こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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玩具や化粧品などの低価格商品を集めた日本の小売から着想を得た、メイソウ(Miniso)やダイソー(Daiso)などの1ドルショップ(100円ショップとも呼ばれる)が、米国全体でプレゼンスを拡大しようとしている。
中国の広州を拠点とし、「日本から発想を得た」ライフスタイル小売業者を自称するメイソウは、6月にニューヨークのクイーンズに店舗を開設した。これは、2月にニューヨークのソーホーに米国の旗艦店を開設してから、わずか数カ月後のことである。一方で、日本を拠点とする1ドルショップのダイソーも、ニューヨークとネバダに新店舗を開設し、米国での足がかりを広げている。
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インフレが強まり、不動産の空きが増えるなか、バラエティ・ディスカウントストアというコンセプトが米国に進出する絶好のタイミングであると専門家は述べている。たとえば、センター・フォー・アン・アーバン・フューチャー(Center for an Urban Future)によると、ニューヨーク市のチェーン小売店舗の数は2021年に2.7%増加し、2020年の年末の数値から考えると比較的回復は遅い。一方、労働省(Labor Department)によると、6月の消費者物価は、1年前よりも9.1%上昇した。
「価値提案」が鍵に
メイソウの海外事業のジェネラルマネージャーを務めるベラ・ツー氏は、同社が全国でより多くの店舗を開設することによって「収益の優れた業績を達成」することを望んでいると語る。同社は現在米国に50店舗以上を構えており、台所用品からスキンケア用品まで幅広い品揃えを、おもに西海岸で販売している。同社は、近いうちに東海岸を中心に20近店舗近くの新規出店を計画しているという。
ツー氏はメールのコメントで次のように語っている。「消費者は、インフレの激しい状況では、価値を求める傾向があることを、歴史が繰り返し我々に教えてくれたが、これはメイソウにとって絶好の機会だ。メイソウの中国での自社のサプライチェーン能力を活用し、米国における価値提案を強化していく」。
メイソウは7月にシカゴにも店舗をオープンしたばかりで、米国の東部や中部への拡大も計画している。一方でダイソーも同じ月にワシントンのケントに新しい店舗を開設した。ダイソーは現在、米国全体に80店舗以上を持ち、24カ国・地域で2272店舗以上を有している。
多様な人口層と強固な消費環境を持つ米国市場
米国の1ドルショップと同様、ダイソーやメイソウなどの店舗は美容品から家庭整理用品に至るまで、幅広い商品を低価格で販売している。たとえばダイソーは約1.99ドル(約269円)という低価格で商品を販売している。一方でメイソウは10ドル(約1350円)以下の価格に特化しており、商品の95%が10ドル以下のものだ。
ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストであるブラッド・ジャシンスキー氏は、多様な人口層と強固な消費環境を持つ米国市場は、海外を拠点とする多くの小売業者にとって魅力的なターゲットであると語っている。日本のディスカウントストアも、米国の買い物客の目を引くような宝探しのショッピング体験を提供することができると、同氏は語る。
「多くの小売業者にとって、特定の市場での成長には限界がある。特に、成長が鈍化している、またはほかの国ほど多くの小売の機会がない地域に属している場合にはその傾向が強い」と同氏は述べている。
空き店舗の増加
メイソウとダイソーは米国での事業を積極的に拡大しているのに対して、ほかのアジアの小売業者は縮小してきた。日本の小売業者である無印良品(Muji)の米国部門は2020年に連邦倒産法第11章(Chapter 11)を申請し、不採算店舗を閉鎖すると語った。無印良品は、2020年の時点で18店舗だった米国内の店舗数を、現在は約10店舗程度に縮小した。
これらのディスカウントストアの売上はeコマースよりも店舗内での購入に大きく傾いているため、店舗の適切な場所を見つけることが最大のハードルのひとつだと、ジャシンスキー氏は語る。しかし、小売の空き店舗が多いため、これらの店舗はより安価で魅力的な不動産を見つけることができる立場にあると、同氏は述べている。
「現在のところ空き店舗は非常に多く、言うなればショッピングモールがデパート用のような大きな空間を作り直すことで、これらの小売業者がそこに出店する機会が生まれる」と同氏は述べている。
アジア系メディアの増加に便乗
これらのショップは、アジア系アメリカ人の人口の増加からも恩恵を受けられる可能性がある。ピュー研究所(Pew Research Center)の2021年のレポートによれば、2000年から2019年のあいだに、米国におけるアジア系の人口は81%も増加した。
アジア系アメリカ人の人口の増加とともに、アニメやK-POPなど東アジアのメディアの消費も増えてきている。
インセンティブ管理プラットフォームのスパークプラグ(SparkPlug)の共同創設者でCEOを務めるアンドリュー・ダフィ氏は次のように述べている。「クランチロール(Crunchyroll/日本のアニメやマンガを配信する米国のストリーミング配信会社)でアニメを見る、イカゲーム(Squid Game)を観る、BTSのファンであるなど、韓国や日本のような東アジアの国々から輸出された文化の人気がますます高まっていることがわかってきた。これらは米国発祥のものよりもはるかに人気になりつつある。そのため、それと同じような小売や商品のコンセプトが興味深い共感を呼ぶと考えるのも、それほど飛躍した考えではないだろう」。
メイソウは、ほかのブランドとコラボレーションすることが多い。たとえば、同チェーンはK-POPの男性グループのBTSとLINEフレンズ(Line Friends)が共同開発したにより共同作成されたIPラインである「BT21」を販売している。また、帽子やキーチェーンといったミニオンズ(Minions)のグッズも発売してきた。これに対してダイソーは、クロミやシナモロールなどの有名なキャラクターなどサンリオ(Sanrio)をテーマにした商品を販売してきた。
ダフィ氏は、これらの小売業者が成功すれば、さらに多くの海外の小売業者が同様に米国市場へと参入する考えを持つかもしれないと語る。「差別化された商品群があり、小売のコンセプトを急速に立ち上げることができる企業が、それを行おうとしない理由は考えられない」と同氏は述べている。
[原文:Japanese-inspired discount stores Miniso and Daiso are eyeing the U.S. market]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Miniso