「 インハウス化 の原動力は、決してコストではない」:ドラフトライン 創業者兼グローバルCEOトレイシー・スタラード氏

DIGIDAY

アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev:以下、ABインベブ)のインハウスエージェンシーであるドラフトライン(draftLine)はこの3年、効果的なだけでなく効率的であることを証明しようと取り組んできた。ドラフトラインが始動した時期、多くの広告主は、少なくともパンデミックが収まるまで、マーケティングのインハウス化を進める計画にブレーキをかけていた

ABインベブの戦略は成功したようだ。このインハウスエージェンシーはカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、2021年はグランプリ、2022年はクリエイティブ・マーケター・オブ・ザ・イヤーと、ABインベブが名誉ある賞を手にするのに貢献した。ABインベブは30年にわたり、CMの価値がもっとも高いイベントであるスーパーボウルのアルコール広告を独占し続けてきたが、最近、その打ち切りを発表し、話題を呼んだ。

ABインベブのインハウスエージェンシー業務、そして、景気後退に備え、マーケターが再び予算削減の準備を進めているといううわさについて、南フランスで開催されたカンヌライオンズの会場で、ドラフトラインの創業者兼グローバルCEO、トレイシー・スタラード氏に話を聞いた。

なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには若干の編集を加えている。

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──ドラフトラインを立ち上げてからインハウスについて学んだことは?

インハウスとは結局のところ、目的が何かを知ることだ。人々がインハウスを選択する目的や理由はさまざまだ。私たちがチャンスを見いだしたのは次の4点だ。1つ目は、どうすれば消費者をもっと理解できるかを考えること。そこで私たちが考えるのはファースト、セカンド、サードパーティデータ、そして、消費者とのたわいのない会話だ。2つ目は、コンテンツとメディアの世界が絶えず衝突していること。

3つ目は、もし(私たちが)成長志向の企業になりたいのであれば、創造性を戦略的優位、戦略的スキルと考え、その一部を自分たちのものにする必要があるということだ。4つ目は、マーケティングがどこに向かうかに目を向けた際、これまでよりはるかに多様なスキルセットが必要になるということだ。インハウスでは何より、目的を知り、何を提供したいかを明確にすることが重要だ。

──パンデミック前、人々はコスト削減のためインハウス化に注目していた。景気後退が間近に迫るなか、コスト削減はインハウスの判断にどう結び付くと思うか?

これについてはぴったりのエピソードがある。私にとっては忘れられない出来事だ。ドラフトラインで初めてCEOと打ち合わせをしたとき、私たちは彼にアイデアをプレゼンした。表紙のスライドすらめくっていないときに、彼はプレゼンを止め、「もしコスト削減が目的だったら、私はやりたくない」と言った。目的は戦略的なマーケティング変革能力を構築することだと彼は明言し、その後も社内で明言し続けている。私たちは、もちろん他社と同じように、いかにしてコストを最適化するかを常に考えている組織だ。

しかし、なぜインハウスを選択するかについては、優先順位と目的が必要だ。なぜ私たちはこれをしているのか。その原動力は決してコストではない。それは常にマーケティング変革を推進することだ。正直に言うと、クリエイティブ・マーケター・オブ・ザ・イヤーというこの瞬間に至るまでには、何度も火花を散らす場面があった。

──ABインベブはスーパーボウルのアルコール広告の独占をやめると発表したが、別の大きなことを模索しているのか?

私たちは幸運にも、スーパーボウルの瞬間に立ち会ってきたし、これからもスーパーボウルの一部であり続けるだろう。それは変わっていない。私たちは常に、消費者の注目が集まる場所と私たちの商品に大きなチャンスがある場所の接点を探している。私たちは常に、そのような文化的な瞬間に目を向けている。スーパーボウルはそのひとつであり、これからもそのひとつであり続けるだろう。

──そのニュースによって、チームの運営方法は変わるのか?

私たちは常に、ブリーフとして、消費者の問題に取り組んでいる。(スーパーボウルは)いまも、消費者の大きな注目を集め、私たちがブランドを構築したいと考えている瞬間だ。それはこれからもずっと続いていく。ここ数年のパンデミック中、私たちは新しいプロセスや仕事のやり方を考え始めたが、それが予想以上の創造的変革につながることがわかった。

私たちは今、善を推進するアイデア、成長を推進するアイデアというプロセスを用いている。成長を推進するアイデアとは、私たちが全世界で出しているオープンソースブリーフのことだ。私たちは2020年にこれを採用した。なぜなら、ほかの皆と同様、私たちもブリーフを破り捨て、この仕事はもう消費者に関係ないと言わなければならなかったからだ。

──つまり、この取り組みは2020年に始まり、スーパーボウルの件は消費者行動の急激な変化に対応するための動きだった。あなたのチームはそう考えているのか?

その通りだ。私たちにとっては、消費者のニーズを適切なタイミングで満たすことが重要だ。つまるところ、そういうことだ。

[原文:‘We had to tear up our brief’: AB InBev’s in-house agency founder talks progress on the ground in Cannes

Kimeko McCoy(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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