一線を画しているのは、ブランドベースの商品を個別のアイテムではなく、コレクションとして提示することで、意思決定を簡略化していると語る。また同社は、データドリブンマーチャンダイザーと機械学習の組み合わせにより、現在のトレンドや、在庫の残り、もっとも売れている商品に基づいて商品を広告しているという。
同氏は「『店に行って何かを探し、見つけたら買って帰ろう』以上のインスピレーションと、もう少し深いエンゲージメントが欲しいという顧客の声を聞く」と述べている。「そこで我々は、そのもう少しの関与として、厳選したコレクションを顧客に提供する」。
[原文:Zulily updates its sales strategy to highlight big-name brands]
MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Zulily