美容の トラベルリテール が好調。ブランドは2022年の旅行ブームをどう活用したか?

DIGIDAY

人混みであふれる空港ターミナル。セキュリティチェックに1時間も並ぶ列。フライトのキャンセルや遅延、そして荷物紛失が続出する手荷物受取所。

2022年の夏は「リベンジ・トラベル」のシーズンだった。失われた時間を取り戻そうと、旅行熱に浮かされた旅行者たちは、旅行業界の複雑な事情のせいで大混乱に見舞われた。しかし、そのような問題や騒動があった反面、少なくともひとつの業界は近年の旅行ブームから多大な利益を得ている。つまり、トラベルリテールである。国際航空運送協会(IATA, International Air Transport Association)によると、全体的な旅行者数はパンデミック前の水準には達しなかったものの、美容業界では旅客数の増加と相関して好調な売上が報告されている。

好調のトラベルリテールチャネル

「人々は、再び旅行ができることに興奮している。パンデミックの際に機会を奪われていた旅行者が、再び移動することを楽しむようになり、物を購入することにさらに自信を持っていることに気づいた」と話すのは、ロクシタングループ(L’Occitane Group)でグループコーポレートコミュニケーションを率いるマリアンナ・フェルマン氏だ。「グローバルレベルでは、美容のトラベルリテールは回復しつつあるが、現実的にはパンデミック前の売上水準に達するには時間がかかるだろう。だが、ロクシタン・トラベルリテール(L’Occitane Travel Retail)は、(2023年度の)第2四半期に力強い回復を目の当たりにしている」。

2022年度、ロクシタングループのトラベルリテールチャネルは2桁の成長を遂げ、2023年度の第1四半期も成長を続けているとフェルマン氏は述べた。ロクシタングループは、特に旅行自体が徐々に再開されるなかで、このチャネルの継続的な成長に対して強気だという。

コティ(Coty Inc.)の中国本土向けトラベルリテール・シニアバイスプレジデントのギレム・スーシュ氏によると、同社の場合、2022年度のグローバルトラベルリテールは総売上高の6%を占めている。過去1年間のコティのトラベルリテールは「文字通り飛ぶ鳥を落とす勢いで3桁の成長を遂げている」とスーシュ氏は言う。

トラベルリテールで収益性が高いフレグランス

トラベルリテールでよく購入される商品が、フレグランスだ。リサーチダイブ(Research Dive)のレポートによると、グローバルトラベルリテール市場は2022年から2031年にかけて2257億ドル(約33.2兆円)の収益を上げると予想されており、そのなかでもフレグランスのカテゴリーは814億ドル(約12兆円)で、もっとも収益性が高いとされている。

だが、コティは多くの企業と同様に、パンデミックへの懸念と課題に基づいて戦略を転換・再考しなくてはならなかった。美容業界の最大手であるコティが最初にとった行動は、数十の免税店を含むすべての同社の美容小売店に、デジタルで操作できるタッチレス・フレグランステスター装置をローンチし、安全なショッピング体験を提供することだった。またこのテスター装置では、製品のポジショニングおよび顧客体験を最適化するために、使用データにアクセスすることもできた。このようなイノベーションは、消費者のエンゲージメントを引きつけ、トラベルリテールの売上を強化することが期待される。

一方、ロレアル(L’Oréal)傘下のYSLボーテ(YSL Beauty)は、神経科学を利用してパーソナライズされた香りをアドバイスするセント・ステーション(Scent-Station)技術を、10月末に海南空港にローンチする予定だ。また、ロレアル・トラベルリテール(L’Oréal Travel Retail)は、顧客が旅行する際に正確な商品のリコメンデーションを提供するために、気象・大気環境企業のブリーゾメーター(BreezoMeter)を活用する計画である。

「パンデミックのあいだ、フレグランスの売上はコティにとって明るい材料となり、これは現在も続いている」とスーシェ氏は述べ、特に中国はCovidの制限による影響を受けたものの、同社にとって2桁の成長を取り戻した市場であることを強調した。APACのすべての市場が2桁の力強い成長を遂げているという。「我々は それを『フレグランス効果』と呼んでいるが、不穏な市場環境の中で回復力があると証明されている市場において、当社は優れた業績を上げている」。

コティはフレグランスの売上を決算で明らかにしていないが、過去の四半期決算報告では、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)のデイジー(Daisy)ラインやグッチ(Gucci)などのプレステージ・フレグランスが好調を維持し、マス・フレグランスはそうでなかったことが示されている。NPDのデータによると、プレステージ・フレグランスの売上は2020年に前年比8%減、2021年には2桁増で回復している。

トラベルリテールへのさらなる注力

フレグランス効果の成功と併せて旅行が活発に回復したことを利用するため、コティはトラベルリテールにさらに投資し、2021年から2022年にかけてプレステージメイクアップとスキンケアをすべてのグローバル市場に導入、提供商品を拡大している。スキンケア環境に優しいパッケージなど、Covid-19のパンデミックから生じた新たなトレンドを反映した新商品は、トラベルリテールにおける次のマーチャンダイジングトレンドになりそうだ。

データブリッジマーケットリサーチ(Data Bridge Market Research)のレポートでは、美容トラベルリテール市場のスキンケアセグメントは、消費者の肌の健康に対する意識の高まりによって、「2022年から2029年の予測期間において、最高の複合年間成長率6.3%に達すると予想されている」。

「旅行業界は海外旅行の増加が続いていることから利益を得ており、そのおかげで消費者は当社のブランドと接する機会が増えている。当社のプレステージブランドは非常に好調であり、スキンケア分野をさらに拡大するチャンスがあるのは明らかだ」とスーシェ氏は述べ、好調なプレステージブランドの代表例としてランカスター(Lancaster)の名を挙げた。コティは海南でこのブランドをリローンチし、「第1四半期は非常に好調」で中国本土と韓国の免税店への拡大も計画している。「特にアジアにおけるトラベルリテール市場の指数関数的成長は、大きな成長機会を意味している。とりわけスキンケアカテゴリーが美容業界をリードし続けており、その需要は主にこの地域が牽引している」。

ロクシタンも、パンデミックのトレンド、特に意識の高い消費者に基づく新製品を発表した、とフェルマン氏は言う。たとえば、ロクシタンは環境に配慮したヘアケア製品のリフィルをトラベルリテールセットに拡大し、全世界のトラベルリテールショップで販売した。同社は、パンデミックによってサステナビリティやマインドフルな消費に対する消費者の関心が高まっていることを学んでおり、これらのアイテムをトラベルリテール商品に加えることを選択している。旅行調査会社マインド・セット(M1nd-set)によると、86%の旅行者が、サステナビリティへの取り組みがブランドの認知度にプラスの影響を与えると回答している。

[原文:How beauty brands capitalized on 2022’s travel boom]

ANDREA CHENG(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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