「 エアケア 」が最新ウェルネストレンドになった理由:ヴィトルヴィとダイソンの事例

DIGIDAY

ウェルネスとセルフケアの新サブカテゴリーが出現した。それは、「エアケア」だ。

呼吸する空気の質もウェルネスの一部という考え方

ホリスティックウェルネス(総合的なウェルネス)は、多くの場合、あらゆる角度から健康とウェルビーイング(幸福)について捉えることだと思われている。それには、食事や運動のほかに、肌につけるものや、気分や活力を補うために摂取するものも含まれる。また、自分の住む空間をどうキューレーションするか、どんな習慣を形成するかということも関与している。

しかし、ホリスティックウェルネスとセルフケアの最新分野のひとつに、我々が呼吸する空気そのものがある。空気の質、純度、湿度、香りなどの「エアケア」によって、屋内外の空気はウェルネスのカテゴリーに取り込まれている。キャノピー(Canopy)やヘイデューイー(Hey Dewy)のような加湿器のD2Cブランドは湿度に、空気清浄機会社のスキン・オーソリティ(Skin Authority)は室内の空気汚染にフォーカスしている。これらはすべて肌に影響を与えるものだ。呼吸を向上させる目的のソルトセラピーも、2019年以来また人気が高まっている

「エアケア」のブランド化を目指すヴィトルヴィ

社歴8年のエッセンシャルオイルとディフューザーのブランド、ヴィトルヴィ(Virtuvi)が4月5日に再ローンチしたとき、その主な焦点は「エアケア」のコンセプトをブランド化することだった。2022年から2023年の間に3カテゴリー(未公表)に参入する予定であると同社の共同創業兼CEOであるサラ・パントン氏は述べている。このリブランディングには、D2C eコマースサイト、ストア、ポップアップ、ソーシャルメディアなどチャネル全体にまとまりを持たせるという目標もあった。そのために、これまでビューティブランドのバッドハビット(Bad Habit)やスーパーグープ(Supergoop)、グロシエプレイ(Glossier Play)と協働したことのあるクリエイティブエージェンシーのアルリデン(Aruliden)と提携した。

ヴィトルヴィが目指す統一感の主な例としては、新しいカスタムデザインのエッセンシャルオイルのガラス製ボトルや、空気のわずかな動きがインスピレーションになったという新しいフォントのプレミアム二次包装などがある。

「紙のパッケージの手触り、オンラインでの購入の際に表示される画像や色、購入方法などあらゆる感覚的な体験を通じて、消費者が香りをナビゲートできるようにサポートしたい」とパントン氏。

ヴィトルヴィが次に展開する予定のカテゴリーによって「香りを通じて自宅でくつろぐ自分を表現するための新しい価格帯と場所をクリエイトする」と同氏は述べている。

ヴィトルヴィは、室内の香りと空気浄化、湿度と一般的な順応性などの異なる柱を通してエアケアの概念を検討している。パントン氏は、同社がエアケアシステムの作成で目指していることをハイファイのホームサウンドシステムを開発したオーディオ会社、ソノス(Sonos)と比較している。ヴィトルヴィは、2020年2月にシリーズAで450万ドル(約5.7億円)を調達、売上高は2020年に2倍に成長した。パントン氏によると、2021年にまた「プラス」成長を遂げたということであるが、詳細は共有されなかった。

ウェルネスとビューティ業界で起こっている動き

この最新の展開の背後には次の2点がある。第一に、何年にもわたってビューティ・ウェルネス業界は家の掃除やキャンドルのような領域で、そして最近では家庭用機器の領域でじわじわとホームカテゴリーに進出してきている。ディフューザーや空気清浄機、加湿器や除湿器はどれも何十年も前からあるものだが、(ホームセンターの)ホームデポ(Home Depot)のような小売店でのみ売られていた。しかし、今ではセフォラ(Sephora)や観葉植物の小売業、シル(The Sill)でも販売されている。現在進んでいるこのような融合のおかげで、消費者はウェルネスの一環として十分な湿気を含む空気の肌に対するメリットや香りのメリットについて理解するようになっている。

第二には、空気の質に関する現実的な危機がある。これは消費者産業に市場機会があることを示している。最近、マイクロプラスチックが都市部に住んで働いていた患者の生きている肺組織で発見された。これまでは医師からありえないと考えられていたことである。また、適切な規制がなければ、都市の大気汚染が原因で今後数十万人が早死にする可能性があると予想されている。同時に、アメリカ合衆国環境保護庁によるとアメリカ人は平均して約9割の時間を屋内で過ごしている。汚染物質には、室内での濃度が屋外の濃度より2〜5倍高くなっているものもある。さらに、Covid-19により空気中の粒子の移動方法や人の呼吸器系の繊細さが浮き彫りになっている。

ウェルビーイング企業として拡大するダイソン

ウェルネスインスティテュート(The Wellness Institute)では、2020年11月にエコノミストのティエリー・マルレット氏が次のように述べている。「空気の質を改善したり空気の汚染を避けることは明らかにウェルネスのサービスとなるだろう。ウェルネス分野で室内の空気の質に重点が置かれていることは、販売の追い風が強まることで恩恵を受けるだろう」。

その点において、ダイソン(Dyson)が個人用空気清浄システムと組み合わせた新しいノイズキャンセリングヘッドホンを発表したとき、その外観(とエイプリルフール前だったので)には懐疑的な意見もあったが、コンセプト自体はそれほど奇抜ではなかった。価格帯や流通計画についてはまだ発表されていない。

このゾーン(Zone)と呼ばれるノイズキャンセリングヘッドホンは、これまでオーディオを手がけたことのないダイソンにとっては新しい分野である。ゾーンには小さなコンプレッサーが付いており、イヤピースから空気を吸い込む。空気はろ過されて、磁気で取り付けられているバイザーから流れる。バイザーとユーザーの顔の間にはギャップがあり、そこに浄化された空気が出てユーザーが呼吸する仕組みになっており、バイザーは取り外しができる。

ダイソンのシニアデザインマネージャー、デイヴィッド・ヒル氏は次のように述べている。「ゾーンは都市の大気汚染のために設計された。Covid-19の影響で空気の質がいっそう意識されるようになった。大気汚染、そしてほとんどの都市が年間を通じて世界保健機関が推奨する大気汚染のガイドラインを満たしていないという事実に注目した」。

ダイソンは、2019年、ヘアドライヤーなど従来のビューティ器具と概日リズムを乱さないという照明を組み合わせて、「ウェルビーイング」企業としての地位を確立した。2015年から室内空気清浄機の販売はしているが、現在は小型のろ過技術で屋外スペースにも注目している。

エアケア、そして、キャンドルやディフューザーで家に香りをもたらすことと汚染などの健康上の実際の脅威を予防することとの関連性は消費者からどのように理解されるかはまだわからない。ヒル氏はゾーンが受け入れられるようになるという主張を裏付ける例として、都市の大気汚染への対応としてパンデミック以前でもアジアではマスクが着用されていた点、そしてパンデミックにより欧米でもマスク着用が正常になっている点を指摘する。

一方、ヴィトルヴィは、エアケア関連のストーリーをうまく伝えるため、ブランドの刷新とともにウェブサイトもリニューアルした。そのタグライン「部屋の空気をパーソナライズする(Make the air yours)」は、ホームページで目立つように表示されている。

「エアケアの必要性はずっと存在してきた。意図的なナラティブと手厚い支援で消費者がエアケアのニーズを深く理解できるようにサポートする」とパントン氏。「それによって、我が社は誰でも知っている身近なブランドに、そして誰の部屋にも必要とされるブランドになることを目指す。これは、贅沢なキャンドルを灯して気分をアップさせることとは同じではない」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: How ‘air care’ became the latest wellness trend

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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