ダイレクトメール はデジタルの「混雑」突破手段となるか:顧客の関心をとらえターゲティングや測定も可能に

DIGIDAY

在宅勤務者が増加するなか、サブスクリプション型ペット医療サービスを提供するスタートアップのファジー(Fuzzy)は、ダイレクトメールを活用して在宅勤務者へのリーチをかけ、ブランド認知度の向上を図っている。

かつてはデジタルなパフォーマンスマーケティング戦術に頼っていた数多くのブランド同様、ファジーもメディアミックスを強化している。データプライバシー規制で広告主がデータに関してできることに混乱が生じている事態を受け、ダイレクトメールのような代替的なマーケティングチャネルに目を向けている。2022年前半には、D2Cブランドのパラシュート(Parachute)も同様の動きを見せていた。

ファジーのCMO、ハーリー・バトラー氏は「まわりまわって基本に立ち返った」と話す。「マイクロターゲティング(広告)一辺倒になるのではなく、幅広いGTM(市場参入)のメッセージングと戦略に改めて焦点を絞って考えるようになっている」。

ブランドの成長に合わせた戦略

カリフォルニアを拠点とする創業6年のファジーは、半年ほど前からダイレクトメールに力を入れ始めた。2021年同時期にダイレクトメールがマーケティング費用全体に占める割合は10%だったのが、現在では35%~40%を占める。パスマティクス(Pathmatics)によると、2022年1月から6月にファジーがFacebookとインスタグラムに投じた金額は合わせて約340万ドル(約4億4200万円)で、2021年の1200万ドル(約15億6000万円)から大きく下がっている。

スタートアップのファジーはここ1年、商品開発や、会員制施策の調整、ビジネスモデルの具体的な詰めなどに注力してきた。ブランドの成長に合わせて、今度はマーケティングを通した認知度向上に目を向けている。バトラー氏によると、つまるところファジーは現在成長モードに入っており、広告費も2021年比で3倍に上るという。バトラー氏は具体的な金額は示していない。

「過去1年は、会員とのコミュニケーション戦略をしっかり立て、事業運営が円滑に進むための体制の整備に専念した」とバトラー氏は語る。

現在のファジーの戦略では、ダイレクトメール広告を月に1回のペースで送り出し、日々の広告は関心を示した相手に対するリターゲティングに絞っている。ファジーによると、ダイレクトメールは自宅で仕事をする飼い主に対する費用効率が高く、クイズやアンケート、調査などで個人情報を収集するのに有効だという。

ダイレクトメールの利点

ファジーのメディアミックスは、ダイレクトメールのほかに、インフルエンサーマーケティング、オーディオストリーミング、デジタル動画、ペイドサーチ、一部の有料ソーシャルから構成される。バトラー氏は、まもなくリニアTVとOTTの展開も始める予定だという。

マーケティングエージェンシーのコードスリー(Code3)でマーケティング責任者を務めるシャラナ・クラーク氏は、ほとんどのマーケティング計画でデジタルメディアが最も大きな金額を占める一方で、現実世界のなかで買い物客の関心をとらえ、ターゲットを絞り込み測定もできるのはダイレクトメールだと話す。

「今年後半に迫る経済の不透明感を前に、マーケターはトレンドを上昇させるためのクリエイティブな方法を模索している。ダイレクトメールは、そのために活用できるもののひとつかもしれない」とクラーク氏はメールで語った。

ポープ(Pawp)やペットデスク(PetDesk)などの企業が買い物客の注目を奪い合い、ますます混雑と競争が激化する市場で存在感の強化をはかるファジーは、今後もダイレクトメールやそのほかのチャネルを試し、完璧なメディアミックスを目指すという。

「いまは、自分たちにふさわしい材料が揃っているとても重要な時期なのだと思う」とバトラー氏は語る。「この1年はファジーとそのビジネスモデルをより多くの人に知ってもらうためのGTM戦略が大きな優先事項となっている」。

[原文:How a startup pet health company is using direct mail to break through the noisy digital landscape

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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