「 データ と分析力が、より高いパフォーマンスを実現する」:オーシャンメディア CEO ジェイ・ランガン氏

DIGIDAY

新興の独立系エージェンシーの多くがそうであるように、オーシャンメディア(Ocean Media)もほんの数社の顧客を抱えて創業した。しかしこの20年で、ミントモバイル(Mint Mobile)や楽天のような人気ブランドの成長を支援しつつ、自らもデータドリブンなエージェンシーに進化した。

オーシャンメディアのジェイ・ランガンCEOは、広告とテクノロジーの領域で広範な経歴を持つ人物だ。ランガン氏はブルームバーグ(Bloomberg)で広告人としてのキャリアをスタートさせたが、その当時、同社のメディア事業はごく限られていた。雑誌とラジオが中心で、90年代にはまだテレビ網は存在していなかった。

やがてランガン氏は米中西部の事業を任され、さらに西海岸を担当するようになった。カリフォルニア州ハンティントンビーチを拠点とするオーシャンメディアと関わりを持つようになったのもこの時期だ。同氏がオーシャンメディアに入社した2002年当時、同社の従業員は10人だったが、いまでは180人を超えるスタッフが働いている。この10年間、ランガン氏はデータプラットフォームの自社開発、効果測定システムの自動化、AIを活用したメディア投資のためのプランニングツールの開発などを統括してきた。

「あっという間の19年だった」とランガン氏は振り返る。「エージェンシー側に移ってきて、新しい視点が得られた。さまざまなエージェンシーの仕事を見てきたが、すばらしいと感じる仕事がある一方で、別の方法ならもっと良い結果が得られるのにと思うこともあった」。

オーシャンメディアが創業以来はじめて獲得した大手の顧客はプライスライン(Priceline)で、25年経ったいまも同社のメディア業務を担当している。この間、エッツィー(Etsy)やオーバーストックドットコム(Overstock.com)ら、主要ブランドを顧客リストに追加しつつ、データ分析を駆使して7億ドルにのぼる顧客のメディア予算を采配してきた。

米DIGIDAYはランガン氏にインタビュー取材をおこない、独立系のエージェンシーと持株会社系のメガエージェンシーの違いや、データとパフォーマンス指標を活用してクライアントに競争優位をもたらす手法などについて語ってもらった。

なお、本インタビュー記事は、読みやすさを考慮して編集を加えている。

◆ ◆ ◆

――独立系エージェンシーとメガエージェンシーとのあいだに手法的な違いは見られるか?

オーシャンメディアでは、顧客のためにできる限り良い価格を引き出し、さまざまな施策を試みるために、常に条件交渉に深く関わってきた。意外にも、大手のエージェンシーでは価格交渉はあまりおこなわれない。

持株会社やメガエージェンシーの場合、「うちは大手だから」という意識があるようだ。これだけ大きいのだから、最良の価格を提示してくれるに違いない、と。もちろん、実際にはそうでないこともよくある。交渉の目標は、できるかぎり有利なレートでメディアを買い付けることだ。メディアとの交渉が複数回におよぶこともあるが、非常に生産的な交渉をおこなっている。

――オーシャンメディアの戦略におけるデータの役割は?

我々が真にやりたいことは、膨大な量のファーストパーティデータを直接クライアントから取得して、それをリニア(従来型)テレビとかデジタルとか、ほかのメディアのデータと組み合わせて使うことだ。洗練されたダッシュボードも開発した。クライアントはこのダッシュボードを使ってデジタルメディアやインフルエンサーなどのパフォーマンスをほぼリアルタイムで確認できる。

ひとつのクリエイティブが別のクリエイティブより成績が良いと分かれば、このデータを活用してキャンペーンを最適化する。

――リアルタイムのデータが活用できなかった以前と比べると?

以前は、テレビについてはポストログデータを待つ必要があった。通常は1週間程度のタイムラグが生じる。いまは翌日にはデータを取得できる。ときおり現実との不一致もスポットCMの2%から3%程度は出ることもあるが、基本的にはかなり正確で、パフォーマンスをすばやく確認できるようになった。

最終的には、このような最適化をおこない、成功要因や相乗効果を理解することにより、より強力でパフォーマンスの高いメディア戦略やメディアプランを構築できるようになる。

ク――ライアントとの取引関係を長期的に維持するための秘訣は何か?

我々の競合優位のひとつにクライアントとの長期的な取引関係がある。この業界ではめずらしいことだ。その要因のひとつはデータと分析力にある。前述のダッシュボードを構築する際、クライアントの情報を大量に取り込むが、これは簡単には真似(まね)できない。この点も、長期的な取引関係の維持に貢献している。

オーシャンメディアではキャンペーンの効果測定をブランド横断的におこなっている。たとえばエッツィーと楽天を比べると、両社のターゲット顧客にはしばしば類似性が認められる。実際、ビジネスモデルは違っても、エッツィー向けの戦術が、同じように女性をターゲットとする別のブランドでも通用することがあった。そのようなデータがあれば、キャンペーンを有利にスタートさせることができる。我々はデータドリブンなエージェンシーとして、メディアプランニングやバイイング、究極的にはパフォーマンスの側面でも、常にデータに基づいてクライアントを支援している。

――今後数年間を見通して、メディア事業に起こりうる最大の変化は何だと思うか?

ストリーミング戦争とこの業界の再編に注目している。さまざまな動画配信サービスが競合する現状、多くの消費者はどのサービスに加入すべきか頭を悩ませるが、選択の決め手がコンテンツであることも明らかだ。なんとなく、ひと昔前のケーブルテレビを彷彿させる。今後、業界の統合が進むだろう。

また、Amazonと「木曜ナイトフットボール」がおこなった巨額の投資の行方にも注目している。今後数年でどこまで普及率を伸ばすのか興味深い。

[原文:Ocean Media’s Jay Langan on how data fueled this independent agency’s long-term strategy

Antoinette Siu(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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