「人種差別主義者だ、と責められているとでも思ったのでは」: BLM を支持した、あるメディアコミュニケーション担当者の告白

DIGIDAY

米国を「物議を醸す社会問題に溢れる国」と呼ぶのは過言ではなく、近年、その状況は苛烈さを増している。

トランプ政権時代、ジョージ・フロイド氏の殺害によってブラック・ライブズ・マター(以降BLM)運動が活性化し、そのボリュームは2020年半ばに最大値に達した。

マーケティングおよびコミュニケーション業界も大いに揺れ、マーケター勢は社会問題に対する姿勢を公にし、自身のブランドを注目の的にすべく、かつてないほど熱心に動いた。広告業界も然りであり、多くの従業員は雇用主らに多少なりともリーダーシップを発揮してくれることを期待した。だが、2020年の長く暑い夏、NYマディソン・アベニューのリーダーたちのなかには、いざとなると首を引っ込め、嵐が過ぎ去るのを待とうとした者もいた。

匿名性を保障する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は、あるメディアコミュニケーションのプロが、用心深い保守的なCクラスの幹部と仕事をする上でのフラストレーションを打ち明けてくれた。

なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

――世界中でBLM運動が起きるなか、あなたの勤務先の幹部らが見せた反応は?

まず強調しておきたいのは、我が社の幹部たちは2020年前半、雇用、賃金の平等、リテンション(人材の維持/確保)に関してDE&I(多様性、公平性、包括性)を実践していくと、はっきり宣言していたという点だ。

ジョージ・フロイド氏殺害事件が起きたとき、私はBLMへの支持を社のソーシャルチャネルで表明したいと考え、その許可を求めた――当時、この業界ではまだほとんどどこも動いていなかった。私の申請はCEOと創業者らに回されたが、すぐに「これは政治的問題であり、我が社は政治的なスタンスを取らない」という、心底落胆させられるメールが彼らから返ってきた。

――その回答を正当化した幹部たちの理屈は?

ひとりは、あの状況(ジョージ・フロイド氏の殺害とBLM)を、よりによってタバコの煙になぞらえた。「人は毎日殺されている、そうだろう。じゃあ、君は何か? 誰かが撃たれるたびに、私らは何かを投稿しないとならない、そう言いたいのか?」という感じに。

この人物は米国内のどこか別の所に住んでいて、ニューヨーク近郊で暮らし、働く私たちが抱いていたような感情を持っていなかったようだ。個人的には、そもそも全米の多くの人々が抱いていた感情からもかけ離れていたと思う。

――ここ(NYC)では何が起きていたと?

この業界では、多くの企業がニューヨークを拠点とし、当時は誰もがかなり熱くなっていた。一方で、我が社のCクラス幹部はほとんどが(大都市圏から離れた)郊外に住んでいた。会社の大株主でもある彼らは、世論や社内の感情とは違う見方を持っているであろう大口のクライアントを怒らせたくないと考えていたのだろう。

――それくらいあからさまだったと?

最終的には人事部が介入してCEOとの1対1の話し合い(とは言うもののZoomミーティングだった。これは2020年の話だ)にまでエスカレートし、幹部との関係は緊迫したものとなった。私は、これは人権に関わる極めて重要な問題であり、社として毅然とした態度を示さなければ、我々も加担していると見なされかねないという思いを伝えた。

CEOは明らかに苛立っている様子だった。私に人種差別主義者だと非難されていると感じていたのだろう。そして、CEOともうひとりの共同創業者は、しきりに自分たちは黒人たちを導こうとしており、黒人への慈善事業にも多くの寄付をしていると語っていた。しかし、私が指摘していた問題はもっと黒人を憐れめということではない。彼らはそう思っていたようだが。

――最終的に、事態はどのようにして収まった?

結局、私はBLMを支援する投稿をした。なぜ幹部たちが急に考えを変えたのかはわからないが、HRを絡めた話し合いが何度もあったのは間違いない。

面白いのは、このことをSlackで社内に伝えたとき、一部の従業員からは、率先して社の態度を示し、はっきりと物を言ったことに礼を言ってもらえた。CEOは「いいね!」の絵文字をくれただけで、それまでの話しについては一切触れなかった。今後も彼に期待するのは無駄だろう。

[原文:‘He thought I was accusing him of being racist’: Confessions of a comms pro on working with out of touch leadership

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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