パブリッシャー 2Q決算、広告とコマースが減少もサブスクは盛況:要点まとめ

DIGIDAY

2022年第1四半期がデジタル広告やパブリッシャーのコマースビジネスの状況について、不透明な予兆を示していたとするなら、第2四半期からわかるのは、収益源が経済状況の直撃を受けているということだ。

実際、決算説明会ではパブリッシャーのCEOやCFOが「マクロ経済の厳しい環境」による広告業界の「逆風」という表現を繰り返し引用しているが、そもそもこれは、TwitterやMetaといったプラットフォームの経営陣が2022年7月の決算説明会で使用していた言葉の受け売りだ。

しかしながら、パブリッシャーの第2四半期決算説明会を詳しく調べてみると、彼らの受けている「逆風」は経済全体だけのせいいとは言い難い。BuzzFeedやガネット(Gannett)、IACのドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)、ニューズ・コーポレーション(News Corp)のダウ・ジョーンズ(Dow Jones)、アリーナ・グループ(The Arena Group)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のような企業が、収益の多様化によって収益源をどのように分散してリスクを防いでいたのかによって、その結果は違うようだ。

今回の記事に関係するパブリッシャーのほぼ半数は、第2四半期で総収益が減少しているが、広告がその犯人として名指しされている。残りの半分は前年比で収益が増加しており、その理由はサブスク収益が好調というパブリッシャーもあれば、なかには買収の結果、広告収益がそれまでの数年よりも改善したというパブリッシャーもある。

M&Aの競争に参加した大半のメディア(BuzzFeed、IAC、ニューヨーク・タイムズ)は、調整後収益を買収前後の業績を明確に比較するために使用していた。一方、アリーナ・グループは複数の買収を重ねたものの、第2四半期の決算説明会では調整後収益を報告せず、第2四半期のデジタル広告収益前年比増のうち、53%がスパン(The Spun)やアスロン(Athlon)の買収によるものだと説明した。

パブリッシャーの収益源の現状

  • 今回のまとめで取り上げる上場パブリッシャーの半数は、第2四半期で総収益(もしくは調整後利益)が減少。
  • パブリッシャーのデジタル広告収益では、1桁%の減少が標準。
  • BuzzFeedでコマースの減少が見られる一方、ニュースパブリッシャーではデジタル版サブスクが増加。

逆風のブローが効き始める

IACのドットダッシュ・メレディスは、調整後のデジタル収益で、2021年第2四半期の2億5310万ドル(約329億円)から2022年第2四半期には2億3450万ドル(約305億円)へと7%の減少を見せた(事業は広告、コマース、デジタルサブスクリプションなど多岐にわたる)。

ドットダッシュ・メレディスCEOのニール・ボーゲル氏は8月9日の決算説明会で、この数字の責任は半分がマクロ経済の環境にあり、残りの半分は、買収したばかりのメレディスブランドの一部を第2四半期に非収益化し、ドットダッシュ独自のテックスタックに組み込むという経営判断にあるとした。

ボーゲル氏によると、「問題が集中」していた広告分野はリテール・食品・CPGであり、残念なことに親会社のIACにしてみれば、「ドットダッシュ・メレディスが買収したメレディスの資産は、各ブランドの分野で評価が高すぎた」と同氏は第2四半期決算説明会で話した。

広告に対するマクロ経済の影響以上に、デジタル収益減少の原因だとボーゲル氏が考えているのは、時間の読みの甘さだ。メレディスのプロパティをドットダッシュのテックスタックに移行するのに想定以上の時間がかかったという。現在、同社の全トラフィックの約75%は、同氏がドットダッシュの「パフォーマンスサイト」と呼ぶところのサイトから得ているが、そのオーディエンスの4分の1は依然として効率的に収益化できていない。これは、「多少ドミノ効果」も加わって、「ツールが充実しないまま、さらに過酷な時期」に突入してしまったからだと同氏は説明した。

ニューヨーク・タイムズでは、デジタル広告収益が前年比2.4%減となった。その原因は「マクロ経済の厳しい環境の影響、ニュース記事隣接広告に対するマーケターの予算削減、自社アプリにオーディエンスを呼び込む戦略の一環としての、プログラマティク広告の供給抑制」にあると、同社CFOのローランド・カプート氏が8月3日の決算説明会で話している。

その一方で、第2四半期にライブエンターテインメントブランドやラグジュアリーブランドの広告主の予算増加に伴い、同社の紙媒体広告収益が15%増加しているとカプート氏は話す。その結果、ニューヨーク・タイムズ紙の広告収益全体は前年同期比4%増となった。

すべての船が沈む運命にあるわけではない

ニューズ・コーポレーションは期末が6月30日であるため、今回の決算報告には年間の数字も含まれている。2007年の買収以来ダウ・ジョーンズの広告収益が最高の伸びを見せて、20%増となった。内訳は、デジタル広告収益が前年比22%増、紙媒体広告収益が前年比19%増である。

第4四半期も見てみると、広告収益が前年比13%増(1300万ドル[約16億9000円]で、増加傾向は衰える気配がない。特にデジタル広告は前年比16%増で、第4四半期の広告収益全体の58%を占める。なお、ニューズ・コーポレーションの決算報告によると、前年は56%だった。

一方、スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)やストリート(The Street)、パレード(Parade)を傘下に抱えるアリーナ・グループは、デジタル広告収益が前年比114%増で、2470万ドル(約32億1000万円)に達した。米国証券取引委員会に提出された同社の最新四半期決算報告書によると、これは主に、スパン(The Spun、2021年買収)とAMG/パレード(AMG/Parade。以前はアスロン[Athlon]とも。2022年4月に買収完了)の買収で、広告収益と販売可能なインベントリー(在庫)が増加したことが原因だという。

アリーナ・グループは調整後収益の比較を公表していないが、収益の内訳はメディア別に公表している。スパンはデジタル広告で450万ドル(約5億8000万円)を記録し、AMG/パレードが250万ドル(約3億2000万円)、ストリートが160万ドル(約2億万円)、スポーツ・イラストレイテッドが87万2000ドル(約1億1000万円)、既存事業が180万ドル(約2億3000万円)だという。

さらにアリーナ・グループのプレスリリースでは、今回の収益増加を「82%におよぶトラフィックの向上とCPMで40%以上の増加」によるものだともしている。このCPMの増加は驚きに値する。というのも、オペラティブ(Operative)のSTAQベンチマーキングデータによると、2022年第2四半期でプログラマティックオープン市場のCPM平均コストが週平均で、前年同期の1.74ドル(約226円)から1.58ドル(約205円)に下落しているからだ。

BuzzFeedも広告事業の増収を報告しており、前年比11%増で5320万ドル(約69億1000万円)だという。しかしながら、コンプレックス・ネットワークスを除外すると、同社の広告収益は前年比5%減で、第2四半期は広告全般で3%の減少となる。

また、BuzzFeedのCFOフェリシア・デラフォーチュナ氏は、こうしたマクロ経済の動向から、自社で所有・運用するインベントリーに対して価格圧力を感じ始めていると話した。さらに、BuzzFeedのコンテンツは「現在でも、ブランドのプロモーションコンテンツが主流なので……マクロ経済の逆風のなか、ブランドのプロモーションコンテンツは第3四半期に最も影響を受けることになるだろうと覚悟している」という。

eコマース、王道にあらず

もう少しBuzzFeedの状況を見てみよう。高い評価を得ていたコマースビジネスは、前期よりも第2四半期のほうがさらに大きな打撃を受けた。第1四半期は目標には及ばないまでも、増益だったが、第2四半期のコマース収益は1330万ドル(約17億3000万円)で、前年比22%の減少となった。

デラフォーチュナ氏によると、この減益は新型コロナ禍の支出増加に伴うもので、想定内であるものの、Facebookのトラフィック減少が原因となり、BuzzFeedのショッピングコンテンツのオーディエンスが減少するという、前四半期と同じようなパターンが見られる。Amazonのプライムデーが2021年は第2四半期だったが、2022年は第3四半期に切り替わったことも影響している。

ドットダッシュ・メレディスでは、今期のデジタル収益減少は消費者の需要が弱まっていることにも原因があると考えている。この需要減退の結果、金融サービス製品を含む、アフィリエイトコマースの収益やパフォーマンスマーケティングの収益に影響が及ぶ。

デジタル版サブスクリプションは安泰

ニューヨーク・タイムズは何年にもわたり、デジタル版サブスクリプションの収益を上げる戦いに挑んできたが、最近、この事業の判断基準を購読件数から、このエコシステムにいる購読者の数に変更した。また、2021年にはアスレチックを買収し、購読ビジネスをさらに成長させようと決意を新たに取り組んでいる。

この戦略が同社で効果を発揮しているのは、広告収益の減少にもかかわらず、第2四半期の総収益が5億5570万ドル(約722億4000万円)もあるからだ。これは調整後収益で前年比7.9%増にあたり、デジタル版サブスク収益は2億3870万ドル(約310億3000万円)で、前年比25.5%増である。この増益は、今期第2四半期にデジタル版単独の購読者が18万人増加した結果だ。

今期第4四半期、ダウ・ジョーンズの紙版とデジタル版を合わせたサブスクリプション事業の収益は29%増、9700万ドル(約126億円)増収で、そのうちデジタル版サブスクリプションは68%を占める。一般読者を対象にしたダウ・ジョーンズの購読件数は合計約490万件で、前年から9%増加しているが、デジタル版単独サブスクリプションでは14%増。2022年1月~3月半期と比較すると、ダウ・ジョーンズには10万件の購読件数が新たに加わったことになる。

ウォールストリートジャーナルは第4四半期、購読件数が前年比14%増で、平均購読件数は370万件に増加した。第3四半期の決算報告書によると、2022年度第1四半期の購読数と変化は見られなかったものの、デジタル版限定購読件数は第3四半期の300万件から第4四半期の310万件に増加しており、購読者のニュースを読む手段が変わってきたことがわかる。

ガネットもこの1年にわたり、デジタル版サブスクリプションに力を入れてきた。有償デジタル版の購読件数が2022年度第2四半期の期末には190万件に達する勢いだ。収益は35%増、3250万ドル(約42億2000万円)になったが、デジタル版サブスクリプションは同社の第2四半期収益全体の4.3%にすぎない。一方の紙版は第2四半期総収益の32.3%を占め、2億4200万ドル(約314億6000万円)になるが、ガネットの決算報告によると、その紙版は2021年第2四半期から15.4%減少しているという。

ガネットがデジタル版サブスクリプション事業を現在の紙版のレベルまで育てあげるには、まだ道のりは長い。こうした問題から、ガネットでは新聞部門の社員80人以上の削減を8月12日に発表している。

[原文:Media Briefing: Advertising and commerce ebb while subscriptions flow in publisher’s Q2 earnings reports

Tim Peterson and Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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