CTV のRoku、ストリーミング広告データの提供を拡大:目的はテレビ広告に対する競争力の向上

DIGIDAY

テレビ広告費をストリーミング広告にシフトしてもらうには、ストリーミングのパフォーマンスを証明するだけでなく、なぜそうなるのかを示す必要がある。Roku(ロク)のようなストリーミング広告の売り手が、広告主に提供するデータを増やさなければならないのはそのためだ。そして、Rokuは実際にそうしている。

Rokuは、アナリティクス・パートナーズ(Analytic Partners)、イプソスMMA(Ipsos MMA)、IRI、ニールセン(Nielsen)のマーケティングテクノロジープロバイダー4社と契約を結び、広告に関する高度なインサイトデータを提供している。消費財(CPG)ブランドや小売業者などの広告主は、このデータから得た情報をマーケティングミックスモデリング(Marketing Mix Modeling:以下、MMM)に取り込んで、広告費の評価や今後の予算計画に役立てることができる。

広告主はMMMに固執

Rokuは以前から、指定マーケットエリア(ニューヨーク、ホノルル、モンゴメリー・セルマなど、テレビやラジオの広告主がキャンペーンの効果測定時に利用してきた地域区分)別にキャンペーンを分類したインプレッションレベルのデータをMMM向けに提供していた。同社は現在、このデータセットをさらに増やしている。

「私たちが提供しようとしているのは、クリエイティブの種類、時間帯、指定マーケットエリアに関するもう少し細かい情報だ。そうすれば、郵便番号レベルにまで細分化したデータを、効果測定パートナーごとにモデルに取り込めるようになる」と、Rokuで広告効果測定責任者を務めるアサフ・ダビドフ氏はいう。

このデータは、「Rokuチャンネル(The Roku Channel)」などでRokuが販売している広告と、CTV(コネクテッドTV)プラットフォームの同社が販売できる他社のRokuアプリにあるインベントリの一部(Rokuの広告購入プラットフォーム「ワンビュー[OneView]」を通じて購入された在庫など)に限定される。

Rokuは、MMM向けに提供するデータを増やすことで、この種の分析にまつわる問題の解決を図っているようだ。その問題とは、テレビのような従来型メディアチャネルを中心に物事が回っていることだ。米DIGIDAYが以前報じたように、広告主のなかには、長く利用してきたMMMに固執するあまり、従来のテレビからストリーミングやデジタル動画に広告費をシフトしたがらないところがある。「どちらかといえば、彼らは頑なだ」と、あるエージェンシー幹部はいう。

テレビ広告購入モデルは変わらない

とはいえ、これらのモデルによって示されるのは、広告主が予算をストリーミングにシフトすると、テレビの効率性の一部が失われてしまうという事実だと、2人目のエージェンシー幹部は指摘する。広告主は、テレビの幅広いリーチに代わってストリーミングのターゲティング機能を手に入れられるかもしれないが、ストリーミングのほうが広告費が高いため、コストが増えるのにリーチできる人数が減る結果となる。幅広いオーディエンスへのリーチを目指すブランド広告主にとって、これは問題だ。

「(MMMが)問題なのではない。急いで追いついたあげく、(テレビでは)極めて効率的に消化できていた広告費が、(ストリーミングでは)非効率になったという事実が示されるのだ」と、2人目のエージェンシー幹部は語る。

それでも、MMMは依然として重要なツールだ。それどころか、さらに重要性が増しているように思われる。テレビの効果測定システムでは全面的な見直しが進んでいるが、デジタルの効果測定システムでも、サードパーティCookieの終焉とAppleと Googleによるモバイルアプリトラッキングの取り締まりが迫っているからだ。このような変化が、「MMMによる効果測定の復活傾向」に拍車をかけていると、ダビドフ氏は指摘した。

さらに、テレビ広告とストリーミング広告の衝突によって、ゆくゆくはストリーミング広告が従来のテレビ広告費のシェアを追い越すかもしれない。だが、4月19日に開催された「Digiday Future of TV Week Town Hall」で広告バイヤーたちが議論していたように、勝利を収めつつあるのは従来のテレビ広告購入モデルのようだ。そのため、広告主のメディアプランニングプロセスにおいて、MMMの果たす役割が大きくなる可能性は高い。

「MMMはいずれ追いつくだろうが、我々が現在テレビで行っているプランニングやバイイングのやり方が変わることはない」と、1人目のエージェンシー幹部は述べている。

クリエイティブの役割は重要

MMMプロバイダーにより多くのデータを開放すれば、少なくともストリーミングへの広告費の流入を増やすことにはなるかもしれない。広告主やエージェンシーが、ストリーミング広告のパフォーマンスをテレビや他のメディアチャネルとさらに細かく比較して、効率の悪さを補う方法を見つけ出す可能性があるからだ。

クリエイティブの種類については、Rokuは情報を動画広告とディスプレイ広告(CTVプラットフォームのホーム画面に表示されるバナー広告など)に分類する予定だ。動画のクリエイティブデータには広告の長さも含まれるため、従来の15秒スポットや30秒スポットの影響だけでなく、新しい6秒広告の影響も評価できるようになるだろう。

「クリエイティブの種類は極めて重要だ」と、1人目のエージェンシー幹部は話す。「効果に関する話をしているときに、クリエイティブの役割に言及する人はいない。だが、(広告の)影響力の70%は、クリエイティブとそのクリエイティブが表示される文脈によってもたらされることがわかっている。したがって、そのような情報が提供されるのなら素晴らしいことだ」と、同氏は語った。

[原文:Roku opens up more advertising data for marketing mix modeling to better compete with traditional TV

Tim Peterson(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)

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