BuzzFeedが、同社のファーストパーティデータサービスプロダクトである「ライトハウス(Lighthouse)」を、英国、カナダ、オーストラリア、ラテンアメリカに展開しようとしている。
ライトハウスは、広告主がBuzzFeedのファーストパーティオーディエンスデータにアクセスし、消費者インサイトの把握やサイト上での広告ターゲティングを行えるようにする製品だ。BuzzFeedはこの製品を各国版のサイトで展開する予定で、英国ではマンチェスターを拠点とするエージェンシーのウート!メディア(w00t! Media)を通じて、「コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)」の英国版でこの製品をライセンス提供する。
「8月上旬に、BuzzFeedのチームが広告主と協議を開始し、最初の展開が始まった。9月1日からは、ライトハウスのツールを使ったキャンペーンをBuzzFeed傘下のサイトで実施できるようにする計画だ」と、BuzzFeedで企業および国際販売担当シニアバイスプレジデントを務めるジョシュ・フロムソン氏は述べている。
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BuzzFeedのCEO、ジョナ・ペレッティ氏は、5月に行われた第1四半期決算説明会で、今後注力する3つの分野を挙げていたが、ライトハウスはそのうちのひとつだった。同社は2021年3月に米国でこのデータサービス製品をリリースし、2022年4月にはコンプレックス・ネットワークスのオーディエンスデータをこの製品に統合している。
広報担当者によれば、米国ではBuzzFeedの全広告取引の50~75%がライトハウスを使用したものだという。
ライトハウスの詳細
- 広告主はBuzzFeedのファーストパーティオーディエンスデータにアクセスできる
- 記事をクリックした読者が、記事のカテゴリーに基づいてグループ化され、ターゲティング用に匿名化される
- 現在提供しているオーディエンスセグメントは、「スパイシーな食べ物好き」、「スニーカーマニア」、「ペットオーナー」、「Amazonプライム読者」など、1000種類を超えている
- 目標:9月からは、ライトハウスのツールを使った広告キャンペーンで特定のオーディエンスセグメントにターゲティングできるようにする
1000種類を超えるオーディエンスセグメント
では、ライトハウスはどのような仕組みなのだろうか。たとえば、ある読者が家庭用品のショッピング記事をいくつかクリックしたとしよう。すると、そのデータがサイトのポートフォリオ全体でグループ化され、広告ターゲティング用に匿名化される。このようにして作成されたオーディエンスセグメントが、ライトハウスで利用できるようになるというわけだ。実際、Amazonのプライムデーには、BuzzFeedのショッピング記事によって複数の新たなオーディエンスセグメントが作られ、広告主に提供された。「Amazonプライム読者(BuzzFeed傘下のサイトでAmazonプライムに関する記事を読んだ630万人の人々)」というセグメントもそのひとつだ。
ライトハウスには現在、「スパイシーな食べ物好き」、「スニーカーマニア」、「ペットオーナー」など、1000種類を超えるオーディエンスセグメントが存在する。
広告主はこのデータを使うことで、特定のオーディエンスを詳しく分析したり、キャンペーンの配信やオーディエンスのセグメンテーションに役立つ情報を入手したりして、キャンペーンのパフォーマンスを向上できるとBuzzFeedは説明している。また、ライトハウスはメディアプランに統合されており、ターゲットにしたセグメントがキャンペーンの各項目に適用されると、フロムソン氏は述べている。
「プライバシー規制に対処する上で有効」
「(BuzzFeedは)米国外でもかなりのプレゼンスを築いていると見られており、今回の件はビジネス上の賢明な動きだと思う」と語るのは、メディアバイイングエージェンシーのメディア・トゥ・インタラクティブ(Media Two Interactive)のCEO、セス・ハーグレイブ氏だ。「ファーストパーティデータの新たなウォールドガーデンの構築に関する業界全体の動向という点で、この動きは重要な意味を持っている」。
BuzzFeedによれば、同社はラテンアメリカで7600万人、英国で2000万人、カナダで1300万人、オーストラリアで950万人の月間ユニックユーザーを獲得している。また、米国では、BuzzFeedエンターテインメント(BuzzFeed Entertainment)、BuzzFeedニュース(BuzzFeed News)、テイスティ(Tasty)、ハフポスト(HuffPost)、およびコンプレックス・ネットワークスを通じて、合わせて1億5800万人分のオーディエンスデータをライトハウスに取り込んでいるという。
自社のポートフォリオでオーディエンスデータを蓄積し、世界各地のオーディエンスにリーチできるファーストパーティデータオプションを提供するというパブリッシャーの動きは、「バイヤーの我々にとって、(GDPRなど)各国の複雑なプライバシー規制の一部に対処する上で役立つものだ」と、ハーグレイブ氏は話す。
「そのおかげで、我々は昨今の状況を乗り越えようとしている広告主に、本当の意味で安全な場所を提供できる。なかでも私が大きなメリットを見いだしているのは、提供される規模の大きさと、それがファーストパーティデータであるという事実だ」と、ハーブグレイブ氏は付け加えた。
このツール提供は「諸刃の剣」と指摘も
ライトハウスの世界展開のほとんどは、コンプレックス・ネットワークスの買収を通じてBuzzFeedに加わったフロムソン氏を中心に行われている。同氏は企業やエージェンシーの関係を統括するとともに、米国外の市場でBuzzFeedの販売、コンテンツ、広告主の責任者と連携して、米国外の業務を効率化している。
たとえばカナダでは、コンプレックス・カナダ(Complex Canada)の運営をBuzzFeedカナダ(BuzzFeed Canada)の下で社内に移行し、コンプレックス・ネットワークスのファースト・ウィ・フィースト(First We Feast)とBuzzFeedのテイスティから獲得した「食通」の読者の情報を統合して、データとターゲティング機能を提供していると、フロムソン氏は述べた。
ただし、BuzzFeedなどのパブリッシャーによるファーストパーティデータツールの提供は「諸刃の剣」だと、ハーグレイブ氏は指摘する。なぜなら、BuzzFeedが「新たなウォールドガーデンを構築している」ことになるからだ。
「バイヤーとしては、ウォールドガーデンを取り壊し、さまざまなデータセット全体を可視化できるようにしたい。規模が我々にとって極めて重要になるのはそのためだ」と、ハーグレイブ氏は言う。「サードパーティCookieへの依存度が下がっている今、ファーストパーティデータとコンテキストオプションの両方を組み合わせられるものが、バイサイドから見て確実性の高い製品であり、非常に安全な戦略となる」。
[原文:BuzzFeed expands first-party data product Lighthouse to international markets]
Sara Guaglione(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:黒田千聖)