生体認証データ 利用のスマートゴーグルなど、心身のウェルネス機器分野を制するセラボディ【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

セラボディ(Therabody)はウェルネス機器分野の世界制覇への道を切り開いているようだ。

フェイシャルウェルネス分野に進出

フィジカルウェルネスブランドであるセラボディは、9月20日、スマートゴーグル(SmartGoggles)をローンチし、睡眠カテゴリーに初進出した。同製品は振動とマッサージと熱の組み合わせにより、顔の緊張や眼精疲労を緩和し、頭痛を軽減し、心身をリラックスさせて睡眠の準備を整えるという。このゴーグルはセラボディアプリで使えるようになった新しいメンタルウェルネス機能のセラマインド(TheraMind)とペアリングされている。セラマインドには、集中力、リラクゼーション、睡眠の設定がある。社歴6年のセラボディはセラガン(Theragun)パーカッションマッサージャーでもっとも知られているが、新規カテゴリーに進出したのはこれが初めてではない。4月には「フェイシャルウェルネス」分野でセラフェイスプロ(TheraFace Pro)をローンチ。このフェイシャルマッサージャーはセラガンと似ているが表情筋に合わせて作られたものだ。また、9月20日にはセラガンプロ(Theragun Pro)とセラガンミニ(Theragun Mini)パーカッションマッサージャーの新世代がリリースされた。

「フェイシャルヘルスはセルフケアの非常にパーソナルな側面だ」と述べているのは、セラボディ創業者兼最高ウェルネス責任者のジェイソン・ワースランド博士だ。「セラフェイスプロを開発したとき、市場に出回っている他製品のように肌の表面だけに機能するビューティ機器にはしたくなかった。フェイシャルヘルスにフォーカスしようとした。つまり、皮膚の表層と深層や顔の40以上筋肉の健康ということだ」。

施術ロケーションも展開

セラボディはすでに世界的な認知度を築きつつある。60カ国以上に進出、上海、ロンドン、ダブリンにオフィスを構え、米国内では40以上の小売業者の1万店舗で製品が販売されている。また、ヨーロッパのサッカークラブのレアル・マドリード、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンと複数年にわたるパートナーシップを結んでいる。ロサンゼルス・タイムズ紙は2月に、同社がリセットと呼ばれるスタンドアローン小売店兼ウェルネスセンターを開設するという記事を公開したが、それによるとセラボディは過去2年間にリセットのコンセプトの開発に1300万ドル(約19億円)を投入したという。その時点では、セラボディには、2022年に追加で5カ所のリセットロケーションと、大規模なウェルネス機能は持たない6カ所の小売店をさらにオープンする計画があった。同社は株式非公開であり、財務情報は共有されなかった。

生体認証データ利用のスマートゴーグル

ワースランド博士によると、スマートゴーグルも、顔面の緊張を軽減し、不快感を和らげ、眼精疲労を緩和できるため、フェイシャルウェルネスのカテゴリーに分類されるという。注目すべきなのは、セラボディスマートゴーグルは生体認証データを使用して心拍数を下げ、ストレスや不安を効果的に軽減するのに役立つスマートセンサーと統合された最初のデバイスという点だ。セラボディCMOのジョン・ソロモン氏は同社の次世代のデバイスでは生体認証に注力していると語っている。同社アプリでは、製品とペアリングするウェルネスルーティン、パーソナライズされたコンテンツのためにほかのアプリからの活動データの統合、運動回復ルーティン、スマートゴーグルによる生体認証トラッキング、瞑想コースが提供されている。

「(スマートゴーグルは)心身に役立つもので、当社が目指しているものを垣間見ることができる」とソロモン氏は語る。「ユーザーのために治療をパーソナライズしてくれる生体認証センサーを備えており、ゴーグルは(アプリ内のメンタルウェルネス機能とペアリングされている)当社の最初の製品だ」。

消費者が入手できる生体認証機能は過去10年間のウェルネス業界におけるもっとも重要なシフトのひとつである。テクノロジーがより革新的でパーソナライズされるようになるにつれこれはさらに顕著になるだろう。ガーミン(Garmin)やフィットビット(Fitbit)、または最近ではApple Healthなどのフィットネストラッカーを使って、消費者は自分の健康状態を管理し、個人の健康データを活用している。これは、皮膚やホルモンの健康を促進するために家庭用検査キットを活用する製品など、従来のビューティ製品でも一般的になっている。

自分で健康管理をするための手段

ビューティデバイスはこの(生体認証機能を利用した)ウェルネストレンドに対応している。企業の中には、7月にアプリを刷新してBluetooth接続デバイスを発売したニューフェイス(NuFace)のようなところもある。だが、すべてのアプリ対応デバイスが成功を収めたわけではない。クラリソニック(Clarisonic)は2018年にミアスマート(Mia Smart)というアプリ接続デバイスをリリースしたが、ブランドは2020年に終了している。

「人々は医者に行きたくないし、官僚的な医療制度にもうんざりしている。自分で自分の健康とウェルネスを管理したいと思っている」とソロモン氏。

幅広い製品・サービスをアピール

ソロモン氏はこれから資金調達ラウンドがあると述べたが、詳細は明らかにされなかった。セラボディの担当者からもそれ以上の情報は提供されなかった。 セラボディは、2021年2月に歌手のショーン・メンデス氏、モデルのカーリー・クロス氏、テニス選手のマリア・シャラポワ氏など有名な投資家から「戦略的(株式)投資」ラウンドで資金を調達した。ワースランド博士は2020年と2021年の売上高と成長率を共有してくれなかったが、2017年以来収益を上げていると語った。2021年の資金調達の発表によると、2017年以降利益は30倍以上に成長し、2020年の全体的な収益は2019年と比較して3倍になったという。

「まだ多くの人たちからはセラボディ=セラガンだと思われているが、現在の幅広い製品群を見ればセラボディが意味することがわかると思う」とソロモン氏は述べている。「販売している製品8点だけではなく、(ウェルネスコミュニティに対する)資金調達ラウンドや、『Keep Moving』という新ブランド(キャンペーン)のローンチもその一部だ」。

グローバルで多面的な「Keep Moving」マーケティングキャンペーンにより、セラボディはセラガンだけではないことをアピールすることを目指している。同社はデジタルビデオやテレビ、スポーツスタジアムの内部など幅広いメディア広告に投資している。(プロバスケ選手の)ジェームズ・ハーデン氏やカーリー・クロス氏をはじめ同社のアンバサダーらはソーシャルメディア全体で製品を宣伝し、プロスポーツ選手たちは試合の休憩中にセラボディのデバイスを使う。セラボディは10月からベストバイ(Best Buy)に43カ所のショップインショップを設置する予定であり、ソロモン氏によるとこれはブランドと製品の教育に役立つということである。また、インフルエンサー向けのロサンゼルス地区の日帰り旅行が9月21日(水曜日)に行われる。これは睡眠、メンタルウェルネス、疼痛管理、パフォーマンスというセラボディの4つのカテゴリーに基づいた旅である。

「今年の最大の目標には、これらの素晴らしい製品をローンチして、(消費者の)当ブランドに対する認知を発展させることがある」とソロモン氏は語っている。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Therabody makes a case for holistic mind-body wellness

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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