パンデミック発生から2年以上が経過し、美容ブランドはD2Cサイトやオムニチャネル機能の強化を推進し続けている。eコマース領域のテック企業であるOSFが今月公開したレポート「2022年オムニチャネル小売指数」で明らかになった。
多くのブランドがパンデミック発生時からD2Cサイトのへの投資を増やしており、その後はオンラインで購入した商品の店舗での受け取りや、購買支援ツール、検索の高度化といったサイト機能を拡充していると同レポートは言及する。このレポートはラッシュ(Lush)、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)、セフォラ(Sephora)、クリニーク(Clinique)、キールズ(Kiehl’s)など、幅広い分野のブランドや小売企業のD2Cサイトを調査したものだ。
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現在、さまざまな分野のブランドの84%がD2Cサイト上で店舗受け取りサービス(BOPIS)を提供している。この数字はパンデミックによって「大幅に増加」し、もはや必要最低限のサービスになったと、同レポートは指摘する。2016年時点でこのサービスを提供していたブランドがわずか33%だったことを考えると、劇的な増加といえるだろう。
たとえばラッシュは、店舗受け取りをチェックアウトページにて選択することができる。顧客はD2Cサイトのチェックアウトページから直接、デリバリーサービス「ドアダッシュ(Doordash)」で当日受け取りを申し込める仕組みになっている。この機能はさまざまなブランドのサイトで定着しつつある。
「顧客が購入したいと思う場所と方法で接触することは、ラッシュが常に重点を置いてきたことだ。COVID前から提供していた店舗受け取りのオプションは、必要なものをオンラインで探して購入し、都合の良いときに受け取る便利さが顧客に支持され、いまではすっかり不可欠な機能として浸透した」と、ラッシュの北米担当ブランド・ディレクターであるウェンディ・クボタ氏は語る。
パンデミックの際に急増したカーブサイド・ピックアップ(店舗の駐車場で商品を受け取るサービス)は現在、調査対象であるブランドや小売企業の62%が提供している。さらに96%のブランドが、店舗内での返品を受け付けている。オンラインで注文した商品を受け取るための専用スペースを実店舗の中に設けているブランドは46%に上る。
全体的に、美容業界は小売カテゴリーの他業界と比べると、オムニチャネルへの対応に時間を要した。レポートによると、ベストプラクティスの採用において、美容業界は14業種中8位、全体のスコアは60%だった。最も高いパフォーマンスを発揮したのはオフィス&電気機器業界(70%)で、百貨店業界(66%)がそれに続く。
しかし、オムニチャネル機能のなかには、まだ美容ブランドのあいだで広く普及していないものもある。調査した美容ブランドのサイトのなかで、注文の中で店舗受け取りと自宅配送を組み合わせることができるのは29%だった。調査対象だった全カテゴリーのブランドでは57%がこのオプションを提供していることを鑑みると、美容ブランドでの普及率は低いと言わざるを得ない。最寄りの実店舗の在庫を検索できる機能も、29%の美容ブランドしか提供していない。
「パンデミック以前にも、消費者は小売業者にBOPISの提供を期待していたが、昨今はその気運がますます高まっている。しかしBOPISの提供は、単なるトランザクションの問題ではない。顧客に喜んでもらいブランドへのロイヤルティを高めてもらうため、どのようなコミュニケーションをとり、顧客サービスを提供し、顧客単価を上げるのかという、顧客体験全体にかかわることなのだ」と、OSFのCEOであるジェラルド・ザトバニー氏は語る。
米国の成人の53%(2022年)が、実店舗での買い物に戻ることを快くとらえており、ブランドは最寄りの店舗を探して在庫を確認できるオプションなど、モバイルを用いたオムニチャネル機能を強化中だ。
「在庫確認やエンドレスアイル(実店舗で品切れしている商品をECサイトで注文できるサービス)といったオムニチャネル機能は、まだ広く採用されてはいない。しかし顧客はこれらの機能を強く求め、期待を寄せている」とザトバニーは語る。
[原文:Buy-online, pick-up in-store now ‘table stakes’ as brands grow omnichannel capabilities]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)