ニキビパッチ分野の M&A 最新事情。チャーチ&ドワイト、ヒーローコスメティクスを買収。【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

アーム&ハマー(Arm & Hammer)、オキシクリーン(OxiClean)、ヴィヴィスカル(Viviscal)、ナイール(Nair)を抱えるチャーチ&ドワイト(Church & Dwight)は、9月6日、ヒーローコスメティクス(Hero Cosmetics)を6億3000万ドル(約899億円)で買収したことを発表した。ハイドロコロイドのニキビパッチでもっとも知られているヒーローコスメティクスは米国でニキビパッチカテゴリーを生み出した最初のブランドの1社だ。

パンデミックで大躍進のヒーローコスメティクス

ヒーローコスメティクスは2017年、Amazon独占でローンチし、2018年には自社eコマースサイトを立ち上げた。同社の共同創業者兼CEO、ジュウ・リュー氏は以前Glossyビューティポッドキャストで、Amazonは「欧米のオーディエンス向けにニキビパッチのブランドを作れば成功するという自分の仮説を証明するため」のチャンスだったと述べている。比較的新しいブランドであるヒーローは2019年に約150万ドル(約2.1億円)の売上が予想されていたが、これはパンデミック中にクリティカルマスに達する以前の話だった。昨年の収益は1億ドル(約142億円)に達し、2022年には1億4000万ドル(約200億円)の収益を見込んでいる。

「当社は短期間にすごいスピードで進んできた。そして、減速はまったく予想していない」とリュー氏は述べ、同社が2021年に1億ドル(約142億円)の収益を達成したあと売却先を真剣に検討し始めたと説明する。同社はフィナンコ・レイモンド・ジェームス社(Financo Raymond James)を起用して今年初めに売却を進めた。「すばらしい成長軌道を継続するために必要なインフラストラクチャーとサポートを提供してくれる最高のパートナーを見つけることが実に重要だった」。

チャーチ&ドワイトの買収基準を満たしたヒーロー

家庭用品、パーソナルケア、ヘルスにフォーカスしたチャーチ&ドワイトのビューティ関連ブランドは機能的な製品を販売している。それらはインスピレーションやコミュニティ、セクシーさで知られているものではない。たとえば、トピック(Toppik)は薄毛用の毛髪繊維を、ヴィヴィスカルは育毛サプリメントを販売している。しかし、ヒーローコスメティクスはコミュニティ主導のクールなD2Cビューティブランドで、14ブランドからなるチャーチ&ドワイトのポートフォリオを最新化する。もっとも重要な点はヒーローがチャーチ&ドワイトの4つの買収基準を満たしていることだ。それは、対象カテゴリーで1位または2位のブランド、成長中のブランド、資産が少ないブランド、そして事業全体に貢献する粗利益があるブランドだ。

チャーチ&ドワイトのCEO、マシュー・T・ファレル氏は、買収を発表した9月6日の通話でヒーローコスメティクスのランウェイについて詳しく述べている。「ヒーローは米国のニキビカテゴリーで2位のブランド、シェアは14%だ。消費者がローションや軟膏よりもパッチを使うようになったため、パッチ形状サブカテゴリーはニキビカテゴリーの18%に成長した。ヒーローの流通ランウェイは、現在もっと広範なニキビ治療カテゴリーの99%のACVと比較してわずか8%のACVだ」と述べ、ヒーローコスメティクスが80〜90%を達成できることを望んでいると付け加えた。

ヒーローはすでに広範囲の小売業者を抱えているが、リュー氏は次のように述べている。「我々の流通は限られている。Amazon、ターゲット(Target)、アルタ(Ulta)、CVSで取り扱われており、ロングテール専門だ。やるべきことはまだまだある。たとえば、スーパーやドラッグストア、ほかのスペシャリティストアなどでの取り扱いだ」。

ヒーローコスメティックスは現在、ターゲット、アルタビューティ、CVSファーマシー、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)といった大衆向け小売店と専門店の両方で販売されている。リュー氏は、チャーチ&ドワイトの傘下で流通は米国と海外の両方で成長するだろうと述べ、カナダがヒーローが開拓する最初の国際市場になると説明した。

他社ブランドの売却の可能性

10年以上前にハイドロコロイドのニキビパッチが韓国で注目されたが、業界筋によると、ジットスティッカ(ZitSticka)、ピースアウト(Peace Out)、スターフェイス(Starface)などのヒーローのニキビパッチ競合他社の多くも市場に出回っている。昨年の冬にユース・トゥ・ザ・ビューティ(Youth To The Beauty)がロレアル(L’Oréal)に買収されたこと、スーパーグープ(Supergoop)がブラックストーン(Blackstone)に買収されたことが何らかの示唆だとしたら、他企業も売却を目指すのは時間の問題だろう。リュー氏が「必要とするすべての人が製品を入手できるようにする」ことを目指していると語ったヒーローとは異なり、他ブランドはポジショニングとアクセスを定義するためにパートナーに依存してきた。ピースアウトはセフォラで販売されており、ジットスティッカはアルタ、そして最近ではターゲットでも取り扱われており、スターフェイスはターゲットとウォルマートで販売されている。

ヒーローの強固な経営基盤が推進した買収

ヒーローの売却から得られた教訓のひとつは、オンラインファーストのヒーローが、昔のガールボスとは異なり、つかみどころのない創業者のストーリーだけに支えられたわけではない点だ。リュー氏はもっとも積極的な共同創業者であり、買収後も任務を続ける(共同創業者のドワイト・リー氏とアンディ・リー氏もそれぞれCOOとチーフデザインオフィサーの職務を継続することになっている)。実際、ヒーローコスメティクスの売上は同社の強力な経営基盤が推進しているのだ。緩慢なM&A環境において重要であるEBITDAは40%だった。

マイティパッチ(Mighty Patches)はヒーローのベストセラー製品だが、ニキビのメガブランドと競合するためにスキンケア製品の品揃えもおのずと増えている。2020年にはニキビ跡を改善するセラムのライトニングワンド(Lightning Wand)と赤みを薄くするレスキューバーム(Rescue Balm)をローンチした。この2製品は、マイティパッチとともに、同社サイトの売れ筋トップ3製品だ。昨年にはクレンザー、トナー、モイスチャライザーの販売も開始した。

ファレル氏は次のように述べている。「(ヒーローは)ニキビ全体でシェア14%のナンバー2ブランドだ。ナンバー1はご存知ニュートロジーナ(Neutrogena)だが、ヒーローはパッチで大きな市場シェアを持っている。63%だ。この業界について考えてみると、86%がパッチ、8%がニキビのアフターケア、6%がスキンケアアイテムなので、凝縮しており活発な市場だ。(ヒーローは)先駆者の1社だったので、大きな支持を得ているのだと思う。… 2番目に大きな競合他社と比べてAmazonのレビュー数は5倍であり、今後のチャンスが楽しみだ」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: With Church & Dwight’s acquisition of Hero Cosmetics, what’s next for the pimple patch space?

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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