TikTok 広告で成功するエージェンシー、立役者の仕事ぶりに迫る

DIGIDAY

2020年、TikTokは「広告を作るのではなく、TikTok動画を作る」というスローガンを掲げ、マーケターや広告主に課題を叩きつけた。

洗練されたテレビコマーシャルに慣れている業界にとって、TikTokが持つ「垂直方向、瞬間瞬間を捉えたモバイル動画」という性質は慣れないものであり、その変化に適応するため、業界は誰かに丁寧な教えを請う必要があった。

そこに颯爽と登場したのがクリストル・ワットラー氏である。

「この分野のスダンダードを示してくれる」

ワットラー氏はTikTokの北米クリエイティブエージェンシー・パートナーシップ部門(Creative Agency Partnerships:以下CAP)を率いる。これはクリエイティブエージェンシーとそのクライアントが同プラットフォームの仕組みをよりよく理解できるようにするためのプラットフォームとして昨年夏に立ち上げられたものである。ソーシャルメディアの寵児としてTikTokが勢いを増す中、彼女の部門はますます重要性を増している。

40歳のニューヨーク出身のワットラー氏は、彼女と一緒に仕事をしたことのある人たちから、素晴らしいネットワーカーであり努力家であると評されており、これらの資質は、TikTokとクリエイティブ業界の無数の代理店との関係を効率化する際に役立っている。

「TikTokはエージェンシー、特にクリエイティブエージェンシーを巻き込んでいくという意味では、まだ新規参入者だ。そのため、TikTokは全力でこの分野に取り組んでいる」とエナジーBBDO(Energy BBDO)の最高イノベーション責任者であるアラン・パーカー氏は述べた。「クリストルによるリーダーシップ、その実行スタイルは我々にこの分野におけるスタンダードを示してくれている」。

クリエイティブにとっての朗報

ワットラー氏のチームは小さいが、強力である。(CAPのチーム構成について、同社は詳細を明らかにしなかった)。フェイブル・ワークス(Fable.works)やズールー・アルファ・キロ(Zulu Alpha Kilo)などの独立系クリエイティブエージェンシーから、ピュブリシス(Publicis)のサーチ・アンド・サーチ(Saatchi and Saatchi)、オムニコム(Omnicom)のエナジーBBDOなど、持株会社のクリエイティブ・エージェンシーまで、多様なクライアントを抱えている。

最近、チームはCAPユニバーシティ(CAP University)を立ち上げ、クリエイターとのコラボレーションや、クライアントへのTikTok戦略の売り込みなど、あらゆることに焦点を当てたクリエイティブ・エージェンシー向けの教育リソースを提供している。

TikTokはパンデミックの最中に勢いを増し、業界全体のマーケティング予算においても、恒久的な存在として場所を占めるようになった。今年初め、eマーケター(eMarketer)は、TikTokの広告収入は110億ドル(約15億円)以上となり、Twitterとスナップチャット(Snapchat)の収入を合わせたものよりも大きくなると予想されると報じた。専門家は2024年までにTikTokの広告収入が234億8000万ドル(約33億円)に達すると予測しており、236億5000万ドルを稼ぐと予想されているYouTubeにも匹敵する勢いだ。

TikTokは、ユーザーがコンテンツを消費する方法に大きな変化をもたらした。広告主たちは洗練されたInstagram用の動画から、文化的に今まさに話題性のある嘘や飾りのないコンテンツに向けて、クリエイティブ戦略を適応させざるを得なくなった(この変化の詳細に関してはこちらの記事を参照)。ワットラー氏とTikTokのCAP部門は、この変化の海において、灯台のような存在となっている。

「クリエイティブ・エージェンシーの仕事自体を代わりにしてあげることは絶対にない」とワットラー氏は言った。「しかし、私たちは、文化を前進させ、ブランドのビジネスを前進させる素晴らしいアイデアを考え出すために業界が必要とするあらゆるリソースを提供しながら、彼らのガイド役になる」。

「先鋭化し、洗練され、前進することを可能にした」

バイスメディア(Vice Media)傘下のクリエイティブエージェンシーであるバーチュー・ワールドワイド(Virtue Worldwide)から昨年7月にTikTokに転職したワットラー氏は、クリエイティブエージェンシーで15年以上の勤務経験を持っている。彼女はTikTokに入社するとすぐに、パーカー氏とエナジーBBDOチームとの関係に取り組み、フルスピードで仕事を開始した。

「彼女の存在は私にとっては大きな朗報だった」と彼は言った。

トレーニングはほぼすぐに開始され、ワットラー氏のチームはトレンドとなっているTikTok・チャレンジ、成長するコミュニティ、クライアントに特化したプログラムについて、同社が持つ洞察をエナジーBBDOと共有した。そして昨年10月には、スポーツウェアのチャンピオン(Champion)と、黒人のTikTokダンスクリエーターのジャライア・ハーモン氏と広告キャンペーンを展開した。

ハーモン氏は、黒人がソーシャルメディア上でバイラルな瞬間やトレンドを生み出しても正当に評価されていないことに対する認識を高めるために、TikTok上で行われたストライキ運動の中心人物だった(詳しくはこれら記事を参照)。

パーカー氏によると、ハーモン氏との広告はキャンペーン全体で1800万回再生され、2億5000万件のリアクションを記録したという。彼はまた、ワットラー氏のチームはエナジーBBDOがハーモン氏をキャンペーンに起用する「重要な決定」をするのに役立ったと付け加えた。

「(ワットラー氏のチームは)私たちが自分たちでキャンペーンを行った場合よりも、先鋭化し、洗練され、前進することを可能にした」とパーカー氏は語った。「最高の仕事を得るためにできる限りのことを我々がするのは当然だ。それこそが(ワットラー氏が)可能にしてくれたことだ」。

「直感的なアイデアが正しくなかったことを学んでいる」

また、TikTokのCAPチームは、フェイブル・ワークスによるワットイフ・フーズ(WhatIF Foods)の立ち上げにも協力しており、クリエイティブエージェンシーのズールー・アルファ・キロによる自動車ブランド広告キャンペーンもまもなく実施される予定である(この契約はまだ新しいため、ブランド名を明らかにしなかった)。

フェイブル・ワークスの共同創業者リック・ウィリアムズ氏は、「自分たちが直感的に持っていたアイデアがあまり正しくなかったことを学んでいる」とCAPから受けたガイダンスについて述べた。

[原文:The woman behind making TikTok tick for creative agencies

Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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