配送アプリのドアダッシュ、コスメの取り扱いを開始:景気後退に備えサービスを多様化

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配送サービスであるドアダッシュ(DoorDash)は自社のマーケットプレイスにセフォラ(Sephora)を追加する。これにより、ドアダッシュは、新しい製品カテゴリーへの全体的な拡張のなかで、高級美容品にはじめて進出することになる。

このパートナーシップは11月9日に発表されたもので、ドアダッシュの顧客は同社のアプリで直接セフォラの商品を購入し、1時間以内に近くの店舗で商品を受け取ることができる。ドアダッシュはこの販売開始を目立たせるため、「美容品」カテゴリーを新しく立ち上げた。

これは、ドアダッシュが、レストランを中心とした設立当初の業務の枠を超えて成長することをめざす、総合的な業務推進の一環だ。同社は10月末にトラクターサプライ(Tractor Supply)を自社アプリの「農場」カテゴリーに加えた。また9月には、最初のスポーツパートナーとしてディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)を招き入れた。

「当社は、さまざまな垂直市場のすべてを通して、『利便性』が前に押し出されるトレンドを目にしており、美容品カテゴリーへの需要を感じている」と、ドアダッシュのパートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるシャンナ・プリーベ氏は語る。

高速配送への関心の高まり

この拡大は、競合他社で食料品配送によってブランドを築き上げたインスタカート(Instacart)が、同様に家具や家電機器のような食品以外のカテゴリーに拡大しているのを受けたものだ。全体として、消費者のあいだでは高速配送への関心が高まっている。調査会社のテックナビオ(Technavio)は10月、スマートフォンの普及と利便性により、即日配達の市場シェアは2026年まで21.4%のCAGRで成長すると予測している。

プリーベ氏は、セフォラへの注文が、アイテムを使い切ったあとですぐに補充を望む人、旅行をする人、ユニークな贈り物をすることを望む人から来ることを期待していると語る。

「これははじめから計画の一部だった」と、同氏は拡大について語る。「地元で買い物ができる商品なら、数分で顧客の自宅まで届けたいと考えている。数時間でも、数日でもなく、数分だ」。

新しいカテゴリー

同社がレストラン以外の分野に業務を拡大しはじめたのは4年ほど前だと、プリーベ氏は語る。これには、2020年8月に食料品への参入や、今年3月のオフィスデポ(Office Depot)、昨秋のベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed, Bath and Beyond)のような専門小売店への進出も含まれる。

2021年12月の時点で、ドアダッシュの2500万人の顧客のうち約14%は、新たに追加されたレストラン以外のカテゴリーで買い物をしている。

プリーベ氏は次のように述べている。「新しい垂直市場は、当社の中核ビジネスよりも速く成長している。そのため、当社はその分野に多くの投資を行い、顧客から良い結果を得ている」。

eコマースプラットフォームのインフォシス・エキノックス(Infosys Equinox)のCEOを務めるアミット・カレイ氏は、消費者は、特にパンデミック以降、迅速で効率的な配達を期待するようになってきたと語る。オンラインショッピングのブームの結果、多くの顧客は商品がその日のうち、または最低でも2日以内に配達されることを求めるようになった。

同氏は次のように述べている。「消費者のデジタルに対する態度は根底から変化した。その結果として消費者は、店舗で慣れてきたものと同じ体験、同じ利便性、同じレベルのサービスを、期待するだけではなく、要求するようになった」。

新規顧客の獲得

これはドアダッシュにとって、新しい顧客を引き入れる機会となる。CFOのプラバー・アダーカー氏は11月3日に行われた第3四半期の決算発表で、同社が新しいカテゴリーを拡大するのは、ビジネスの規模を拡大するためだと語る。特に、現在はドアダッシュをレストランのために使用していない新しい顧客を引き入れることを目的としている。

同氏は次のように述べている。「顧客は、花、便利グッズ、食料品、お酒などを手に入れることができるようになった。これにより、実際に新しいカテゴリーをドアダッシュで試してみるために訪問する顧客の数は増え続けている。当社が米国の人々への浸透を拡大していくなかで、我々の成長の次の段階が築かれつつある」。

ドアダッシュはダッシュパス(DashPass)も推進している。これは月額9.99ドル(約1390円)のメンバーシッププランで、配送料が不要になり、クーポンやクレジットなどの特典を受けられる。

コマースエクスペリエンスプラットフォームのノスト(Nosto)の北米担当ジェネラルマネージャーを務めるジャン・ソーレンソン氏は、景気後退の可能性を見据えた現在、ドアダッシュのようなアプリはさらに多様化していく可能性があると、米モダンリテールに語った。これによって同社は、消費者が高価なレストランの注文をためらうようになった場合でも、需要に供給を合わせることができる。

同氏は次のように述べている。「景気後退の可能性を考えると、今日の多くの配送アプリは、ウーバー(Uber)がCovidのあとで直面したように、需要回復時にドライバー数を迅速に増やせなかった、という状況を避けたいと考えている。供給側は、忙しい状態を維持しておく方がいいのだ」。

セフォラの魅力

ドアダッシュは10月中旬、セフォラの配送を限定的に開始した。プリーベ氏は注文数について明かさなかったが、初期の需要は堅調だったと語る。もっとも多く売れた商品には、ジ・オーディナリー(The Ordinary)のグリコール酸、ビューティーブレンダー(Beauty Blenders)、オラプレックス(Olaplex)のヘアケア商品、シャーロットティルブリー(Charlotte Tilbury)のピロートーク(Pillow Talk)リップスティックなど、一部に熱狂的なファンを持つブランドが含まれる。

一方、セフォラにとっては、ドアダッシュで販売することにより、より多くの顧客を獲得できるかもしれない。ドアダッシュのマーケットプレイスでは、セフォラで販売している340の美容品ブランドのいずれかを検索した顧客が、最終的に注文を行う可能性があるということだ。

「多くの小売パートナーがドアダッシュでの販売に期待している。その理由は、根本から異なる顧客層にアクセスできることだと考えている」と、プリーベ氏は述べている。

セフォラの広報担当者は、現在どれだけの即日配達注文を受けているか、または、即日配達サービスを利用する顧客の割合はどの程度なのかについて、言及を避けた。しかし、同社は選択肢を増やし続けている。2020年9月にはインスタカートと提携し、2021年11月には独自の即日配達サービスを立ち上げた。2022年3月にはシップト(Shipt)のマーケットプレイスに参加し、
今秋には49ドル(約6810円)の年間サブスクリプションで無制限の即日配達を行うことを発表した。

セフォラのeコマース担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるナディン・グラハム氏は、ドアダッシュとのパートナーシップが、「使いやすさと利便性を追求する継続的な進化のなかで、自然な次のステップ」だと、ニュースリリースで語った。

インフォシス・エキノックスのカレイ氏は、ドアダッシュのようなアプリと提携することで、大手小売業者が全国を網羅する際の、コストが高かったり面倒だったりするラストマイル配送に関する問題を解決することができると語る。アプリや、社内の物流プラン、または両方が混在する場合でも、物流コストの圧力に対処する方法として、小売拠点からの即日配達を実現する方法を見つけようとする小売業者が増えて流だろうと、同氏は予測している。

「どの小売業者もそれを採用する段階にある」と、同氏は述べている。

[原文:DoorDash adds Sephora in push to diversify quick-delivery offerings]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via DoorDash

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