「 eスポーツ マーケティング」は広告を嫌う若い消費者に有効か:「従来の広告のように、邪魔とはみなされないものだ」

DIGIDAY

ボディスプレーを手がけるアックス(AXE)が、Z世代の顧客をさらに獲得しようと、eスポーツとゲーム、それにエンターテインメントベースのマーケティングチャネルで広告費を増やしている。

もっとも、eスポーツやオンラインゲームに参入しているのは、アックスだけではない。米DIGIDAYが以前報じたように、2022年に入って以来、eスポーツブランドとのパートナーシップは増えている。ガルニエ・フラクティス(Garnier Fructis)や本田技研工業といったブランドが、勢いを増すこのチャネルに投資しているのだ。

これまでと異なるマーケティングアプローチ

ユニリーバ傘下のレガシーブランドで、昨年からリポジショニングに乗り出したアックスがこうした戦略を採用しているのは、新たなライバルが市場にあふれるなかで、広告を嫌う若い世代との関係を維持するためだ。

「そうしたオーディエンスは、メディアミックスの点で以前のオーディエンスとは明らかに大きく異なる」と、アックスでポディスプレー担当グローバルブランドディレクターを務めるキャロライン・グレゴリー氏はいう。「したがって、彼らに対する我々のマーケティングアプローチはまったく違ったものになる」

アックスは今でもマーケティング予算の大半をリニアテレビ広告に費やしているが、昨年は、ゲーム、エンターテインメント、ストリーミング、デジタルコマース、ソーシャルメディアで予算と労力の両方を増やした。なかでも力を入れたのはTikTokだ。ただし、グレゴリー氏は具体的な数字を明かしておらず、アックスがeスポーツにどれくらいの金額を費やしているのかはわからない。

「我々は男性向けのブランドなので、ゲーム、エンターテインメント、ストリーミング、デジタルコマースに費やす金額を増やし、ソーシャルに多額の投資をしている」と、グレゴリー氏は述べている。

市場調査会社のカンター(Kantar)によれば、アックスが今年のこれまでに広告に費やした金額は1530万ドル(約21億7900万円)超で、2021年の1億4860万ドル(約211億5900万円)から大幅に減少している。なお、カンターはソーシャル支出を追跡していないため、ソーシャル関連の支出は含まれていない。

また、広告トラッキング企業のパスマティックス(Pathmatics)によると、アックスがデジタルに費やした金額は今のところ840万ドル(約11億9600万円)で、昨年の1100万ドル(約15億6600万円)よりやや少ない。ただし、その内訳は大きく変わっている。昨年は1ドルの予算もつけなかったTikTokに180万ドル(約2億5600万円)を費やしたのだ。Snapchat向けの支出も現時点で29万5000ドル(約4200万円)となっている。一方、Facebookとインスタグラムへの支出は、昨年の140万ドル(約2億円)から今年は56万ドル(約8000万円)超にまで減らされた。反面、ストリーミングへの支出は61万2000ドル(約8700万円)から380万ドル(約5億4000万円)へと急増していると、パスマティックスは報告している。

過去には購入意欲や認知度向上の例も

アックスは以前、米国外の市場でゲームをテストしたことがある。だが、米国ではゲームは比較的新しいチャネルだと、グレゴリー氏はいう。夏のあいだ、アックスは世界的に有名なストリーマーであるカイル・ギアスドルフ氏と提携して、ゲームの「フォーナイト(Fortnite)」でプレゼンスを構築した。

また最近では、eスポーツに近いプラットフォームのTwitch(ツイッチ)が、アックスのメディアミックスにとって重要な存在になっていると、グレゴリー氏は付け加えた。

「ゲームでの取り組みの結果、ブランドに対する購入意欲や認知度が若いオーディエンスのあいだで高まるなど、素晴らしい成果が見られた」と、グレゴリー氏は語った。ただし、それ以上の詳しい情報は明らかにしていない。

ゲームマーケティングが急増する理由

ゲームマーケティングが急増しているのは、ブランドが新しい顧客、特に従来型の広告を嫌う若い消費者を引きつける手段として、このチャネルに目を向けているからだと、広告エージェンシーのOKRPで最高戦略責任者を務めるネイト・スイフト氏は指摘する。

「全体として、Z世代は広告にオープンだが、ここでいう広告は、見え方や感じられ方が従来の広告とは違うかもしれない。従来の広告のように、邪魔とはみなされないものなのだ」と、スイフト氏はメールで説明した。

市場調査会社のイーマーケター(eMarketer)は今年、米国の総人口の半分以上がデジタルゲーマーになるとの予測に基づいて、広告収益が5年間の14億3000万ドル(約2036億円)から62億6000万ドル(約8900億円)にまで増えると見込んでいる。また、米DIGIDAYの過去の記事にあるように、景気の後退が起こったとしてもeスポーツは最悪の事態を乗り切れるはずだと、マーケターらは考えている。

「この分野はブランドにとって、若くて大勢のオーディエンスとつながる手段を提供してくれるだけでなく、製品を紹介し、収益を獲得し、ブランド認知度を向上させる新たなプラットフォームを提供してくれる」と、広告エージェンシーのバーバリアン(Barbarian)でテクノロジー責任者を務めるジョン・レポサ氏はメールで述べている。

アックスは、eスポーツやゲームのトレンドが続く限り、この波に乗り続ける計画だ。「ゲームはますます普及していくだろう。したがって、我々は引き続きこの分野にとどまり、規模を拡大していくつもりだ」と、グレゴリー氏は述べている。

[原文:‘Gaming is very much here to stay’: Why Axe body spray is taking a bigger swing at esports marketing

Kimeko McCoy(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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