コロナ禍でも文化を絶やさない、ある広告企業の取り組み:「これでトンネルの先に光が見えてくる」

DIGIDAY

新型コロナウイルスによるパンデミックは、いまだに終息の兆しが見えない。新たな変異種やブレークスルー感染のケースが増加したことで、多くの企業は当初計画していたリモートからオフィス勤務への切り換えを逡巡している。

週5日のオフィス勤務はパンデミック後の新しい日常にはならず、また、社員のバーンアウトが原因で「大離職時代」へと向かいつつあることを示す新しい調査結果も出ている。不幸な出来事の連続により、企業は現在、才能ある人材を雇うことはもちろん、企業文化を保ちながらそうした人材を維持するための創造的な方法を模索するようになっている。

予防接種促進の取り組みが続くなか、パフォーマンスマーケティング会社のティヌイティ(Tinuiti)は、入念に準備をしたうえであるプログラムを開始した。選ばれた社員をニューヨーク、ロサンゼルス、フィラデルフィア、アトランタなどのオフィスへ招待し、現地社員と直接会わせるというものだ。このプログラムが、Zoomでは実現できない社員同士の相互理解を補完し、ティヌイティの企業文化持続の一助になってくれればと、戦略的事業運営部のシニアバイスプレジデントのジャッキー・エドムンドソン氏は期待している。米DIGIDAYはエドムンドソン氏にインタビューし、この取り組みについて、そしてパンデミック時における社員のメンタルヘルスや、業務形態に対する将来的な構想について詳しく語ってもらった。

なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには若干の編集を加えている。

◆ ◆ ◆

――このパンデミックの折に、ティヌイティはどのように企業文化を維持しようとしているのか?

2020年3月に新型コロナウイルス感染が始まってから、実は弊社では新しい社員を400人以上採用している。ティヌイティは非常に速いペースで成長しており、社員の数は約800人に達しようとしている。この数字を見ると、社員の半分は直接会ったことがないということになる。私たちはZoomなど、コンピュータスクリーンを介して多くのことを共有してきた。社員の子供たちと会い、ときにはかわいいペットたちと会い、誕生日を祝い、そして昇進についての連絡もZoomで行われた。私たちは笑い、泣き、コロナ禍の過去1年間に起きたすべてのことについて、そして業務上直面せざるをえなかったさまざまな課題について激しい議論を交わしてきた。しかし、何人かの人を集めて、私たちが過去1年間に築き上げてきた絆をさらに強めることができれば、非常に有益で重要な意味を持つことになると思った。

――つまりは会社が資金を出して、社員に同僚に会うための旅をしてもらうということか? 社員の選定条件はどのようなもので、またその予算はどこから捻出しているのか?

誰もが対象者になれる。ポジションや事業所などに関係なく、多様な人事交流ができるようにしたいと本気で考えている。唯一の条件は、仕事で緊密に協力しているが、直接会ったことがない相手と会うということだ。現地に到着してから具体的に何をしたいのかを尋ねる。たとえば、同じ顧客に対応しているペアだったら、飛行機でこちらに来てもらい、その顧客について話し合ったり、昼食をとったり、楽しい時間を過ごして、生産的な仕事につなげてもらうことを想定している。もし、メンターとメンティーの関係であれば、もっと別の形の対面になるかもれない。私たちは、彼らの個々のニーズを満たせるようにカスタマイズして、彼らがその時間を最大限利用できるようにしたいと考えている。

私は、できるだけ多くの人がこの旅行に参加できるようにし、その費用を全額会社が負担するために、約5万ドル(約550万円)の予算を確保した。これは弊社の文化の一部であり、社員の経験向上を図る研修費用としての予算を潤沢に割いている。

――新型コロナの変異種デルタ株に関する懸念が高まるにつれ、この取り組みの変更を考慮することはなかったのか?

現時点では、この取り組みを継続する方向で考えている。繰り返しになるが、これはすべて自発的なものだ。だから、社員の誰かが「(これに選ばれたことを心から感謝しているが、)今の状況を考えると、延期せざるを得ない。無理な強行は避けるべきだ」と言ったとしても、それもまったく問題ない。しかし、当人がワクチン接種を受けていて、その気があるなら、私たちはそれを実現するために全力を尽くし、安全かつ効果的な方法でそれが確実に行われるようにするつもりだ。

――パンデミックの前はどうだった?

私たちの最後の研修会が行われたのは2019年の秋だった。全国の3つの異なる場所で地方研修会が開かれたが、それ以後、社員が実際に集まる機会を持てていない。

――不安定な時期の社員の士気向上を図るべく、ほかの会社が同じような取り組みを検討している場合、何を重視すべきと思うか?

この取り組みは、弊社の文化維持に大いに役立つだろう。チームの結束が高まるだけでなく、私たちがこのような会合を持ったことによって、クライアントが得る結果にも現れる。この取り組みの核心は、社員にとって有益なこととは何か、社員同士でどのようなつながりを持ちたいかだ。そして、それらを実現するためにもっとも有意義な方法とはなにか? これが本当に重要な点だ。社員の声に耳を傾け、彼らと関わり、そしていま、彼らにどのように対応し、どのようにサポートしたら良いかを知るべきだ。パンデミックはまだ完全に収束してはいないが、こうした取り組みによって、トンネルの先に光が見えてくると私は思う。

[原文:‘Light at the end of the tunnel’: Inside one digital agency’s attempt to keep company culture intact in the midst of a pandemic

KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)

Source

タイトルとURLをコピーしました