コペンハーゲンで開催されたグローバルファッションサミットでも話題となったアバター向けのデジタルファッション。デジタルファッションマーケットプレイス、ザ・デマテリアライズドの共同創設者であるマジョーリー・ヘルナンデス氏は、アバター専用のトレンド主導のデザイン制作によって持続可能性の進歩を加速できると述べている。
コペンハーゲンで6月7日〜8日に開催されたグローバルファッションサミット。そこでの話題からも明らかだったように、アバター向けのデジタルファッションは持続可能性の分野で定着しつつある。
デジタルファッションは過剰消費に対するソリューション
マジョーリー・ヘルナンデス氏は、デジタルファッションマーケットプレイス、ザ・デマテリアライズド(The Dematerialised)の共同創設者である。同氏は、アバター専用のトレンド主導のデザインを制作することによって速度の遅い持続可能性の進歩を加速できると述べている。「これまでファッション業界は、現在の業界の仕組みによって生じた問題を解決することによって問題解決を図ってきた。デジタル世界は資産の完全な脱物質化に焦点を当てており、これは過剰消費に対してまったく異なる代替ソリューションとなりうる」。
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ファッションブランドは服を製造し過ぎており、それが繊維の大量廃棄につながっている。オーストラリアン・サーキュラーテキスタイル・アソシエーション(Australian Circular Textile Association)によると、世界中で製造された全衣服の約3割は販売されないそうだ。この過剰在庫のコストは、グローバル調査会社のIHLグループ(IHL Group)の見積もりによると2100億ドル(約27.7兆円)だという。
人々の仮想環境への移行とデジタルファッションへの需要
デジタルファッションによって、過剰生産の原因であるトレンド主導のデザインが純粋な仮想分野に移行する可能性がある。そうなれば、業界はスタイルと価格全体に対して品質と耐用年数にフォーカスすることができるだろう。「人々が消費する量は減少すると予想されているが、毎日新しい服を着るのに慣れている人にとってはこれは無理な話かもしれない」とヘルナンデス氏は述べている。「影響が少なく、環境へのダメージも少ない、物理的なファッションに代わるものを提供するのは良い解決策だ」。
人々がデジタル環境と仮想環境で過ごす時間が増えるにつれ、デジタル衣服の需要は高くなるだろうと同氏は言う。調査会社のガートナー(Gartner)によると、2026年までに4分の1の人々がメタバースで少なくとも1日1時間過ごすようになるという。
「デジタルファッションは、我々にはパフォーマンスの向上以外や現在のビジネスモデルを変える以外の選択肢があるということを示した最初の機会だ。これはまったく異なるものだ」とヘルナンデス氏。
デジタルファッションへの認識を変える必要性
インスティテュート・オブ・デジタル・ファッション(Institute of Digital Fashion)の共同創設者であるリアン・エリオット=ヤング氏は、デジタルファッションは社会的認識に関する課題に直面していると述べている。それゆえに、持続可能性戦略を支援するための幅広い(デジタルファッションの)導入が妨げられている。「現時点でNFTを話に出すと、ネズミ講だと思われて、NFTの制作に使われる技術や職人技については注目されない」。
この現状を変える方法のひとつにはマーケティングを通じたものがある。「PRと広告代理店の関与とマーケティングメッセージは、デジタルファッションに関する認識を変えるために重要だ」とエリオット=ヤング氏。「バレンシアガ(Balenciaga)はそのすばらしい例だ。デジタル世界でファッション業界がどのように関与すべきかを示した」。バレンシアガは、2020年12月に発表された「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー(Afterworld: The Age of Tomorrow)というゲームで自社コレクションをデジタルで再現したラグジュアリー企業の最初の1社である。
H&M、ザラ(Zara)、シェイン(Shein)などのファストファッション企業はアバター向けの小規模なデジタルファッションコレクションをローンチしてはいるものの、トレンド主導のファッションをアバター限定に転用する大規模な取り組みはまだ実現していない。
[原文:Can digital fashion solve fashion’s sustainability problem?]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)
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