こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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沿岸部を拠点としてスタートした屋内農業の新興企業は、全国的な知名度の向上を目指している。
垂直農業企業のカレラ(Kalera)は8月下旬、トレーダージョーズ(Trader Joe’s)の40店舗で同社の葉物野菜の販売をはじめることを発表した。一方、バワリーグリーンズ(Bowery Greens)は、最新の資金調達と新しい施設により、全国での販売店舗数が1000店舗を突破した。
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屋内農業の新興企業の名前の由来は、倉庫や古い製鋼工場などの施設を温室に改造することが多いことによるものだ。このような温室では、面積を最大化するために作物を上下に積み重ねることもある。これらの新興企業は、エネルギー効率や無制限のスケーリングの機会を売り物にしていることが多い。しかし、これらの屋内農業ブランドが従来型の食料品企業に近づくにつれ、小売業者に作物を供給するため規模を拡大し、新たな施設を開設する必要性がでてくる。このような新興企業が本当に有名になるには、全国展開の食料品店チェーンを使用して、米国の買い物客の大多数に販売を行う必要がある。
食料品店の後援
屋内農業の新興企業は、食品の栽培方法を見直そうとしており、多くの場合、にぎわった都市部に温室を設置している。これらの企業は、ハイテクを駆使した最先端の農業への取り組みが、多くのベンチャーキャピタルやメディアの注目を集めた。自然食品やオーガニック食品の市場で足がかりを得たあと、屋内農業の分野に早期に参入した業者の多くは、より主流な食料品店チェーンとの提携をはじめるようになった。
ゴッサムグリーンズ(Gotham Greens)の共同創設者でCEOを務めるビラージ・プーリ氏は、現在のところ、同社の売上額は2ケタ成長を見せており、その成長の一因は流通の拡大であると、米モダンリテールに語った。同社は今日までに1億2500万ドル(約180億円)を調達してきた。
同社の成長の軌跡は、このカテゴリー全体の成長に合致している。グランドビューリサーチ(Grand View Research)によると、全世界での垂直農園市場は2021年に約43億4000万億ドル(約6250億円)に達し、今年末には53億7000万ドル(約7730億円)に到達すると見られている。
温室事業以外にも進出
2009年に設立されたブルックリンを拠点とするゴッサムグリーンズは、アメリカの消費者の90%を販売対象とするために次のフェーズを計画していると、プーリ氏は語る。同社の葉物野菜への需要は、Covidの初期に人々が食料品を買いだめしていた頃の需要を上回っているという。
継続的な需要に対応するため、同社は新しい温室の開発と拡大プロジェクトを加速してきたと、プーリ氏は語る。2022年の末までに、温室の容量を現在の60万平方フィート(約5万平方メートル)から、2倍の120万平方フィート(約11万平方メートル)に増やす。現在は、6つの州に9つの温室を保有しており、カリフォルニア大学デービス校のキャンパスの近くに昨年開設した最新の温室もある。
今後1年間にゴッサムグリーンズは8つの州に12の温室を保有する予定で、テキサス、ジョージア、コロラドで新しい施設の開発が進められている。「これらの新しい温室により、店舗数を大幅に増やすとともに、この国で最大の食料品小売業者のいくつかに、全国および地域規模で商品を供給し続けることができる」と、プーリ氏は述べている。ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)、クローガー(Kroger)、アルバートソンズ(Albertsons)、スプラウツ(Sprouts)などのチェーン店が対象になっている。
プーリ氏は、昨年サプライチェーンに遅延が起き、多くの小売業者が在庫待ちになったことが、ゴッサムグリーンズへの需要が急増した理由だと語る。同社は全国規模で展開できる能力があったため、「特にパンデミック時には、全国の小売業者、食品サービス、非営利団体にとって、貴重なパートナーとなった」とプーリ氏は述べている。
ゴッサムグリーンズは、ほかの食料品カテゴリーにも急速に進出している。たとえば同社には現在、ドレッシングとディップのラインもあり、「温室の事業拡大に加えて、植物ベースの材料を活用した商品によって、生鮮食料品分野においてもイノベーションを続けられることに期待している」。
全国に拡大する機会
同社の人気が増加しつつあるといっても、屋内農業の新興企業にとって、規模を拡大するのは簡単な話ではない。地域でより多くの小売業者に商品を供給するため、これらの企業は継続的に温室を増やさなければならず、そのためにはより多くの資金が必要となる。ラグジュアリーフルーツの栽培業者、たとえばベリー類のブランドのオイシー(Oishii)は、ホールフーズのような全国規模の小売業者で販売を開始するための支援として、5000万ドル(約72億円)を調達した。需要がある一方で、商用の温室栽培ブランドを成功させるには、労働力と物流のコストの増大が最大のハードルだと、プーリ氏は語っている。「生産者は成功のために、適切なインフラや業界のサポートと、成長とのバランスをうまく取る必要がある」と同氏は述べている。
ニューヨークを拠点に、屋内でキノコを栽培している新興企業のスモールホールド(Smallhold)は、事業開始から数年で、レストランやファーマーズマーケットから、小規模だが安定した支持を受けるようになった。同社の共同創設者でCEOを務めるアンドリュー・カーター氏は、ブルーオイスター(Blue Oyster)やライオンズメイン(Lion’s Mane)などユニークでカラフルな種類を含む、同ブランドの有機栽培キノコが、「シェフや熱心な料理愛好家のあいだでもっとも人気があった」と述べている。
2020年に、スモールホールドは地元のほんのひと握りの店舗でしか販売していなかった。しかしこの2年間で、多くの食料品バイヤーが店頭でより多くの種類のキノコを陳列棚に並べたいと考えるようになったと、カーター氏は語る。「小売業者がどっと沸いてきた」と同氏は言う。パンデミックによる料理ブームで、「小売業者は普通のボタンマッシュルームだけではなく、もっとユニークな品種を顧客に提供したかったのだ」と同氏は続ける。
同社は昨年11月、全国での生産を拡大するため2500万ドル(約36億ドル)のシリーズA資金調達ラウンドを完了した。同社は現在ニューヨークに1つ、テキサスに2つ、そして、この5月にロサンゼルスに開設された施設が1つと、合計4つの施設を保有している。「当社は全国ブランドを構築することをめざして、新しい地域にも拡大している」と、カーター氏は述べている。
避けられないインフレ
スモールホールドのパック入りキノコは現在500以上の店舗で販売され、同社の事業の大半を占める。同社の販売網は、エレウォン(Erewhon)などの自然食品販売店、フレッシュダイレクト(FreshDirect)やインパーフェクトフーズ(Imperfect Foods)などの宅配サービス、選ばれた地域の販売店、マムズオーガニックマーケット(Mom’s Organic Market)やホールフーズなどの全国チェーンで構成される。
屋内農業業界は現在、需要が堅調で増大しつつあると、ゴッサムグリーンズのプーリ氏は述べている。しかし、経済全体と同様に、インフレに関連した課題にも直面していると、同氏は説明する。「全体的にコストが上昇しており、さまざまな市場において労働力の不足が問題となる可能性がある」と同氏は語っている。
製品への需要が高まるなか、これらの企業は、屋内農業モデルの限界とコストの範囲内で事業を拡大しようとしている。
プーリ氏は次のように述べている。「我々が活用するテクノロジーはひとつの手段であり、作物が勝手に育つわけではない。高度な技能を持つ人材のチーム、効率的な事業運営、そして、顧客サービスのもとで運営している」。
[原文:How indoor farming startups are working their way into grocery stores]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
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