BFGパートナーズ のエリザベス・アール氏、美について語る: 「トップ・オブ・マインドであり続けるというのは、Facebookにただ金をかければよいということではない」

DIGIDAY

いまもっとも話題のインディーズビューティブランドの背後に存在しているのが、アーリーステージのベンチャーキャピタル、BFGパートナーズ(BFG Partners)だ。

BFGパートナーズのポートフォリオには、ニキビケアブランドのジィットスティッカ(Zitsticka)、スキンケアブランドのハービヴォア(Herbivore)、日焼け止めブランドのバケーション(Vacation)など、いくつかの美容ブランドが含まれている。そして4月25日、BFGのテクスチャードヘアケアのポートフォリオブランドのカールスミス(Curlsmith)は、ヘレンオブトロイ(Helen of Troy)による1億5000万ドル(約193億5000万円)での買収を発表した。カールスミスは2017年に創業し、米国のアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)で販売されている。ヘレンオブトロイは買収の発表において、カールスミスはすぐにでも同社のポートフォリオでもっとも収益性の高いブランドになるだろうと述べている。カールスミスの売上は2020年から2021年にかけて倍増しており、今後も2桁成長を続けると予測されている。ヘレンオブトロイはドライバー(Drybar)の製品事業も所有しており、レブロン(Revlon)のヘアケア家電の独占グローバルライセンスも有している。

BFGパートナーズは、当初は食品と飲料を投資対象としていたが、体によいものが好まれるトレンドの余波が従来の食料品店以外にも広まったため、美容とパーソナルケアへと拡大したと、同社のバイスプレジデントであるエリザベス・アール氏は述べている。

「すでに人々にかなり親しまれているカテゴリーを、新たな、あるいは創造的な方法で再発明する方法をつねに考えている。BFGは食品と飲料の世界での経験を積んでおり、最近ではパーソナルケアの分野へとテーマを広げている」とアール氏は言う。「サプライチェーンの透明性や思慮深い消費者主義など、食料品店の棚で進展してきた多くのことが、人々がいま、家で使ったり身体に使用したりしているものに適用されようになっている」。

カールスミスとジィットスティッカの投資を主導したアール氏は、カールスミス買収の原動力となったものや潜在的なブランドに求めていること、危険信号とみなすことについてGlossyに語った。以下は、わかりやすくするために軽く編集して要約した会話のハイライトである。

BFGがカールスミスに興味を持ったきっかけは?

「(カールスミスに)最初に投資したのは、2020年の中頃だった。その事業について検討した際に、すぐに感銘を受けたことが2、3あった。まず資本効率のよいビジネスだったという点と、多額の投資資金がなくてもかなり有意義な規模に到達していたという点だ。また、従来から大手の消費財(CPG)企業が未開拓だったテクスチャードヘアケアというカテゴリーに参入していた。また私たちが気に入ったのは、現在では明らかにそう考えているブランドも増えているが、当時からカールスミスはヘアケアの分野で、化学薬品を使用した製品が普及している顧客コミュニティのために体によい製品について考えていた、という点だった。カールスミスは、コアな顧客層が推し進めるイノベーションのパイプラインを持った効果的な製品を提供している。自分たちに忠実な顧客とオープンなコミュニケーションをとっていた」。

カールスミスや他のポートフォリオ投資で、ほかに傑出していた点は?

「パーソナルケアの世界において、カールスミスは顧客にとってトップ・オブ・マインドの存在であり続けることができている。このブランドはテクスチャードヘアケアにフォーカスしたFacebookのグループ内でスタートした。カールスミスは、髪の悩みや応急処置、髪に関するハックなどについてすでに話題にしていたそのマイクロコミュニティとのつながりを維持し、それを自分たちが発売する新製品のイノベーションとして活用するというすばらしい仕事をした。そして、そのコミュニティをインスタグラムやTiktokなど、ほかのソーシャルメディアプラットフォームにも持ち込んでいる。

パーソナルケアにおいては、毎週または毎月製品を購入するということはないので、トップ・オブ・マインドであり続けるというのは、ただFacebookやインスタグラムの広告に金をかければよいということではない。(それを避けることが)多くのブランドにとって戦略的な関心事であり、また取り組みでもあるし、それを(正しく)実行するブランドが優位に立っている。バケーションは、1980年代のクラブメッド(Club Med)文化を参考にした気まぐれなライフスタイルをテーマにしており、オンラインラジオ局と提携している。Facebookやインスタグラムで直接メッセージを発信しなくても、バケーションというブランドが、この夏、プールサイドで使いたい楽しいサンケアブランドであることを人々に想起させる方法はたくさんあるのだ。ジィットスティッカの場合は、ニキビケアに関する議論や、ニキビやボディケアにまつわる恥ずかしい話などを通じて顧客との会話を生み出している。これらのブランドは、デジタルマーケティングがあまりにも高額になっているという問題を回避している」。

投資分野で最近もっとも大きな変化は何か?

「ほぼ全般的に資本効率がより重視されるようになっており、それが落ち着いたり、止まったりするとは思えない。パーソナルケアは、従来より製品の利益率は高いものの、食品のように頻繁に購入されるものではない。収益性が高く、ブランド全体の利益を徐々に増加させる製品がますます重要になってきている。従来の消費財であれ、その他の金融スポンサーであれ、出口側で目にしているのは、買収の純利益をこれまで以上に考えるようになっているということだ。今後数年間は、さらにそれが重要性を増すかもしれない。これが重要な理由はふたつある。明白な理由として、消費財のポートフォリオが大きければ、M&Aの作業もより簡単になるということ。また、この2年間は、金融市場の変動が激しい。安定した収益性を示すことができるブランドなら、(投資家に)さらなる安心感を与えてくれる」。

潜在的投資を評価する際、危険信号となるものは?

「特にパーソナルケア分野でよく目にすることのひとつに、何かがうまくいったブランドが、あまりにも早く多くの製品や多くのカテゴリーに進出しすぎるという点が挙げられる。複数の製品や使用事例にまたがって存在できるブランドを持つことは重要だ。だが、そこにある競合や、いかに多くの新しいブランドが誕生しているのかを考えた場合、ブランドは、人々に愛されている製品や製品シリーズを他の使用事例にも拡大したいという誘惑に駆られてしまう。それはチームの手を広げすぎることになる。スタートアップは、本質的にリソースが限られた世界で仕事をしている。強力なイノベーションパイプラインの背後にある知識と思考プロセスは、私たちや小売業者、潜在的な買収者にとって非常に重要なことだが、それは潜在的なイノベーションのすべてを超高速で実行するという意味ではない。年間売上がまだ数百万に達していないブランドで、3つ、4つ、5つのカテゴリーに進出し始めているブランドに対しては、少し不安を覚える」。

[原文:BFG Partners’ Elizabeth Earle on beauty: ‘Staying top of mind doesn’t just involve throwing money at Facebook’]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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