ラブポップ は、グリーティングカード業界の Apple か?:高価格&厳選展示でも売れる理由

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3Dグリーティングカード企業のラブポップ(Lovepop)は、2022年の成長に向けて自社所有の実店舗での販売に注力しており、ニューヨークのグランドセントラル駅内の店舗を皮切りに、年内に3店舗の新規出店を予定している。

ラブポップは過去2年間に、ほかの6店舗をボストン、カリフォルニア、フロリダに開設し、2022年には自社保有の実店舗の収益を増やすと予告していた。同社の拡大は、ペーパーソース(Paper Source)やパピルス(Papyrus)などほかのグリーティングカード企業が、それぞれ破産宣告店舗の閉鎖を行い、グローバルインダストリーアナリスト(Global Industry Analysts, Inc.)が、全世界のグリーティングカード市場が縮小していくと予測したさなかで行われたものだ。

ラブポップは成長のため、人通りの多い場所に店舗を構え、マーチャンダイズが乱雑でなく、厳選されたものにすることに注力している。同社の共同創設者でCEOを務めるウォンビー・ローズ氏は、同社のD2Cウェブサイトが「いつでも当社の最大のチャネルであり続ける」と考えているが、自社保有の実店舗は同社にとって、もっとも急成長しているチャネルだ。

積極的な実店舗への投資

ラブポップは2014年に造船技師のローズ氏とジョン・ワイズ氏によって創設され、レーザー切断技術を使用して、同ブランドの精緻な3Dデザインを作り上げた。ビジネスリアリティ番組「シャークタンク(Shark Tank)」への出演とふたつのVC資金調達ラウンド、2018年のシリーズAで1250万ドル(約14億9000万円)と、2019年のフォローオンラウンドで1010万ドル(約12億円)により、同社は多くの同業他社が閉店を行っている時期に、実店舗に積極的な投資を行うことができた。

「当社は、可視性の観点と規模の観点の両方について、店舗が適切な拠点であることを心がけている。現在、当社は常に迅速に行動する準備が整っている」と、ローズ氏は述べる。

ラブポップは、旅行者と地元住民の両方の通行量が多い地域に小売店舗を開設しようとしている。同社はディズニーの敷地にふたつの店舗があり、ひとつはカリフォルニア州アナハイムのダウンタウン・ディズニー・ディストリクト(Downtown Disney District)に、もうひとつはフロリダのディズニースプリングス(Disney Springs)にあり、2020年に開設された。同社はボストンのハーバードスクエア(Harvard Square)にも店舗があり、ここはかつて競合他社のパピルスの店舗があった

「当社は、移動、買い物、商業活動、旅行が混ざった場所で多くの成功をみてきた」とローズ氏。「当社は、多くの異なる種類の顧客の目に広く留まる場所を見つけようと試みた」。

独自のディスプレイと価格設定

ラブポップの店舗では、従来の売り場や店舗のようにカードを閉じた形式ではなく、セレクトしたカードをオープンにしてポップアップで展示している。そのため、同社の棚に展示されている商品の数は少ない。たとえば、従来のグリーティングカードの展示通路なら50種類が展示されているのに対し、この店舗で展示されるカードは10種類程度しかない。同社のマーチャンダイジングディスプレイは、おそらくホールマーク(Hallmark)の店舗よりもAppleの店舗を見ならって白く塗られており、カードの色だけが「ポップする(飛び出て見える)」ようにデザインされている。カードは通路ではなく、スタンドに陳列してあるため、店内はより開放的だ。

ラブポップのカードは安価ではない。同ブランドのもっともベーシックなモデルは13ドル(約1550円)で、さらに精巧なペーパーブーケは最高39ドル(約4600円)に達する。しかしローズ氏は、同社のチームはこれらの品揃えはカードであると同時にギフトでもあり、さまざまな商品を異なる価格帯で揃えることにより、広範な層の消費者に販売できると考えていると述べている。

ラブポップの3Dグリーティングカード

ラブポップはこの点で、グリーティングカード業界を揺さぶっている新しい消費者層のあいだで有利な立場にある。グリーティングカード協会(Greeting Card Association)によれば、ミレニアル世代は2015年にグリーティングカードへの消費でベビーブーマー世代を超えた。合計枚数では依然としてベビーブーマー世帯のほうが多くのカードを購入しているが、ミレニアル世代のほうが多くの金額を消費しており、オーダーメイドの手作りカードを好む傾向がある。

グリーティングカード協会のPR委員会の議長を務めるデイブ・フィップス氏は次のように述べている。「グリーティングカードにおいて、買い物客がもっとも重視するのは価格ではないだろう。カードが美しく精緻なものなら、コストは重要ではないという状況は普通のものだ」。

小売業者とパートナーシップ

ラブポップはD2Cサイトとして操業を開始し、現在でも同ブランドの売上をもっとも大きく推進しているのはD2Cチャネルだ。同社の総収益は2020年に前年比で44%増加した。このデジタルへの特化は、同社がほかのグリーティングカード企業から抜きん出るために効果的だった。

しかし実店舗は、特にポップアップや手触りの要素を持つグリーティングカードにおいて、重要なチャネルとなる可能性がある。

フィップス氏は次のように述べている。「小売店の影響は大きく、カードのカバーを見て1回、開いてもう1回のインパクトを与えることができる。ほかの多くのカテゴリーでの買い物は単に面倒な雑用で、リストにある商品を買ってくるだけだ。しかしグリーティングカードは買い物自体が楽しいものだ」。

ラブポップは自社保有の小売店を補完するため、数百の小売業者とパートナーシップを結び、数千の店舗で販売を行っている。同ブランドのもっとも大きなパートナーとして、ウォルマート(Walmart)、コールズ(Kohl’s)、バーンズ・アンド・ノーブル(Barnes and Noble)が挙げられる。しかし、ラブポップはローカルのギフトショップや薬局とも提携している。ラブポップの顧客の約50%を占めている、直前になってギフトを購入する人たちにとって、これらの店舗は特に重要なものだ。

ローズ氏は次のように述べている。「顧客は自分に適した場所と時期に、ラブポップで買い物をしようと考えるだろう。当社保有の店舗とパートナーの店舗の両方における実店舗の戦略は、ラブポップの顧客のエクスペリエンスにおいて基本的な要素となると確信している」。

[原文:Why greeting card startup Lovepop is opening more stores in 2022]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Lovepop

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