カンヌライオンズ でAppleとAmazonが広告業界に攻勢:巨大テック企業の影響力はますます増大

DIGIDAY

2022年6月20日、注目のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが公式にキックオフを迎えるが、世界経済がCOVID-19のパンデミックによる大打撃を受けて以降初めての対面での開催に、広告業界の期待は高まっている。

歴史あるDNAの中にクリエイティビティを受け継ぐこのフェスティバルは毎年4日間にわたって開催されるが、長年見てきた関係者であれば、近年はFacebookやYouTubeといった有名企業が定期的に登場しており、マーケティングのメッカであるこのイベントでのデジタル企業の影響がますます拡大していることに気づくだろう。

だが2022年の今回は、業界でもっとも威力のある2つの名前がいちだんと大きな存在感を放つことになる。AmazonとAppleだ。

Appleの「ステルス」活動で隠密の策略が活発化

iPhoneメーカーである同社は秘密主義で悪名高く、ここ数年は広告業界の多くの企業、とりわけiOS上での広告活動を行ってきた企業が頼りにしてきたデータ信号が徐々に浸食され、多くの憤慨を招くもととなっている。

Apple首脳はサービス部門の再編を検討していると報じられているが、最新の決算では同社サービス部門の純収益は約200億ドル(約2兆6000億円)で、「史上最高」を記録している。インサイダー誌によると、現在は長年経営幹部を務めるエディー・キュー氏の直属で、広告担当バイスプレジデントであるトッド・テレシ氏が責任者を務める今回の再編により、広告事業がカギを握る重要な基盤となるという。

同社は(一方的に発表をする準備が整うまでは)プライバシーを優先させることで知られるが、別の情報筋がDIGIDAYに語ったところによると、Appleの広告担当幹部はこれまでもこうしたフェスティバルに常に姿を見せていたことから、2022年のカンヌライオンズにおいても取り組みを強化しているものと思われる。

「Appleは自らのホスティングにおいても決して存在感を示さない」。ある情報元は、Appleと自身の会社との信頼関係を理由に匿名を条件として、そう話してくれた。「彼らはたいていの場合名前を出さないが、カンヌの場合では自分たちのロケーションで人と会っている」のだという。

これらの会談がどういうものだったのか、DIGIDAYから質問したところ、すべての関係者は口を閉ざしたままだった(これがAppleの力だ)。最近、WWDC 2022(世界開発者会議2022)において、キャンペーン測定ツールSKAdNetwork 4.0の最新バージョン(2022年後半にリリース予定)が公開されたが、その情報提供が技術面に非常に詳しい一部の人にしか理解できないようなやり方で行われていたことを考えると、このような対話がいっそう加速しそうだ。

将来構想の種?

また、2023年にApple TVで始まるメジャーリーグサッカー(MLS)の独占的ストリーミング配信の権利など、最近発表された消費者向けサービスにおける広告提供に係るオプションを導入する可能性についても、憶測を呼んでいる。

一方、別の情報筋は、Appleが現在募集しているAd Platforms職と呼ばれるポジションの増加は、同社が広告業界にどのような計画を描いているかを示す先触れなのではないかと指摘している。

Appleは、広告事業(主にApp StoreとApple Newsの検索広告)による収入を特に明らかにはしていない。もっとも、アナリストレポート「インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)」の予測アナリストであるピーター・ニューマン氏がDIGIDAYに語ったところによると、同社は広告会社として業界で上位5社にはいるそうだ。

同氏は、「我々の推定では、2022年のAppleの広告収入は41億4000万ドル(約5400億円)で、米国のデジタル広告の1.7%。広告市場全体の1.7%と言い換えてもいいだろう」と述べ、これは動画配信サービスHuluとほぼ「拮抗」していると付け加えた。

Amazonは広告業界における支配力を強調

一方のAmazonは、FacebookとGoogleについで米国市場で第3位の広告企業だが、2022年のカンヌライオンズではよりオープンなマーケティング活動を展開しているようだ。Amazon Port、ライブストリーミング配信プラットフォームTwitchでのゲーマーのフォローやストリーミング製品を表に打ち出したイベントのほか、もちろん有名グループを招いてのロックコンサートも提供している。

2021年11月のインサイダーインテリジェンスの予測によると、Amazonは2110億ドル(約27兆4500億円)の米国広告市場のうち11.6%を占めており、2022年には13.3%にまで伸びる勢いだ。対するGoogleとFacebookは、2022年はそれぞれ27.7%と24.2%と見込まれている。最新の予測では、これら3社の合計で、2022年の米国における広告費の63.1%を占めることになるという。

また、複数の関係者が、2021年100億ドル(約1兆3000億円)の広告収入を得た後にデジタル広告事業を手がけるザンダー(Xandr)を買収したばかりのマイクロソフトアドバタイジング(Microsoft Advertising)が、今後広告主のメディアプランで注目されるのではないかとも指摘している。

ニューマン氏によれば、マイクロソフトは広告分野で市場シェア3.7%を有する第4位の企業で、その大部分はLinkedInと検索エンジンBing Searchからもたらされているが、ザンダーが加わることで既存の広告主にとっては一層魅力的なものになるだろうと語る。「ザンダーの加入によって、効率性があがってアウトプットが改善し、市場での運用も良くなるだろうが、必ずしも収益の増加につながるとは限らない」と同氏は話している。

ニューマン氏は、ゲームソフトウェア会社アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の収益をマイクロソフトの財源に参入するという現在保留中の懸案についてコメントし、「私たちはアクティビジョン・ブリザード傘下のゲーム制作会社キング(King)に注目し、広告収入は3億8700万ドル(約503億円)になると予測している。広告はますます同社の財源の一部として拡大するだろう」と付け加えた。

[原文:Big Tech will court adland during Cannes’ comeback week with Apple and Amazon upping the ante

(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)

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