エスティ ローダー がトムフォードを買収か? ランバングループは美容市場に参入?【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

エスティローダーがトム・フォードを買収するなか、ランバングループは美容に注目

コングロマリットが未知の領域に飛び込むことが、未来のラグジュアリーのトレンドとなるかもしれない。

現在、控えめにいっても、ラグジュアリーそのものがきている。高級ジュエリー時計から、ラグジュアリーファッションのリセールにいたるまで、さまざまなカテゴリーが盛況で、この業界が多少なりとも不況に強いということを示している。経済全体が不安定で、ほぼあらゆることが不確かに感じられるなかで、ラグジュアリーは投資家にとってある種の安全分野としての役割を果たしているようだ。8月1週目だけでも関連する動きとして、トッズ(Tod’s)の創業者一族が、13億ドル(約1727億円)以上と評価される同社の民営化に向けて344ドル(約4万5700円)の入札を開始するといった出来事があった。

そしてもうひとつ、エスティローダー(Estée Lauder )が、ファッション部門を含むトムフォード(Tom Ford)の買収に関心を示していることを明らかにした。

このエスティローダーのニュースは、これまでは自社のレールから逸脱することのなかったファッションと美容のグループについて考えさせられるものだった。ラグジュアリーの現状とそれに伴うビジネスチャンスが、そうした企業の焦点を混乱させているのだろうか。ここで頭に浮かんだのは、ランバングループ(Lanvin Group)が、現在100%ラグジュアリーファッションに注力しているポートフォリオを拡大するという計画を最近報告したことだ。同社の次の動きに関するさらなる情報を探るうちに、かつては予想外だった動きが、いまでは想定内になることが確認された。

ランバングループの未来

8月頭、上海に拠点を置くランバン・グループの会長でCEOのジョアン・チェン氏と話をした。創業4年となるこのファッショングループは、ランバン、セントジョン(St.John)、セルジオロッシ(Sergio Rossi)、ウォルフォード(Wolford)、カルーゾ(Caruso)といった5つの伝統あるラグジュアリーブランドを所有している。SPAC(特別買収目的会社)により年内にニューヨーク証券取引所に上場し、2023年末までにブランド買収を行う計画だ。また、米国と中国での売上拡大、若い顧客層の拡大、製品カテゴリーの拡大を確実に行うことで、翌年には黒字化の達成も目指している。今月初め、同グループは2021年の収益が52%増の約3億4000万ドル(約451億7700万円)に達したと発表した。

ランバングループと最大のラグジュアリーファッションコングロマリット、すなわちLVMHやケリング(Kering)を比較しようとするのは自然なことだと思える。しかしランバンの焦点は、意図的であり独特だ。「LVMHやケリングが過去に成功した方法は、私たちがこの環境で成功する方法ではないだろう」とチェン氏は述べ、変化する世界、ファッション業界における大きな競争、サプライチェーンやデジタルマーケティングのイノベーションの急速な出現を指摘した。「私たちはマクロ(環境)、業界の動き、背後にある技術に適応し、そして非常に厳格に、みずからの道を確立しなければならない」。中国に根ざしたグローバルなグループであることだけでも、同社は異質なのだ。

その上、製品カテゴリーが重複するのではなく、互いに補完しあうブランドに注力してポートフォリオを構築していくというアプローチも少々独創的だ。若い消費者を含む買い物客の進化するライフスタイルに対応できる力もそれを推進している。注目すべきは、ウォルフォードが2020年10月にWアクティブ(W Active)と名づけたアクティブウェアを発売したことだ。

グループ内のブランドが互いに相乗効果を追求

ランバングループの唯一のフルカテゴリーのファッションブランドは、革のバッグや靴から既製服までの製品を製造するランバンである。チェン氏によると、ランバングループは5つのブランドのために6つの製造工場を運営し、そこで製品の「かなりの部分」を生産しているという。各事業は「比較的独立して」運営されており、それぞれの損益に責任を負っている。そして、それらのブランドは競合他社ではないので、相乗効果を追求する。「セントジョンはランバンのためにニットスーツを作ることができるし、セルジオロッシはランバンとセントジョンのために靴を作ることができる」と、彼女は言う。

このように、ランバングループのほかのブランドがまだ開拓していないカテゴリーに注力した企業を新たに買収することは、ポートフォリオ全体のカテゴリー拡大に容易につながる可能性がある。すべてのブランドは、たとえば新規顧客の獲得のためによりアクセスしやすい商品を導入するために、利用可能なリソースを活用することを選択できるのだ。

その点をふまえて、ランバングループは美容市場に参入する気があるのかとチェン氏に尋ねた。彼女の回答は、グループとしては開拓したいカテゴリーであり、「特にランバンにとって」たとえば「口紅」などで、このブランドを試してみたいと思っている若い顧客に対応したいと考えている、というものだった。

「しかし私たちにとって新しいカテゴリーなので、急いではいない。適切な経験とチームをきちんと備えるなどして、社内で準備をする必要がある」。

ちなみに、トムフォードがエスティローダーに買収された場合、うまくやっていくのに必要なインフラがないため、エスティローダーはファッション部門を売却するだろうというのが大方の見方だ。

ラグジュアリー分野には回復力がある

チェン氏は、ラグジュアリー分野全体の年平均成長率が6%であることを指摘し、回復力があると述べた。ランバングループは、Covidの感染拡大の後、ターゲット市場である米国と最大の市場であるヨーロッパで売上が力強く回復している。地元のセントジョンを除くブランドの売上のうち米国が15%を占め、欧州は他の4ブランドの本拠地である。

伝統あるブランドという強力な基盤があることで、チェン氏はランバングループの次のポートフォリオ追加を検討していくにあたっては、グループのネットワーク全体からの紹介を活用しながら、より「オープンマインド」 であり続けると話す。彼女の主な焦点は、ランバングループのヨーロッパの「DNA」を維持しつつ、特に若い買い物客を中心とした、新規顧客を惹きつけるカテゴリーに特化したブランドを育てることだ。同社の米国での売上を25%成長させ、現在10%にとどまっているアジア市場での売上を伸ばすことが目標である。

「アジアの顧客は、25歳や30歳になって初めてラグジュアリーなものを買いに行く際、給料の数カ月分をひとつのバッグにつぎ込んでしまう」と、彼女は言う。

中国でのビジネス拡大

ラグジュアリーファッションに特化したランバングループと同様に、その親会社である復星国際有限公司の傘下にある企業は補完関係にあり、相乗効果を中心に戦略を立てている。Covid以前は、ランバングループは限られた小売店舗を「成長するために最適な都市の最適な(グローバルな)モール」に分散させていたと、チェン氏は言う。だがこの2年以上で、中国では国内でのショッピングが活発化するにつれ、中国での店舗開設と現地ビジネスの拡大のために、復星傘下の外灘金融センター(BFC)に頼るようになった。

ランバン、ウォルフォード、カイロはすべてBFCモールに店舗を構えている。ランバングループは、パンデミックが始まって以降の出店数と現在営業している店舗数については公表していない。

また、一部のブランドの製品の生地や原材料をすべて事前に調達していることも、同グループに有利に働いている。そのため、運賃や物流費の高騰によるを「劇的で大規模な」コストアップを強いられることがなかったと、チェン氏は述べている。

他のラグジュアリー企業と同様に、ランバングループでも、オンライン・ショッピングを利用する顧客が増えている。特に、完璧にフィットするものを探す必要のない、アクセサリーのようなアイテムでその傾向が顕著だ。チェン氏によると、ロックダウン後に店舗が再開されても、「時間は贅沢品である」という考え方が同グループの買い物客に定着しているようで、多くの人がオンラインチャネルにとどまっている。

時間をかけて将来を見据える

当時は復星ファッショングループという名の下で(同社は2021年10月にリブランディングを行った)、ランバングループは2021年6月にセルジオロッシを買収した。すぐにでも買い直しをする計画にもかかわらず、チェン氏はSPACのIPO手続きを完了させることが最初のステップとして必要だと述べた。

「この取引を完了することで、私たちは(ファッション)市場で露出し、その結果、より国際的な才能を私たちにもたらし、現在のブランドの有機的な成長を促進し、将来に向けてより多くのブランドを買収することができるようになるだろう」と彼女は言う。

ランバングループがいつ6番目のブランドを買収するかは、タイミングと同時に「運」にも左右されるという。「適切なパートナーと適切なチームを見つけること、そして(そこに至る)適切なタイミングを見つけることが重要だ」と彼女は語った。「そして、私たちは時間をかけている。この業界に長期的に取り組んでいる」。少なくとも、現在のところはそのようだ。

[原文:Fashion Briefing: As Estee Lauder mulls Tom Ford, Lanvin Group eyes beauty]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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