IABのゲーム内広告向け新測定基準、業界に利益をもたらす分岐点か:「ゲーム内広告への信頼は高まる」

DIGIDAY

IAB(インタラクティブ広告協議会)がゲーム内広告向け最新測定ガイドラインを発表し、ゲーム内広告企業はそのニュースを喜んでいる。ゲーム内広告技術は近年、急速に向上してきたが、ゲーム内広告の測定方法は2000年代後半から改定されていない。基準の更新が迫るなか、ゲーム内広告企業は製品に自信を抱き、透明性と説明責任の向上を契機にブランドやマーケターがこの分野に流れ込んでくることを期待している。

新しいガイドラインは、Googleや電通、ジンガ(Zynga)および様々な大手ゲーム内広告企業など、36社の業界ステークホルダーで構成されたタスクフォースの4カ月にわたる取り組みの成果だ。

新ガイドラインは、2009年に起草されたIABの以前のゲーム内広告測定基準を大幅に改定している。IABが旧ガイドラインを刷新する意欲を示した2021年9月には、メディア・レーティング・カウンシル(MRC)が、それまでの基準の欠点について考察したメモを公開した。そこで、IABはこの取り組みを主導するため、MRC、英国のインターネット広告協議会(IAB UK)、IABテックラボ(IAB Tech Lab)に協力を求めた。

「上げ潮はすべての船を持ち上げる」

タスクフォースは2月から、毎週集まり、ミーティングごとに異なるトピックや特定の指標について議論した。自社の技術について話し合う機会を与えられ、ゲーム内広告関係者は、熱心に討論に参加した。関心があまりに高すぎて、ビデオ会議中、音声をミュートにしたり、挙手制にしたりして、発言中に別の参加者の声がかぶらないようにしなければならなかったほどだという。こうした混乱状態は、意見の大きな相違というより、トピックに対する参加者の熱意の表れだった。

「全体的にみて、満足している」と、タスクフォースに参加したゲーム内広告企業フレームプレイ(Frameplay)で最高戦略および執行責任者を務めるキャリー・ティルズ氏は語る。「2009年以来だった。業界は基準を非常に重視している。いわば、“上げ潮はすべての船を持ち上げる”ようなもので、当社のような企業がそれを理解して重視していることが浮き彫りになる」

最新の基準用に具体的な数字を決めるため、IABは、ゲーム開発者とゲーム内広告企業から提供されたデータを用いて暫定的な推定値を計算した後、レビューのためにタスクフォースで実行した。

「それらの発言をすべて集めてから、相違が見られるたびに、作業グループ内で話し合い、最終的な答えを導いた。だから、誰もが言いたいことを言い、発言の背景にあるデータを提供して実証した」と、IABテックラボで製品担当バイスプレジデントを務めるシェイリー・シン氏は語る。

2009年のゲーム内基準をアップデート

最新の基準での最も大きな変更点は、2つの要因によって影響を受ける。それは、ゲーム内広告のビューアビリティの定義と、3Dのバーチャル環境内での広告に伴う固有の課題への取り組み──ある角度でバーチャル広告を視聴したり、ゲーム内の他の物体を重ねたり、照度やコントラストを操作したりといった点だ。

「最も重要なアップデートは、累積視聴時間10秒という広告配信要件の変更だった」と、IABのエクスペリエンスセンターでバイスプレジデントを務めるゾーイ・スーン氏は話す。「2009年のゲーム内の基準は、ビューアビリティが重要になる前に確立されたものだ。広告配信で満たすべき要件として累積視聴時間が10秒というのは、いささか行き過ぎだったので、ほかのメディアチャネルと一致するように変更した」。

最新の測定基準は、ゲーム内広告業界にとって重大な分岐点になりそうだ。ブランドやメディアバイヤーが、ゲーム内広告に確信を持てば、彼らの支出増は他のアドテク企業の参入を誘発するだろう。また、ソニーとマイクロソフト(Microsoft)がゲーム内広告部門を立ち上げようとしている事実は、そのプロセスを加速する一方だろう。

「標準化によって、こうした投資から得られる価値についての理解が深まるため、ゲーム業界やeスポーツ業界にとって大きな利益をもたらすことになる」と、ペプシコ (PepsiCo)でeスポーツおよびゲーム担当責任者を務めるポール・マスカリ氏は語る。「これまでは、中核をなす消費者が視聴しているのが分かっていても、それを証明する指標がなかったため、ゲーム内アクティベーションではROIを示すのが難しかった。ペプシコの視点からは、我々は成功の測定についてより賢明になろうとしており、ゲーム内広告が従来型チャネルに続くことを目の当たりにし始めているため、自信を与えてくれる」。

ゲーム内広告に対するブランドの信頼は高まるか

また、より多くのブランドやマーケターが、ゲーム環境からメタバースが出現しつつあることを認識するようになっており、IABがゲーム内広告を測定するために策定した基準は、ロブロックス(Roblox)やディセントラランド(Decentraland)のようなメタバースプラットフォーム内のバーチャル広告に広範に適用するために、容易に適合させることができる。

「大きなドミノ効果だ。塔から降りてきて支援してほしいと頼む立場から、実際に、今やホットな製品となり、この分野の誰もが支援したいと考えている」と、IABのタスクフォースに参加した別のゲーム内広告企業、アンズ(Anzu)のグローバル顧客サービス担当ディレクター、クリス・ケオ氏は述べた。

新しいガイドラインは、パブリックコメントを求めるため、7月15日までIABのホームページで公開された。その後、IABはゲームパブリッシャーと一連の非公開ラウンドテーブルを開催し、最新の基準について一通りの説明を行い、成長中であるこの広告分野を支援するために、ほかに何ができるかを確認する。ゲーム内広告固有のビューアビリティについての定義を構築したIABは、バーチャル空間でのアテンションの測定に取り組むことを検討している。ゲーム内広告分野の関係者は、それによって、ゲーム内広告に対するブランドの信頼はさらに高まるはずだと確信している。

「これは、我々がインターネットと共に進む方向と、スクリーンとの相互作業がどのように変化しているのかを示唆している。これによって、パブリッシャーのコミュニティに信頼や信用、透明性を植え付けることができる。インベントリーがないことには、勝利の半分しか得られないのだから」とスーン氏は語った。

[原文:Why the IAB’s updated measurement guidelines could be a watershed moment for in-game advertising

Alexander Lee(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)

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