がんが進行すると、血中循環がん細胞(CTC)と呼ばれるがん細胞が血中を循環し、体中にがんが転移し始めます。この血中循環がん細胞には「ヒトが眠っている間に活発化する」という1日のリズムが存在することが判明しました。
These cancer cells wake up when people sleep
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01724-w
ヒトの体では24時間の間に遺伝子の発現量が変化しており、睡眠時と起床時では代謝や免疫の働きが変化します。この現象は「概日リズム」や「体内時計」と呼ばれていますが、チューリッヒ工科大学でがんについて研究しているNicola Aceto教授によると、がん細胞は「通常の細胞から完全に変異している」ことから概日リズムが存在しないと考えられてきたとのこと。
しかし、Aceto教授が率いる研究チームはがんを患ったマウスの血中CTC量が時間によって変化することを発見しました。この結果からヒトでもCTCに概日リズムが存在すると考えた研究チームは乳がんを患った30人の患者を対象に午前4時と午前10時の2回採血を行い、血中のCTC量を分析。その結果、午前4時に採血した血液には午前10時に採血した血液の約4倍のCTCが含まれていることが判明しました。
上記の結果が少数のヒトでのみ成立する結果ではなく一般的に成立する結果であることを確かめるべく、研究チームはマウスにCTCを移植し、1日を通したCTC量の変化を分析しました。その結果、マウスのCTC量は日中にピークに達し、CTC濃度が低いときと比べて88倍高い濃度に至ることが判明しました。マウスの活動は夜に活発化するため、この結果は「CTC濃度はマウスが休息する際に活発化する」ということを示してします。
上記の結果から研究チームは「CTCの活動は患者が眠っている時に活発化する」と結論付けました。一方でLudwig Cancer Researchでがんについて研究するChi Van Dang氏は睡眠時間を減らすと健康に悪影響が生じることや睡眠リズムの乱れががんの進行に影響するという研究結果をあげて「今回の研究結果は単にCTCに24時間のリズムがあることを示すもので、がん患者に睡眠時間を短縮するように求めるものではありません」と述べています。
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