Google がAI試着機能をマネタイズしない理由と、ブランドに期待すること

テック企業はファッションブランドに対して、返品を減らすために正確なeコマース試着機能を提供するようますます勧めるようになっている。Googleが6月14日に発表したばかりの、AI拡散モデルVTO（バーチャル試着）の新たなローンチは、同社のマーチャントプログラムに参加しているブランドに検索エンジンベースの製品を無償で提供することで、競合としての役割を果たすことを意図している。

バーチャル試着とは、ブランドのeコマースサイト上で服を試着できる機能で、ラグジュアリーからマスマーケットにいたるブランドにとって、さまざまな提案となっている。多様な商品を扱う美容やアクセサリーにくらべ、バーチャルでの衣服の正確な試着の実現は困難である。また服のバーチャル試着は、異なる体型に衣服をフィットさせ、違う生地の質感をバーチャルで見せることにも取り組む必要がある。

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バーチャル試着はブランドにとって優先的な投資分野

Snapchat（スナップチャット）は、今年3月にアップデートしたeコマースと統合されたAR機能でバーチャル試着の習得にもっとも近づいた企業のひとつだ。このアップデートにより、服のドレープがよりリアルに表現されるようになったが、それでもこの体験はまだ一部のファッションブランドのみに限定されている。その中には、3月にスナップ（Snap）にローンチしたゴビカシミア（Gobi Cashmere）や、昨年この機能を試験的に導入したアメリカンイーグル（American Eagle）などがある。

だが、バーチャル試着が、ブランドにとって優先的な投資分野であることに変わりはない。アメリカンイーグルのCMOクレイグ・ブロマーズ氏は、昨年5月にこの機能のテストを開始した際、「結果的に小売店の返品率を数％でも下げることができるだけでも、企業にとっては数億ドルの節約になる」と述べている。アメリカンイーグルのパイロット版では、ジーンズの試着が通常のスナップのベンチマークよりも100%多く保存または共有された。スナップは、自社のプラットフォーム上でブランドに対してSaaSのバーチャル試着を統合することを認めているが、AR対応の服を作るために必要なリソースの関係で、このツールはすべてのブランドがすぐに適用できるものではない。

Googleの発表により、バーチャル試着サービスやARプラットフォームは、より即戦力となる無料アプリケーションとの競合を目の当たりにしている。GoogleのVTO（バーチャル試着）は、人工知能とGoogleの手法である拡散と相互アテンションを活用して、モデルの画像と洋服の画像というふたつの画像を組み合わせて完成イメージを作り出す。

現時点では、GoogleのVTOで試着できるのは、十分な高画質の画像を持つブランドのトップスのみとなっている。現在はエバーレーン（Everlane）やH&Mなどがそれにあたる。これらのブランドは、肌の色や体格をカスタマイズできるAI生成モデルで試着ができる。Googleは、来年にかけて他の衣料品カテゴリーやメンズにも拡大すると述べている。

Googleはバーチャル試着をマネタイズする計画はない

このツールのローンチに携わったGoogleのグループプロダクトマネージャーであるシャム・サンダー氏によれば、GoogleはAIを使用するブランドに対して無料の付加価値を提供することに関心があるため、バーチャル試着をマネタイズする計画はないとのことだ。試着ツールのデータは、より多くのブランドや小売業者が試すことがより早い改善につながるため、Googleにも利益をもたらす。サンダー氏は顧客がもっとも求めているものを理解するために、1年以上にわたって複数のブランドと協働したが、その結果、いちばん求められているものは人間のモデルでの正確なサイジングだった。

「ブランドは参加にあたって何かをする必要はない。マーチャントセンターのアカウントと、モデルに着せたトップスの高画質の画像さえあれば、ブランドは今回の体験に参加する資格がある」とサンダー氏は述べている。「ブランドはこのツールの恩恵を受けるために行動を起こす必要はないが、当然ながら私たちはつねにフィードバックを聞きたいと思っている」。

[原文：Google reveals it has no plans to monetize its AI try-on feature]

ZOFIA ZWIEGLINSKA（翻訳：Maya Kishida 編集：山岸祐加子）