パブリッシャービジネス、2022年第1四半期の最新トレンド

DIGIDAY

2022年の第1四半期が終わりに近づくなか、パブリッシャーのあいだでは2022年を通して影響を及ぼし続ける可能性の高いトレンドがすでに浮上している様子が見られる。

2021年第4半期、ブランド各社はサプライチェーンの毀損を受けて再び広告費を縮小したが、その広告費が、ときには予期しなかったような分野で、徐々に戻りつつある。一方で、新型コロナウイルス感染症の感染者数が減少していることから、各社経営幹部のあいだでは、イベント事業が2020年初頭以来の復活を見せるのではないかという見方がある。そして、言わずと知れたGoogle ChromeのサードパーティCookie廃止へのカウントダウンが進むにつれ、パブリッシャーはこれを広告市場奪回の好機ととらえ、ともに協力する必要性を感じている。

こうした最新動向をよりよく理解するため、過渡期的な性格を持つ2022年がデジタルメディア業界にとってどのような年になるのか、いくつかのパブリッシャーに話を聞いた。

主なポイント:

  • 2021年に行った買収の効果が広告事業に現れ始めたBDG(以前の名称はバッスル・デジタル・グループ[Bustle Digital Group])
  • 業界内での協力重視で、迫りくるCookieの終焉に向けた最終的な備えを進めるリーフ・グループ(Leaf Group)
  • 新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和により、体験型マーケティングが本格再開へ

2021年の買収が早くも功を奏する

2021年9月、BDGが1億5000万ドル(約165億円)でサム・スパイダー・スタジオ(Some Spider Studios)を買収することが確定した。スケアリーマミー(Scary Mommy)やファザリー(Fatherly)など、3つの子育てブランドを展開するサム・スパイダー・スタジオの買収で、BDGは自社タイトルのロンパー(Romper)と合わせ、育児系バーティカルメディアを4つに増やすことになる。

バーティカルメディアの拡大で、育児系メディアでの広告掲載に関心を持つ育児ブランドが増えることを期待していたBDGだったが、わずか1年半ほどでその思惑はすでに実を結び始めている。同社のプレジデント兼最高収益責任者であるジェイソン・ワーゲンハイム氏によると、育児系バーティカルメディアは2020年度の全収益の8%を占めていたが、2022年度は25%に達することが期待されているという。これは特に、育児関連の消費財、おもちゃ、食品関連の広告クライアントが新しく増えたことによるが、従来のクライアントも、育児サイトの追加を受けて契約を増やしている。

新たな注目分野は「ウェルネス」

あるパブリッシャー(本記事では匿名を希望)は、2022年はじめに同社で飛躍を見せている分野は「ウェルネス」だと話した。ウェルネス系のパブリッシャーでも同様の動きが見られる。

このパブリッシャーによると「パンデミックからの脱却に関心が集まっているところで、まさにウェルネスが旬の話題となっている。広告主も、皆がそこに注目していることを知っている」そうで、「皆がそこに注目しているのは、ここ2年間が本当に大変だったからで、ウェルネスやフィットネスの分野と当社との相性のよさが、広告主をかなり惹きつけている面がある」という。

健康とフィットネスという元来相性のよい組み合わせに加え、たとえば金融機関が広告購入時にメッセージで「ファイナンシャル・ウェルネス」を前面に押し出そうとするなど、ほかの分野からもウェルネスへの進出を狙う動きがある、とそのパブリッシャーは加えた。

迫りくるCookieの終焉を前に協力に積極的なパブリッシャーたち

Google ChromeがついにそのブラウザからすべてのサードパーティCookieの存在を消し去る日に向けて、リーフ・グループは準備を進めてきた。同社のメディア担当シニアバイスプレジデントのスコット・メッサー氏は、来るべき時が来たら、オーディエンスの識別には多様な戦略が必要になることを認識していると話す。

「当社のビジネスには、Cookie廃止の影響を比較的受けにくい部分がある。その部分を支えているのはコンテクスチュアルやSEOに関する深い専門知識」であり、コンテクスチュアルターゲティングによって特定のトピックを調べているオーディエンスを拾い上げることができる、とメッサー氏は語った。だが「当社のビジネスにそれ以外の部分もあることは承知している」とも話す。

リーフ・グループが実践する多様なアプローチは、ほかのパブリッシャー、マーケター、業界関係者との協力を通して、オープンオークションでのリターゲティングやプロスペクティング、効果測定の問題を解決する、一連の基準や協力体制の構築を目指している。

「広告主が自社キャンペーンの効果を測定し、基本的なレベルでのリーチやフリークエンシー、より高いレベルでのアトリビューションを把握できないのであれば、デジタルメディアには費用を投じずに、それらが可能なほかのプラットフォームや、OOHのようにそれらができなくても費用が少なくて済むプラットフォームに移る可能性がある」とメッサー氏は述べた。

新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和で2022年のイベントは有望

BDGは2021年12月にマイアミで開催されたアート・バーゼル(Art Basel)で最新版の体験型ビジネスを打ち上げた。だが、ワーゲンハイム氏は2022年4月のコーチェラ音楽フェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)でのナイロン(Nylon)、ゾーイレポート(Zoe Report)のアクティベーションが、同社のイベント戦略の中心を占める、この2ブランドにとって7桁半ば台の商機になると強気だ。

「コーチェラの発表でマスク着用やワクチン摂取が求められず、オミクロン株も比較的過去のものとなりつつあるいま、体験型の加速には明るい見通しを持っている」とワーゲンハイム氏は話す。

2つの週末にわたって開催されるコーチェラに隣接した場所で併催する「ナイロン・ハウス(Nylon House)」と「ゾーオアシス(ZOEasis)」の各イベントには、これまでのところ6社のスポンサーが付いた。ワーゲンハイム氏は来月までにこの数字が十数社に増えるものと見ている。2021年の全収益に占めるイベントの割合は3~4%だったが、2022年には7~8%に倍増する見通しだという。

深まる暗号通貨の影響

ここ1年、メディア業界ではブロックチェーンを取り込む動きがかなり見られたが、いまパブリッシャーにとってますます大きな存在となりつつあるのは暗号通貨企業だ。

2022年2月、フォーブス(Forbes)は暗号通貨取引プラットフォームとブロックチェーンのバイナンス(Binance)に2億ドル(約220億円)の株式を売却したと発表した。これは、フォーブスがマグナム・オパス(Magnum Opus)との合併を通じて上場するために必要なPIPE(上場企業の私募増資)の半分に相当する。

これは、メディア業界における暗号通貨とWeb3の役割にいろいろな意味でお墨付きを与えるという点で、フォーブスにとって意義深い出来事だった。だが同時に、暗号通貨側にとっても、デジタルな「ニューマネー」が由緒あるメディアブランドを部分的に所有するという意義深い出来事だ。

[原文:Media Briefing:The top trends in publishers’ businesses since the start of 2022

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:長田真)

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