ある場所で耳にできる音にはそこにしかない特徴があり、風景 = ランドスケープと同様に、音にも風景に似た固有性や類型、つまりは音風景 = サウンドスケープが存在する。これがカナダの作曲家マリー・シェーファーによって提唱されたサウンドスケープの考え方です。
実際、少し注意して聞いてみるだけで、似たような森であっても昆虫や動物の分布といった微妙な違いによって耳にすることができる音に多様な変化が生じるのがわかります。風の強さや木の高さによって枝葉のざわめきが、水辺があるかないかでその深みが変わり、傾ける耳をもっている人を楽しませてくれるのです。
先日、The Vergeで、そうした世界中のサウンドスケープを専門的に収録してアーカイブしているサイト「Earth.fm」が紹介されているのを発見して以来、作業中にヘビーローテーションで聞くようになりました。
Earth.fmでは世界中の音を地図上から選択して、プレイリストにして楽しむことができます。たとえばこちらは、ウクライナのハルキウ州、Dvorichanskyi 国立公園内で収録された音です。石灰岩を中心にした、高い木が存在しない開放的なステップに鳥の声が広がっているのが聞こえてきます。
ずっと同じ鳥の音かと思っていると、途中で鴨らしき声が通過しますし、マイクにとまる虫の音も時折します。
Earth.fmには世界中の森を中心としたサウンドスケープが収録されており、気に入ったものをプレイリストにして連続して聞くこともできます。デンマークの森からブラジルの熱帯雨林まで、こだまするスウェーデンの烏の声を聞いたあとはエチオピアの湖の夜の音を聞くといった具合にカスタマイズできます。
日本からは長野と、益子の音しか登録されていないのですが、カエルの声などをきいているといかにも日本のサウンドスケープになっていて心が落ち着きます。ぜひ季節や場所が違う、もっと多くの音が登録されるといいですね。
FAQをみていると、音の収録は地域について深い理解をもっていて、科学的なアプローチを重視しているアーティストに厳選しているそうです。こうした運営方法にも好感がもてます。
サイトは無料で利用できますが、それぞれのサウンドスケープの横には寄付できる場所が提案されていますので、気に入った音を発見するたびに貢献するのもいいでしょう。
リモートワークが多くなったいま、部屋にいながらにして世界中の環境音に囲まれる贅沢を楽しんでみてください。