クレーンゲームのプライズといえばフィギュアやぬいぐるみが定番だが、たまに最先端のガジェットがセットされていることがある。
それはスマートフォン「のようなもの」だったり、AirPods「のようなもの」だったり……白い外箱でどことなくApple製品に寄せたデザインも散見される。
最短100円とか200円とかで獲得できるわけだから、誰も高級品だとは思わないにしても、性能はどうなんだろうか。全国のちびっこが「思ってたのと違った(涙)」とガッカリしてはいないだろうか……。それはいかん!!
正義感にかられた筆者は、とあるスマートウォッチをゲットした。普通なら100円のスマートウォッチなんてあり得ない。お前はいったい何ができるんだ?
・「SMART BRACELET」
見たところ、どの店舗でも難度のあまり高くない1プレイ100円の筐体にセットされていることが多いようだ。筆者は獲得まで4回かかったので、コストは400円ということになる。
それでもスマートウォッチが手に入るなら十分に安い。「ないものはない」と言われる100円ショップにも、さすがにスマートウォッチはまだ存在しないのではないだろうか(3COINSでは2200円らしい!)
ケースは「空っぽなんじゃ」と一瞬疑うほど軽い。そしてよく見たら、スマートウォッチではなく「SMART BRACELET」だった。この展開、過去に佐藤記者がレポートしたものとまったく同じである! しかしメーカーは(おそらく)異なる。
ウォッチを名乗ることと、あくまでブレスレットに留めることに、どんな差があるのか筆者には正直わからない。
しかも日本語の取扱説明書には「スマートバンド」とあり、英語の取扱説明書には「smart wristband」とあった。3つ名をもつガジェット。
カラー展開はレッド・パープル・ブルー・グリーン・ブラックと豊富。筆者のものにはグリーンのシールがあった。
クリスマスツリーみたいな色だったらオモチャっぽくて嫌だなと思ったが、実際はエメラルドグリーンに近い明るい色。カジュアルなスポーツウォッチによくありそうで好感触!
大人が着けていても違和感なく、意外におしゃれ!! 広範囲に調節できるフリーサイズで、男女や年齢問わず装着できそう。
裏側には光学式センサーのようなものも確認できる。手首からいろいろな情報を取れそう。なかなか本格的で、Apple Watchみたいだ。
ただし本体はプラスチックで、振ればカラカラと音がするんじゃないかというくらい軽い。金属の重みはまったく感じられず、少々チープな印象を受けることは否定できない。
購入時は電池残量がゼロになっているので、充電するようにとある。充電ケーブルが付属していないのは許容範囲だが、差込口はいったいどこに……?
これか! そのままUSBポートに差すらしい。
充電を待つあいだ取扱説明書を読むと、スマートフォンとBluetooth接続して使うこと、専用アプリのダウンロードが必要なこと、健康管理を目的としたデバイスであることがわかった。
歩数計として使えるほか、ウォーキングの目標設定をしたり、スマートフォンに着信があると通知を受け取ったり、いろいろな機能がある。まんまApple Watchじゃん! すごい!!
・使ってみた
さっそく専用アプリをダウンロードしよう! と思ったのだが、App Storeにたどり着いた筆者の手が止まった。
ユーザーによる評価は★1がもっとも多く、平均★2.4だ。「使えない」「精度が低い」「データが消える」といったコメント多数。偏見かもしれないが、中国のデベロッパーであることもちょっと気にかかる。
しかし好奇心には勝てない。ドキドキしながらアプリをインストールすると、5~6個も連続して出てくる権限付与のポップアップにさらにビビる。よくある「広告のトラッキング」はともかくとして、位置情報、カメラ、ヘルスケア、ローカルネットワーク……
なんだか怖い……怖いよ……!
スマートウォッチなのだから、母体となるデバイスと情報共有すべきなのはわかる。なにせこの子は、スマートフォンと同期しないと現在時刻さえ表示できない仕様なのだ。
けれどスマートフォンは個人情報の宝庫。これで何か実害があっても「よく知らないアプリを安易にインストールしたのが悪いんでしょバカじゃないの自業自得」ってなる……!
筆者は最低限の権限だけを付与し、スマートウォッチもとい「SMART BRACELET」を装着した。
画面表示は意外にも鮮明。1カ所だけタッチに反応する領域があり、そこがボタンとなる。
壁紙を変更することも可能で、写真からイラストまで多彩なデザインが用意されていた。スマートフォンの写真フォルダへのアクセス権を付与すれば、自前の写真も使えそう。怖かったからやらなかったけど。
裏面のセンサーでは心拍数、血圧のほか、どうやら酸素飽和度(SpO2)を測れるっぽい。これコロナで一躍有名になったパルスオキシメータと同じ機能じゃないの!? え、え、たった400円で!?
ただしオムロンの血圧計で試したら、心拍数(脈拍)、最高血圧、最低血圧それぞれ10ポイント以上の差異が出たことは目をつぶらなくてはいけない。
カメラへのアクセスを許可すると、スマートフォンのリモートシャッターもきれる! スマートフォンに着信があると本体がブルブルと震え、日本語で相手が表示された。
少なくとも歩数計、各種計測センサー、アラーム、通知といった機能を備え、ちゃんとスマートウォッチとして振る舞っている。この時点では看板に偽りなし!
・感心したのも束の間
ただし、感心した部分を帳消しにするほど、困惑する挙動も多かった。アプリを起動するたび全画面表示される広告には、遠慮というものがまったくない。本体を買った時点ですでに客はお金を払ってるのに……。
広告を経由しないとホーム画面にさえたどり着けない仕様は、お土産店を通過せずには決して外に出られない観光地を連想させる。
睡眠の質を「deep・light・awake」で計測する機能があるようなので装着したまま寝てみたが、翌朝にはなぜか「歩数」が30歩プラスされていただけで、睡眠は記録されなかった。寝返りがダイナミックすぎたのだろうか?
さらに、健康状態を総合的に判断するらしい「健康評価」が一夜にしてFランクからAランクに爆上がりしていた。
慌てて確認すると、体脂肪率16.5%というめちゃめちゃ健康的なデータが入っている。誰のデータだ、これ。
ちなみにこのデータは、アプリを起動するたび出たり消えたりするので真相は不明だ。
アプリは日本語化されているのだが、何を意味するのか直感的にわからない項目も多く、ひとつひとつオンにしてみて確認する必要があった。たびたび表示される「アクセス権限を許可してください」が心臓に悪い。これ以上、筆者を苦しめないでくれ……!
また、それぞれの画面表示は流れ星のごとく一瞬で消えてしまうため、操作に迷っているヒマはない。極限の反射神経が試される。にもかかわらず電池は24時間はもたず、半日ほどで充電が必要になった。なんという大食い。
ほかにも気温が表示されそうな画面や、音楽が再生されそうな画面もあったのだが、最後まで使い方がわからなかった。会員登録してログインすれば機能が拡張されそうな気配もあるのだが、筆者の勇気ではもう限界である!
「どうすれば正しく動くの?」「借金返済や痩せ薬の広告うっとうしい」「位置情報は何のため?」といった疑問や不安の連続で、メンタルがゴリゴリやられる……!
・使用は自己責任で
なお、商品についての情報が少ないので完全には特定できないものの、700円から2000円くらいの価格で販売されているのをインターネットサイトで見かけた。プライズだけではなく普通に流通している商品と思われる。
機能面からいうと「スマートウォッチっぽいオモチャ」ではなく、たしかにスマートウォッチだった。少なくとも時計や歩数計としては使えそうだし、アプリで記録の管理も可能。
しかし、挙動の正確さという点ではかなり不安が残る。よく知らない海外製アプリで多くの情報を共有するというのも心をざわつかせる。
もし子どもさんが欲しがったら「スマートフォンと連携しないと何もできない」という点を忘れないで欲しい。現在時刻さえスマートフォンから取得しており、手動では初期設定もできない。単体では、それこそ用をなさないオモチャと化すだろう。
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:FitPro(iOS)